遠征準備
やっと書けた…
ゲール軍の突然の侵攻に対して、シタラガの町は大混乱に陥っていた。民衆は逃げ惑い、兵士は防衛線構築に必死になった。しかしどう足掻こうと、ゲール軍は大挙をもって押し寄せ、その勢いに対してシタラガに駐在している軍では到底太刀打ちができず、すぐに押し込まれてしまった。
「くそ!ワイバーン飛空隊はまだか!敵は地上軍のみなのに…」
そこにゲール軍の投石機による攻撃が飛来する。
「ぐわぁぁぁ!」
「ちくしょう!助けてくれぇ!ガッ…」
一人、また一人とアシハラ軍は倒れて行き、そして侵攻から1時間たらずで、アシハラ皇国東部国境の町、シタラガは陥落した。
シタラガで乱戦が続いていた頃、日本国国家安全保障会議会議室では
「在アシハラ皇国日本大使館職員20名のうち19名が斬殺、1名が重傷を負いました。また、この報告と一緒にアシハラ皇国がゲール帝国の侵攻を受けているという報告も入りました。戦況はアシハラ皇国側が劣勢、東部国境の町、シタラガは陥落寸前とのこと。これに対しアシハラ皇国は正式に我が国に対し参戦要請を申請してきました…」
佐藤含め会議室の全員が驚いた。そしてその事を佐藤は改めて報告してきた役人に確認をとる。
「大使館職員20名のうち19名が斬殺され、さらにはアシハラ皇国から正式に参戦要請が来たのですね?」
「はい、その通りです」
そして今度は佐江島が佐藤に話しかける。
「おい、佐藤さん、まさかあんた…」
この声かけに佐藤は静かに頷く。
「…私は参戦要請を受理しようと思います。」
この答えに佐江島は佐藤にさらに追求する。
「佐藤さん、あんたその意味がわかってんのか⁈戦争だぞ⁈まだ国交成立から間もない国の参戦要請を受理するだと?何考えてんだ!」
佐江島は周りのことなど気にかける様子もなく佐藤に怒鳴り散らす。
「佐江島さん、わかってます。わかってますとも。この要請を受理する意味も、戦争をする意味も。下手をすれば多くの国民の命を危機に晒すかもしれません。でも既に大使館職員とはいえ日本国民が死んでいる!そんな状況、許せるわけがありません!どのみち我が国とゲール帝国との戦争は不可避です。ならば今ここで叩かねばなりません。」
普段はあまり見せない佐藤の一面に佐江島は思わず後ずさりする。しかしすぐに持ち直し、落ち着いた表情で佐藤に確認をとる。
「佐藤さん、本当にいいんだな?後戻りはできないぞ?」
「佐江島さん、私はもう決めたのです。これ以上血が流れる前に止めなければならいとね。」
「わかった。すぐに準備をさせる。」
翌朝、大使館職員殺害事件とアシハラ=ゲール戦争に参戦するということが佐藤の口から直接記者会見で明らかにされた。その後、佐藤は佐江島に問いかける。
「世論はどうなっていますか?」
「戦争賛成に傾いてはいるぜ。なにせ大使館職員が殺されたんだからな。だがあの民主党と共産党は相変わらずわめいてるよ。」
「放っておきましょう。どの道役に立たないのですから。」
「はははは、そりゃ幾ら何でも言い過ぎだろ。まぁせいぜいうまく使いましょうや。」
「そうですね…」
そして、日本はバイル大陸遠征を開始したのだった。
アシハラ皇国国皇謁見の間
シタラガ陥落の報告を受けた国皇テルヒトは狼狽していた。
「なっ…もうシタラガが陥落しただと?」
「はっ、15万を超える軍勢で押され、立て籠れば投石機で破壊される。その繰り返しでシタラガは陥落したとのことです。」
「ワイバーン飛空隊は何をしていたんだ!」
「ワイバーン飛空隊は皇都周辺と南部警戒にあてていましたので…東部は完全に手薄になっておりました。申し訳ありません。」
そこへ将軍のタツヒコ・フシミが割って入り、謝罪を述べる。
「フシミ将軍がこんなミスを犯すとは…」
一部の高官が声を上げる。
「黙れ、誰にでも誤ちはある。それはフシミ将軍とて同じだ。過ぎたことは仕方があるまい。」
テルヒトは高官を叱責するとタツヒコに向き直った。
「しかしフシミ将軍、この誤ちは大きいぞ。」
「誠に申し訳ありません。しかし先程ニホンの大使館から連絡があり、参戦要請に応じてくれるとのことです。」
テルヒトは思わず歓喜の声を上げてしまう。
「本当か!ならそれまでに準備をせよ!ワイバーン飛空隊の一部を東部奪還軍に組み込め。あとは歩兵だな。フシミ将軍、どのくらい集まる?」
「動かせる兵を国中から集めて5万といったところでしょうか、投石機は500台ほどならば。」
タツヒコの回答にテルヒトは顔をしかめる。
「敵の3分の1か…足止めにはなるだろう。よろしい。直ちに編成を開始せよ!」
「はっ!」
アシハラ皇国も東部奪還に動き出すのだった。
シタラガアシハラ侵攻軍本部
アシハラ皇国侵攻軍将軍のベーリング・アインツヴァインは本部となっている建物の中で高笑いしていた。
「ガハハハ!所詮アシハラ皇国の軍などこの程度!こんなものなら一月とかからず皇都を落とせるだろうな!」
この高笑いに参謀が口を挟む。
「誠そうでありましょう。しかし、まだニホンが残っておりますぞ。奴らの戦闘力は未知数でございます。」
「フン、所詮はちっぽけな島国の軍などおそるるに足りんわ!しかも外海に閉ざされていたとあっては余程の蛮族であろうな!」
「しかし…」と参謀は繋いだ。
「ニホンは転移国家を名乗っております。もしかすると…」
「黙れ!我が軍にかかればたとえ先進国の軍であろうと一捻りだ!…まぁ念のためだ、予定通りワイバーン飛空隊を呼んでおけ。」
「はっ!」
参謀の言葉が気に入らなかったのかベーリングは声を荒げたが、すぐに落ち着き、命令を下した。参謀もこれ以上は薮蛇と判断しておとなしく返事をした。
2019年4月25日海軍横須賀基地
海軍横須賀基地には日本国国防軍バイル大陸遠征軍が集結していた。概要はこうである。
陸上戦力
・第五〜第八機械化歩兵師団
・第四戦車師団
・第七戦車師団
・第十三航空隊
海上戦力
・戦艦はりま (旗艦)
・護衛艦あたご
・護衛艦ひえい
・護衛艦こんごう
・空母いずも
・空母あかぎ
・輸送船数隻
航空部隊
・P-3C改造爆撃機3機
総勢陸上部隊5万、航空戦力F-15約70機、爆撃機3機となる。そしてこの数はすぐにアシハラ皇国に知らされた。
アシハラ皇国国皇謁見の間
謁見の間に伝令の兵士が入ってくる。
「報告致します!ニホンの大使館より、ニホン軍が2日後、早くて明日の深夜に5万の兵を率いて到着するとのことです!」
「よし!これで…これで押し返せる…海軍大臣!場合によってはゲールの海軍と鉢合わせするかもしれん。竜母艦隊を率いてニホン軍と海上で合流せよ!」
「承知した。」
どこかぶっきらぼうな答え方をした初老の男性、イソロク・ヤマモト。本名山本五十六はテルヒトの指示に従い、竜母艦隊を率いて日本軍と合流しに向かった。
余談だか、この時山本の胸中はかなり興奮していた。なぜならかつて自分がいた国がまだ存続していたこと、そして、もしかしたらもう一度、日本の土を踏みしめることができるかもしれないということ。そんな気持ちもあってか今回の作戦には非常に気合を入れている。さらに言えば、死んだはずの人間がいるということを聞いたら未来の日本人はどんな反応を見せてくれるのか楽しみであったりする。
ゲール帝国皇帝執務室
皇帝ルドルフは宰相エンゲルに確認を取っていた。
「ワイバーン飛空隊の東部搬送と海軍の西部派遣の準備はできたか?」
エンゲルは内心かなり毒づきながら恭しくルドルフの質問に答える。
「はい、全てつつがなく。ワイバーンは500騎、海軍は軍艦850隻、準備万端にございます。(ちっ、この肥え腐ったブタをさっさと柱に吊るしたい…そうすれば民衆はもっと楽に…)」
「よろしい。ククク…ニホンにアシハラ皇国め。我が帝国の恐ろしさをさらに見せてくれるわ…ククク、クハハハハ!」
エンゲルはルドルフが高笑いしている隙に、やはりこの男は危険だ、と考えつつ皇帝執務室を出て行った。
さ
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