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気苦労の多い日本さん  作者: 蓬莱
第1章 世界戦争
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ナメクジに喰われたカエル

サブタイトルはわかる人にはわかるお話。

答え合わせはあとがきに書いときます

  2019年9月14日未明、アシハラ皇国北部軍港


 この日、アシハラ皇国海軍は艦艇の総戦力を北部軍港に集約、戦列艦320隻、小型砲艦180隻、竜母12隻、輸送艦70隻の大艦隊である。

 その軍港で多くの兵士に演説を行う男がいた。海軍大臣のヤマモトだ。彼は兵士達にこう言った。


「我々、未曾有の危機に陥っている!我々は、他国によって属国化され、まさに押しつぶされようとしている!だが!我々はそれに断固として争う!彼らは我々の同胞を傷つけた!彼らは我々の同胞意識を壊そうとした!させん、断固としてさせん!後方には陸軍が控え、迎撃の時を待っている!ならば我々海軍は奴らの退路を断ち、奴らを1人残さず殲滅する!いいな者共、我々は後詰めだ!生き急いでそのまま極楽へ召されるなどということが無いようにしろ!」


「「「オォォォォ!」」」


 軍港は大歓声に包まれたのに、日の上りきらぬ未明に軍港を出港、一路北西へと向かった。



  アシハラ皇国軍出港から4時間後、サンサ領ベルタ島軍港


「出港!アシハラの蛮族どもを蹴散らすぞ!」


 サンサ軍はアシハラ皇国軍より4時間遅れで出港。一路南へアシハラ皇国へまっすぐ進んでいく。途中ではるか西をアシハラ皇国軍が通るなど知らずに、戦列艦380隻、竜母5隻、輸送艦100隻を率いて艦隊は進む。


「フン、蛮族どもなど、戦列艦の砲火の海に沈めてくれる。陸は戦列歩兵12個連隊、騎兵3個連隊、砲兵5個連隊が粉砕する。…余裕だな。そう思うだろう副長」


 サンサ軍の旗艦艦長は副長に問うた。


「そうですとも、奴らなど海の藻屑です。我々はただただ悠々と進み、破壊し、悠々と凱旋する。それだけで地位と名声が手に入る。実に楽な仕事です」


「そうだ。我々は蛮族討伐に行くのだ。そして我々を無下にした罪を思い知らせてやる!」


 艦長は忌々しそうに呟き、拳を握りしめ、さらに号令する。


「帆を張れ!船速を上げろ!」


 艦長の指示どおり、艦隊は帆を張り速力をあげてゆく。

 艦長はおろか、どの船の乗組員にも不安などなかった。まだ、この時は…



  同時刻、日本国首相官邸


「総理、いいんですか?アシハラ皇国に援軍を送らずとも」


 秘書は佐藤に問いかける。それに佐藤はすんなり答える。


「大丈夫ですよ。そもそも要請も来てませんしね」


「大義名分もないから送らない…ですか」


「そうです。大丈夫ですよ。十分な援助もしましたし向こうには優れた軍師がいます」


 佐藤がそう言っても秘書はまだ心配そうだった。だが佐藤は敢えてそれを気にせず、準備を始める。


「さて、我々も1月に向けた準備をしましょうか」


 日本はただただ傍観を決め込んだ。



  サンサ軍出現から5時間後


「上陸しろー!急げ!隊伍を整え、陣を作れ!」


 サンサ軍指揮官はバイル大陸上陸と同時に野営の準備を開始する。

 とはいえ、補給艦100隻、合計2万8000の人や馬、兵器を上陸させるのには時間がかかる。


 1時間ほどして、サンサ軍の陣はほぼ完成し、兵もひとごこちついている。


「はぁ…やっと終わった。本格的な行動は明日からだ。兵を休ませておけ」


 指揮官はそう部下に言いつけ、自分も休もうとする。が…

 ドォォォン!ドドドドォォォン!


「な、なんだ!何事だ!」


「た、大砲です!敵の大砲です!さらに前方から敵軍も!」


「な、何⁈すぐに戦列を組め!迎え撃つのだ!幸い、ここは広い平野だ!」


 指揮官の言う通り、海岸線からかなり先まで広い平野となっている北部海岸は、戦列をしき、迎え撃つことは容易だった。

 指揮官は寄せ集めではあるが1万の歩兵と大砲を後方に配置、射程に入るまで待機させる。


「敵の総数は?」


 指揮官は部下に尋ねる。

 質問に対してその部下ははっきりと答えた。


「我が軍とほぼ同数かと思われます」


 と。


「ふむ、ここで食い止め、後方から増員するしかないか…」


 まだ、彼らはアシハラ皇国が怒った時の本当の恐ろしさを知らずにいた…



  アシハラ皇国軍視点


「敵は陣をすでに構築し、守りを固めています!迎撃に敵1万が出てきています」


 部下は斥候からの報告を将軍に伝える。


「よし、歩兵は射程ギリギリまで近づき、戦列を敷け。騎兵は後方で待機し、突撃に備えよ。砲兵は戦列歩兵の射撃と同時に砲撃を開始せよ」


「了解しました。各指揮官に伝えます」


 部下は魔信機で各指揮官に伝える。


 20分後…

 サンサ軍の指揮官は驚くものをみた。


「な…戦列歩兵…だと…バカな!奴らが…奴ら如きが戦列歩兵など…くそ!戦列歩兵、敵が射程に入り次第射撃を開始せよ!砲兵は支援しろ!」


 しかし、アシハラ皇国軍はサンサ軍の戦列歩兵の射程のはるか奥で止まってしまう。


「は?なぜあんなところで止まる…銃の射程には程遠いと言うのに…ん?構えた?撃つのか?いやこんなところで当たるわけが…」


 ズババババババババババババババババババン!


 サンサ軍にアシハラ皇国軍の射撃が命中し、戦列歩兵の前列は大きく崩れる。


「な…う、撃て!射撃を開始しろ!」


 サンサ軍の戦列歩兵も射撃を開始するが、そのはるか手前で銃弾は落ちる。

 さらに、アシハラ皇国軍はサンサ軍よりも速く銃弾を装填し、射撃する。


(くそ!何故だ!なぜ奴らが上なのだ!奴らの兵には弾込めをしている動作が見受けられん…どうなっているのだ…)


 彼は気づいていない。己らの軍と相手の軍の装備の差に。

 アシハラ皇国軍は射程が長い後装式のスナイドル銃。一方サンサ軍は射程が短い前装式マスケット銃。装填にかかる時間も、射程も、精密性も違うのだ。

 また、空からは砲弾が降ってくる。サンサ軍も大砲を撃つが、牽制にしかなっていない。

 結局、サンサ軍は壊滅、陸はほとんど捕虜になったが、戦列艦は逃げたようだ。まだ彼らへの悲劇は続く。


「ベ、ベルタ島が…落ちた?」


 捕虜となったサンサ指揮官は驚く。


「そうだ。貴様らと入れ違いで海軍が輸送艦を率いてな。すでに海軍は戻って来ている。貴様らの海軍は今頃囲まれ叩かれているだろう」


「ちょ、調子にのるなよ蛮族!陸で勝ったからといって海で勝てると思うなよ!」


 サンサ指揮官は叫ぶ。しかし、それはただの負け犬の遠吠えということをすぐ思い知る。



  ベルタ島・バイル大陸中間海域


 サンサ海軍はアシハラ皇国海軍に追い回され、包囲されていた。


「クソォ!また1隻沈んだぞ!回頭急げ!」


「ダメです!マストが折れて動けませ…」


 ズドォォォォォォォン

 隣の戦列艦が爆発する。ここまでくるともう虐殺に近い。


「な、なんで…なんであいつらが戦列艦を持っている…大砲を持っている…」


 完全に戦意を喪失し、とうとうサンサ海軍は降伏。陸戦終了から約1時間の出来事だった。

 この事はサンサ本国だけでなく、そのほかの国々に伝わり、サンサ王国に従属していた国が反旗を翻し、国内をガタガタにしていくトリガーとなっていくが、それはのちの話。



  サンサ王国宮殿会議室


 パルセは怒り狂っていた。否、ただただ狂っていたとしか形容できない。


「クソクソクソクソクソ!なぜだ!なぜあのような蛮族どもに敗れる!仮にも先進国が!先進国が後進国の軍に損害ならまだしも敗北?どう言うことだ!」


 パルセは調度品、机、ありとあらゆるものに当たり散らす。その矛先は当然その場にいた臣下にも及ぶ。

 しかし臣下はパルセを諌めようとする。


「王様、これ以上は無理です。プライドをへし折ってでもここは講話しましょう。情報など後々どうにでもできます」


「うるさい!」


「王様!でないとあなたの命も危なくなりますぞ!」


「ぐっ…わかった…」


 この後すぐに講和が結ばれた。形こそ対等であったが、実際はアシハラ皇国がサンサ王国を下にする形となり、サンサ王国は敗戦を認めた形となった。

答え合わせです。

正解は「三すくみ」です。

三すくみとは蛇はカエルを食べ、カエルはナメクジを食べる。最弱はナメクジかと思いきや、ナメクジは集団で蛇に襲いかかり蛇を溶かして食べる。

このような三曲構造を三すくみって言います。

今回は先進国(カエル)が、後進国(ナメクジ)によって逆襲的な感じなのでこんな変なタイトルになりました。


更新ペースについてですが、週に2本か3本投稿できたらいいなぁって考えてます

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