二人の邂逅
1月14日、首相の佐藤と官房長官の前嶋はおよそ200人にも及ぶ記者の前で会見を行っていた。
「という訳でありまして、ただいま自衛隊に領海外への調査を命じた次第であります」
すると記者の中からいくつも手があがる。どうせどの記者を当てても同じなので佐藤は適当に指名した。
「朝間新聞の間宮です。総理、今回の自衛隊の活動は違憲ではないのですか?」
「衛星通信が使用不可、さらには朝鮮半島が確認できない以上、非常時としか言えず、その為の緊急措置です」
佐藤は予想された質問に用意していた回答をした。まぁ記者も予想はしていたのだろう、あっさり引き下がった。
しかし、この次に質問して来た記者が痛いところを突いてきた。
「毎週新聞の前です。今回の事象、異変は巷では異世界転移では?と囁かれておりますがいかがなのでしょう?」
「目下調査中であります」
「では、仮に異世界転移だった場合、北方領土をどうなさるおつもりでしょう?あそこには日本国籍ではない、ロシア国籍の人々が一万以上住んでいます。総理はこれについてどう対処なさるのですか?」
これだ…そう、実は閣僚たちや他議員の一部も異世界への転移の可能性が高いということを考えている。しかし、そうなった場合、戦後から約80年もロシアに不法占領されロシア人が多く居住する北方領土は政府の悩みの種なのだ。今は大人しいがいつ暴れだすともわからない存在に頭を抱えさせられる日本国政府はこの前という記者の質問に対する答えを持ち合わせていない。そのため、
「目下議論中であります」
としか答えられなかった。
アシハラ皇国東部海上監視塔にて
西部海上監視塔の警備兵であるニトベは監視の当直で監視塔のてっぺんにいた。監視といっても、この海の西側には島はなく、はるか先のバイル大陸までただただだだっ広い大海原が有るのみで、特にすることなどないに等しい。しかし、仕事は仕事。その辺りはわかってるので、ニトベは欠伸をかきながらぼーっと大海原を眺めていた。するとニトベは遥か彼方に小さな空に浮かぶ黒い点を見つけたのだ。
「ふぁーーあ…暇だ…どうせ帝国はこっちから来るわけないのに無駄な増員だろ…ん?なんだあれ。鳥か?にしても随分遠くを飛んどるなぁ。渡り鳥かな?」
最初は海鳥かそこらへんと思っていたが、だんだん近くにつれて形がはっきりしていった。そしてそれが今まで見たことないもので有るということに気づいた。
「な、なんだありゃあ!見たことねえ、て、鉄の鳥だあ!おい、みんなでてこい!鉄の鳥だ!鉄の鳥が真上飛んでんぞ!」
ニトベは驚き、魔信で施設内の警備兵全員に伝える。そして全員がその目を大きく見開かせる。
「な、なんだありゃあ…」「鉄の鳥が飛んでやがる…」
などと狼狽の声が多くあがる。
「お、おい!引き返していくぞ!」
こうして、多くの警備兵の目に焼き付けられた鉄の鳥こと日本国海軍所属、P-3Cオライオンは陸地の発見を報告しに本国へと帰投していった。
やっと邂逅です…てかこれ書き直し回数が半端じゃない…