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好きな人の好きな悪魔(ヒト)  作者: なかむぅ
3/14

黒キ影

「朝か…」

絢斗はそう呟き、ベッドから体を起こす。

昨晩の事のことなど関係のなく窓を開けるとそこにはいつも通りの風景がそこにはあった。

穏やかな風、泣いた後の目に染みる眩しいほどの日差しは今日は心地よい。


悪魔の王ルシファーと契約をした。

悪魔との契約と聞くと魂を捧げるや生贄を捧げる。などと言われているが…そんなものではない。仮にも「恋人同士」となったのだ。俺には平野という好きな人がいる。だがルシファーのいう、「人類を滅ぼし、人間界を乗っ取る悪魔」「人間と恋に落ちる悪魔を滅ぼすため」俺はルシファーとの契約を選んだ。

「そういえばルシファーは大丈夫なのだろうか。共存することがダメ、恋に落ちるものはダメとなると…」

「その点は大丈夫だ。我は目的が違う。お主と一緒にいても私は王だ。人間界を行き来する権限を持っている。それに貴様に恋に落ちるほど私もきとくではない。

さすが王様だ。あらゆる権限を持っているという点では悪魔の世界でも同じのようだ。というか…

「お前ずっと俺の布団の中にいたのかよ」

「ふとん…これはなんと心地の良いものじゃ」

本当に異性として見られていないらしい。仮にも健全な男子高校生と女の子だ。同じ布団で寝るのはアウトなのではないか。

「ところで主よ。」

「なんだ」

「まだ名を聞いていなかったな」

そういえばそうだ。俺はこいつにまだ名を名乗っていない。それにしても名も知らない相手の唇を奪うなどもしかしてビッ…

「何を考えておる。それになんじゃビッチとは」

「な、なんでもない。というか心を読むな」

都合の悪い時に心を読まれるのは少々やりづらいな…

「俺の名前は篝 絢斗だ」

「篝…か」

ん?おかしい。何やら急に険しい表情になった。

「どうしたんだ?」

「いや、なんでもないぞ。気にするな。絢斗よ」

いきなり下の名前か…まあ当然だろう。何度も言うが仮にも「恋人同士」だ。


それにしても学校はどうするべきか。

小学生、中学生のように必ず進級できるわけではない。これまで気になるほどの欠席をした覚えはないが念のためだ。今日から行くべきだろう。

それに彼女…平野の持っている分厚い本が「魔道書」であるか確認するためにも…

〜♪

始業の音楽がなる。

いつも通りの日常だ。そんな当たり前の事だがこれまでに悪魔を二体見てきた。そんな異形の存在がこの世界を滅ぼそうとしている。そう考えるとこの当たり前の日常に感謝をすべきなのだろう。

「おい」

後ろを振り向くとそこには金髪の少年…龍弥が立っていた。

「なんだよ。」

「お前なんで昨日休んだんだよ!心配したぞ!」

「んやぁ、ごめん色々あって…」

「そうか…平野の件、どうするんだよ。」

「ッ!!」

話しても良いのだろうか。「悪魔を見てしまった。」こんなことを言えば明らかに頭のおかしい奴だ。しかし近況報告をせねば協力してもらっている身だ。なんとかごまかして話してみる。

「それがさ…平野のやつ彼氏がいるみたいでさ…いやぁ、一緒に歩いてる所をみて思わず萎えて学校来れなかったわけよ…」

「なんだそんな理由か」

「そんな理由ってなんだよ」

二人で笑いあった。こんなやりとりが続くことも俺の一つの目的となった。当たり前の日常を守るため。そう決意した。


ーー…見つけたかもしれないよ。こいつからはお前の言う「悪魔」のニオイがする。それもとびきり上級の…な。お前の探す「王」とはこのことじゃねえのか…?

暗く何もない空間。一人の少年が呟いた。


辺りを見回すと平野の姿がない。今日は休んでいるのだろうか。

「なあ、龍弥」

「ん、どうしたんだ?」

「平野の姿がないが」

「平野なら昨日から休んでるぜ」

「そうか…」

無理もないだろう。クラスメイトにあのような姿を見られたら気まずくて来れなくともおかしくはない。悪魔とかは別として。彼女は欠席することは少ないし成績もいい方だ。その辺の心配はなくても大丈夫だろう。

〜♪

終業の音楽が鳴り、普段通り教室の生徒は解散した。平野の持っている本が魔道書か確認するのはできなかったが、いつも通りでよかった。

俺はカバンから分厚い本を取り出し、誰もいない非常階段でそれを開いた。

「…なあ絢斗」

「なんだルシファー」

「なにやらあやつからも「悪魔」の気配を感じる。」

「あやつ?」

「龍弥…?と言うものか。そいつから悪魔の香りがしたのじゃ。」

「魔道書を持っていると言うことか。」

「いや、違う。あやつから匂うということは恐らく「憑依」しているということか。」

「つまりは取り憑いていると…」

どういうことだ。そんな気配はなかった。もしや意識を乗っ取る時間を自由に操れるのだろうか。

「どうすればいいんだ。」

「簡単じゃ。悪魔を殺せば良い」

「どうやって。」

「あの人間ごと。殺せば良い。」

「…は?」

なにを言っているのだこの悪魔は。友人を殺せ?いくら悪魔でも残酷過ぎる言い方だ。

「他に方法はないのか」

「ないことはない…が可能性は低い」

「なんだ…その方法って」

「人間に憑依できる時間は限りがある。魔力の消費が激しく一度姿を戻して魔力の回復を待たねばならぬ」

なんだ。簡単なことだ。その姿を戻している時間に奴をたたけば…

「じゃが。」

「なんだ。」

「悪魔というのは非常に注意深いものでな。その姿を現わす所を探さねばならないだろう。完全に意識を乗っ取るまでに4日はかかる」

「猶予は4日か…」

その間に奴を突き止め叩かなければならない。猶予は4日だ。居場所の特定の仕方だ…あれを使うしかない。

「どうするのだ絢斗よ。迷う時間などない。殺すか、後者にかけるか。決めよ」

「奴の後をつける。ストーカーだ。」

ストーカー。それは俺が本来意中の女の子にするはずだったもの。しかし、男をつけるというのは非常に気味の悪い話だが仕方がない。

「それは単純なやり方じゃ…それで奴が姿を表せば良いが。だが他に方法があるか分からぬ。その手で試してみよう。」

親友のためだ。男をつける気味の悪さは我慢しよう。学校の帰り、龍弥をつけることにした。

黒キ影の正体を突き止め、倒すために。


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