平野の救出 2
ステラの後を追うとそこには巨大な祭壇の様なものがあった。
「なんだ…これは」
「ここに生け贄を捧げ、邪神を召喚する。邪神は願いを叶えてくれる。恐らくベルフェゴールは魔力を得るためにここへ来たはずよ」
ここへ来た…?何故過去形なのだ。
「でも…もう遅かったみたいね」
祭壇の手前。そこには傷だらけのグラウトとルシファー、それに…
「平…野」
血だらけの平野の姿があった。見るも無惨なその姿に絢斗は声を失った。
「……あ、あぁ…ウァァアァァァァ!!!」
絢斗は泣き叫んだ。想い人を失った悲しみとその命を奪ったベルフェゴールに。
「ニン…ゲン…オソカッタナ…」
後ろを振り向くとそこにはベルフェゴールの姿があった。
「てめぇぇ!ベルフェゴール!!!!!!!」
絢斗はベルフェゴールに向かって拳を振った。叶うはずもない相手だとわかっている。しかし、感情を抑えられず、反射的に拳が出たのだ。
ザシュッ…
「…は?」
かわされた?いや。自分の腕が宙をまっている。
「う、ウワァァァァァ!!!」
「やめて!ベルフェゴール!」
「ダマレ…ステラ…」
「ジャマヲスルノナラ…オマエモ…!!」
そう言うとベルフェゴールはステラの身体を切り刻んだ。こいつはおかしい。恋人が自分の過ちを止めに入ったのに躊躇もなく殺す。まるで…
「悪…魔…」
「サヨナラダ。ニンゲン。」
俺は意識を失った。
ーーーーーー
「ここは…」
これで三度目だろう。無の空間。俺はまたそこに立っていた。辺りを見回すとあの時の黒い影があった。
「オレの…ウマレカワリヨ…」
「カガリ…」
あの時の悪魔。カガリだ。やはり声も見た目も俺そっくりだ。
「アノモノタチヲ…タスケタイカ…」
「もう遅いよ。もう手遅れだ。」
「オレヲ…ウケイレヨ…」
「受け入れる?受け入れてどうする。」
「アノモノタチヲ…タスケラレル」
「助けられる?どうするんだよ」
「ワレは再生の悪魔であり破壊の邪神…ワレノチカラヲウケイレレバアノモノタチヲ…スクエル」
平野たちを救えるのだろうか。しかし確証はない。でもその少しの可能性に賭けたい。
「受け入れたら…どうなる」
「キサマガ…アクマトナル…オマエ二…再生と破壊のチカラヲアタエル…」
俺が悪魔となる。つまりはもう人間界には戻れない。人として生きられなくなる。でももうそれしかない。平野たちを救えるのなら。
「平野たちを救えるなら…例え俺は悪魔にでもなる」
「イイヘンジダ…」
ーーーーーー
ドクンッ!
俺は目が覚めた。
「傷が…ない」
先ほど失った右手も、ベルフェゴールに受けた斬撃による傷も無くなっていた。しかし、頭に妙な違和感があった。恐る恐る額に触れると固い感触があった。
「これは…ツノ?」
カガリと名乗る悪魔のような一本のツノがあった。背中にも違和感があり触ってみるとコウモリの様な羽がついていた。
「本当に…俺は悪魔に…」
「ソノスガタ…オマエハ…カガリ…」
「ベルフェゴール。お前だけは絶対に許さねえ。お前を倒して平野もルシファーもグラウトもステラも。俺が助ける!」
「フ、フハハは!オモシロイ…」
「行くぞ…ベルフェゴールッ!」