表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気苦労の多い日本さん  作者: 蓬莱
第1章 世界戦争
12/37

バイル西部海戦

今回から少し書き方を変えてみました。

  2019年4月27日アシハラ皇国西部カムハラ港


 出発から2日後、予定通り日本国国防軍バイル大陸遠征軍はアシハラ皇国に到着し、下船、整列をしていた。そして遠征軍総司令官の羽村大将は整列した兵士に訓示と今後の展開を説明、その後、皇都から使者の案内に従い一路馬車で皇都へ向かっていた。


「……」


「ど、どうされましたかな?そんなにまじまじと外をお眺めになられて」


 車内で一言も喋らず、じっと外を眺めている羽村を不思議に思い、思い切って声をかける使者。すると我に返った羽村は「これは失礼」と使者に向き直った。


「あ、いや、あまりにも長閑な原風景だったもので、つい見とれてしまいました。ははは」


 使者はポカンと不思議な顔をする。(この田舎風景のどこが珍しいのだ?)と思っているようだ。

 それを察した羽村は使者に語る。


「我が国には余程の僻地に行かない限りここまで自然と人里が融合した風景はないのですよ。あってもそこは老人ばかりでほとんど活気もなく、子供もいない。まるで時が止まってしまったような感じなんです。だからここは時間の流れを感じながらこの風景を感じられていることが私にとって貴重な体験なのですよ」


 それを聞いた使者は風景の珍しさ云々よりも、その風景がなくなるほど発展した街を見てみたいという気持ちが湧き出てきた。

 そんなことを考えているうちに皇都、皇宮についたようだ。



  アシハラ皇国皇宮


 羽村は案内されるまま、謁見の間にたどり着いた。皇宮や皇都の印象はどこか古くさい。というか都市の作り自体が古都平城京や平安京に似ているのである。しかし、服装はどこか洗練され、日本とはまた別文化を育んでいる感じだ。

 そして通された謁見の間で羽村は予想外のものを見た。建物の内装ではない。国皇の座る玉座よりも低い位置に玉座が中央になる様に二列に整列した役人。正確にはその内の一人に、だ。


(や、山本五十六⁈いや、そんなはずは…)


 驚きをなんとか押さえ込み、国皇との謁見に挑む。


「よくおこしなった。ニホン軍の将軍殿。私は国皇のテルヒト・アシハラだ。此度はよろしく頼む」


「はっ!日本国国防軍バイル大陸遠征軍総司令官、羽村大将であります!この度は兵士共々お世話になります」


 羽村はハキハキとした口調で挨拶をする。


「うむ、できることがあればなんでも言ってくれ。言う通りに取り計らおう」


「では今後の展開について説明したいのですがよろしいでしょうか?」


「ああ、もちろんだ。と、言いたいところだが一つ質問したい。構わんか?」


 いきなりだな、と思いつつ羽村はテルヒトの質問を聞く。


「もちろん、構いません」


「では…」


 テルヒトは目を細め、羽村を見つめながら問うた。


「日本はいつ、再軍備を?再軍備ということは憲法9条が大きく改正されたというところでしょうかね」


「⁈」


 羽村は異世界の人間から日本国のしかもこの世界の住人は誰も知り得ない情報を知り、それを踏まえた上で質問されたことに驚きを隠せなかった。


「なぜそれを?この世界の住人は誰も知り得ないじのはず」


「…そりゃあね。私も日本人だからね。ねぇヤマモト海軍大臣」


 思わず問いただした羽村はその次の答えにとうとう二の句が継げなくなりそうだった。


「あなたも…日本人…だった?それはどういう…」


「どういうもこういうも、私は転移者なのですよ。そこにいる山本五十六さんもそうです。私は10年前、山本さんは6年前です」


「…今は何も言いますまい。話を戻しましょう。現在、我々は貴国西部のカムハラ港で停泊中。本格的な作戦行動は3日後となります」


 テルヒトの説明をなんとか聞き流し、本題に入る。しかし、3日後という言葉にテルヒトは反応する。


「3日後?なぜです?2日後でも良いでしょう?」


「後続として砲兵大隊と輸送ヘリ部隊、攻撃ヘリ部隊、爆撃機部隊が来ます。それを待ちます」


 羽村の説明にテルヒトは納得する。すると横からヤマモト海軍大臣が口を挟む。


「なるほど…しかし爆撃機部隊か…滑走路が必要ですな。早急に整備させましょう」


「ありがとうございます。爆撃機部隊は敵の海軍基地を叩きます。西部にはゲールの大軍港があったと記憶しています。陸は技術格差的にどうとでもなると予想しています」


「うむ、パルコ軍港だな。あそこは大規模だ。手を打たねばならないな。そしてそこを抑えれば敵首都、ゲルマニクスは目の前だ」


「その通りです。しかし、我々はまだ人工衛星打ち上げができていないため、精密さはあまり求めることができません。よって精密爆撃はF-2が行います」


 ヤマモトを含む官僚がテルヒトと羽村の会話についていけず、口を開けてポカンとしている。その後すぐに謁見は終了したが、誰も先ほどの会話内容を尋ねようとしなかった。どうせ聞いてもわかるか馬鹿野郎!と諦めたのだった。

 そして羽村が謁見の間から退室しようと挨拶をしたその瞬間、突然伝令の兵士が飛んできた。


「こ、国皇陛下!た、大変です!ゲールの大艦隊がカムハラ港へ向かっているとのこと!ワイバーン飛空隊もかくにされたと南部監視塔から報告がありました!」


 これを聞いた羽村はカムハラにいる海軍に連絡を取った。



  カムハラ港日本艦隊旗艦はりま


「水上レーダーに感あり!100km先におよそ800隻の大型艦艇!ゲール軍と思われます!」


「航空レーダーにも50の飛行物体が大型艦艇と同距離にいるのを確認しました!」


 はりまの艦橋はレーダーに映った敵影に対応すべく大忙しだ。それは艦長の大谷も例外ではない。そこへ連絡が入る。


「こちらはりま艦橋。艦長の大谷です」


 大谷は入ってきた通信にでる。通信の相手は確認せずともわかる。羽村だ。


『私だ。各艦に戦闘態勢をとらせてくれ。敵艦隊と航空部隊がくる』


「こちらでも先ほど捉えた。艦載機を順次発艦させる。」


 この世界に来てから気づいたこととしてレーダーがある。特に水上レーダーの索敵範囲が2.5倍ほど拡大したのだ。おそらく、この惑星自体が地球よりも大きい為だと大谷は考えた。

 実際、調査機関の報告には惑星が地球よりも大きいことは報告に上がっていた。そのほか、大気成分、重力は地球さほど変わらないとも。


(ともあれ、敵をより早く見つけ、対処可能なのは嬉しいことだ)


「我々も動くぞ、はりま、あたご、

 ひえい、あかぎ、はこれより敵艦隊迎撃、及び撃滅を行う。機関始動!目標、ゲール艦隊!各艦、旗艦を中心に単横陣にて行動せよ!」


 こうして、日本海軍はゲール艦隊迎撃に当たる為行動を開始。同時に両者初の対決となるのであった。



  1時間後バイル大陸西部海域


「敵艦隊までの距離、およそ35km、まもなく射程圏内です!」


 それを聞いた大谷は号令する。


「各艦、対艦、対空戦闘用意!射程圏内に入り次第、順次攻撃を開始せよ!船務、敵速は?」


「敵速はおよそ5ノットと鈍足、このままいけばもう30分ほどで視認距離に入ります」


「わかった。警戒を厳とせ…」


「レーダーに感あり!ワイバーン飛空隊と思しき機影およそ20がこちらに急速接近中!あと5分で視認距離に入ります!」


 突然の敵襲報告に艦内、いな艦隊全体がより慌ただしくなる。

 しかし大谷は冷静に対応するように命じる。


「慌てるな!まだ5分ある。落ち着いて配置につけ!あかぎに連絡!発艦準備のまま待機!各艦はミサイルではなく、主砲で応戦せよ!」



  ゲール軍偵察ワイバーン飛空隊


 偵察ワイバーン飛空隊隊長は何かよくわからない底知れない悪寒が走っていた。だが、それが何かわからない。

 彼には家族がいる。妻と幼い娘、そして父母だ。彼はこんなところで死ぬ気はさらさら無い。なにがなんでも生きて帰るとここに誓っている。


「15分ほど前にニホン軍の艦隊出撃を聞いて、俺たちが竜母から発艦したが…なんだ、なんなんだこの悪寒は…」


 それを聞いた彼の部下は彼に声をかける。


「気にしすぎですよ、隊長。所詮は4隻、こちらはワイバーンが20もいる。これで沈まない艦隊なんて、先進国の艦隊ぐらいですよ」


「そうだな…」と彼はその悪寒を拭うことができぬまま、目標へと飛行していく。

 すると目の前に大きな船が見えて来た。


「で、でけぇ…しかも大砲っぽいのもついてやがる…だがここまでh…」


 ズドォォォンという音と共に隊長騎の隣を飛んでいたワイバーンが撃墜される。


 いきなりの出来事に隊長は頭がついていかなかった。そしてそのことばかりに気を取られ、爆音と爆発に驚いた彼のワイバーンは大暴れし、彼はうっかり手綱を手放してしまった。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 彼はそう叫びながら海へと真っ逆さまに落ちていった…

 そして数分も経たぬうちに偵察ワイバーン飛空隊20騎は全滅した。



  はりま艦橋では…


「目標、全機撃墜!」


「よし、各艦、被害報告をせよ!また、敵とはいえ、人間。生存確認も行うぞ!」


「全艦被害なし!警戒態勢に移ります」


 日本艦隊は目標全機撃墜し、少し安堵していた。しかし誰も次は艦隊戦であることを忘れてはいなかった。


(ふう…艦載機の発艦はなかった…一度発艦してしまうと補給に時間がかかるからな。だが今から大暴れしてもらうとしよう)「あかぎに連絡!艦載機を発艦させよ!奴らにお返しをしてやれ!」


 その指示を下すと、待ってました!と言わんばかりの勢いで艦載機10機が飛び上がり、まっすぐゲール艦隊へと飛んでいった。


 それから約数分後…


「艦長!全艦射程圏内に入りました!」


「よし、弾種榴弾、全艦、うちーかた始め!」


「ヨーソロー。弾種榴弾、全艦うちーかた始め!」



  あかぎから艦載機が発艦してからしばらくした頃、ゲール艦隊旗艦では


 ゲール艦隊司令官は頭に血が上っていた。そりゃ船4隻の艦隊に20騎という大軍をおくり、つい先ほどまで魔信で繋がっていたのが突然切れたのだ。これで考えられることは一つ、全騎撃墜(ぜんめつ)の4文字である。


「くそ!全滅?ありえん!竜母に連絡しろ!残りのワイバーン30騎全て発艦させよとな!」


 この命令に副官が異見する。


「司令官、お待ちください。今このワイバーン30騎全て発艦させてしまっては直掩のワイバーンがいなくなります。それに20騎のワイバーンを一瞬で葬る能力があるならば30騎など到底数のうちには…」


「うるさい!20騎の襲撃を受けて相手も手傷は追ったはずだ!ならば…」


 そう言いかけたところで、彼の乗った旗艦の隣、竜母はドドォォォォン!という音と共に爆発した。


「な、なんだ…一体何が…」


 そうして彼は空を仰ぐ。すると見慣れないものが高速で空を飛び、羽についている何かを発射した。

 それは高速で船にあたり、その船は爆発、一瞬で海の藻屑と化していった。

 瞬く間に40隻が沈み、彼は茫然自失となった。が、彼の悪夢はここでは終わらなかった。


 ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!


 連続して、またしても周りの船が爆発し沈んでいく。しかし、今度は何が飛んできたか彼は理解できた。


「砲…撃?馬鹿な…こんな距離から、ましてやこんな正確に?奴らはどんな魔法を使ってるんだ…」



  ゲール艦隊から26km先。はりま艦橋


「全弾、目標に順調に命中しています」


 その報告に大谷は満足そうに頷く。


「うむ、あとは撤退してくれるかどうかだな…」


 と言うのも、弾薬ってのは無限にある訳ではない。当たり前だ。さらに、地球でもこっちでも昔から弾薬が少ないと言うのが日本なのだ。だから大谷もかなり残弾を気にしている。


「残弾的には残りの輩を排除しても弾薬はある程度残ります。問題はないかと」


 大谷の心境を察した副長が声をかける。それを聞いてホッとする。

 まぁそんな感じでボコボコにされているゲール艦隊司令官はと言うと…


「あ、ああ…」


 生きていた。悪運が強いのか、幸運なのか…だがもう完全にへたり込んでしまっている。

 そこへ似たり寄ったりな状態の副官が声をかけた。


「し、司令官…撤退しましょう。言い訳は後々どうとでもなります…ここは撤退を…」


 司令官は無言でコクコク頷く。



「敵艦隊撤退します!」


 船務からの報告に艦隊全体が歓喜した。

 大谷もやっとひとごこちつけるといった表情。


「我々も撤退する!全艦、180度回頭!」


「180度回頭ヨーソロー!」


 こうして後にバイル西部海戦と呼ばれる戦いは、日本軍被害なし、ゲール軍298隻損失という圧倒的結果に終わった。

 そしてこの戦いの結果は全世界に波及。後の陸戦の結果と合わせて先進国、後進国問わず日本の名を轟かせることとなる。







 



補足として、前回、テルヒトはヤマモトに艦隊出撃を指示しましたが、ヤマモト自身は出撃せず、彼の部下がいきました。まぁその辺りは気が向いたら短め番外編でも書きます。

あと、これからリアルの都合でペース落ちます。

長文になりつつあるのと、ネタが切れ始めたことが理由です。こんなやつ出したら?とか船の名前こんなのがいいんじゃない?とか意見あれば遠慮なくお願いします。また、日々ご感想、評価ありがとうございます!今後とも頑張っていきます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ