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好きな人の好きな悪魔(ヒト)  作者: なかむぅ
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新しい出会い

2.新たな出会い(悪魔)


「朝か…」

昨日の夜の事を慰めるかのように穏やかな風が窓から流れる。差し込む光は眩しく、酷くないて赤くなっている目に染みる。

「今日は学校に行く気分じゃないなぁ…」

昨日あんな事があったのだ。そう思うのは当然だろう。今日は学校を休むことにした。

幸い親は仕事で忙しくここ何日か帰ってきていない。まだ一週間ほど戻らないだろう。サボっても何も言われない。

「けどずっと家にいるのはさすがにな…少し出かけてみるか…」

気分転換に俺は出掛けることにした。近くの公園に俺の好きなアイスクリーム屋がある。今日はそこで過ごそう。


外に出るといつもの街並み。住宅街ということもあり、人々の賑やかな声も聞こえる。昨日の事がまるで夢のようにいつもの風景がそこにはあった。俺は公園に足を運んだ。

「いらっしゃい絢斗くん」

アイスクリーム屋のおじさんだ。休みの日はいつもここに来るので名前まで覚えられているようだ。

「おじさん、いつものお願いします。」

「あいよ」

ここはBARか「マスターいつもの。」みたいな…

そんなこと考えられるって結構余裕だな俺は。

いや、そうでもしてないと心が持たないのだろう…

「絢斗くん、何やら浮かない顔だねぇ」

おじさんは俺に注文したものを渡すとそう言った。

「ああ…少し疲れてて…」

「そうかい。まぁ、若いんだから色々な事があって当然さ。恋の悩みとか恋の悩みとか…」

「…お見通しか。」

気づくと二人で笑っていた。笑い話ができるほどだ。なんとか立ち直れそうだ。

「だからかぁ、今日学校だろう?なのになんでここにいるのかなぁと思ったなぁ」

「今日は休んじゃったよ」

「そうかい。まあ疲れを取るためにお日様の光でも浴びながら散歩でもして来るといいさ。」

「うん、ありがとね、おじさん。」

おじさんはにっこり微笑んで手を振った。

この公園は広い。花畑もあるし散歩には丁度いい。

「ここで平野と散歩するのが夢でもあったんだけどなぁ…」

また泣いてしまった。男らしくないな。けど悲しい。涙で前が霞んで見えない。このまま歩けば…

バタンッ!

「ってぇ…」

何かにつまずいて転んだようだ。石か何かだろうか。俺は起き上がり足元を見てみる…

「これ…は…本?」

そこには分厚い本があった。見覚えがある。

「そうだ…」

昨日平野が教室で読んでいた本に似ている。少しどこか違う気がするが…

「ルシ…ファー?」

聞き覚えがある。ゲームや漫画などでみる名前だ。昨日のベルフェゴールにしてもそうだ。名前に聞き覚えがある。

「我が眠りを妨げる者は…ダレだ。」

「うわぁっ!?」

本から声が聞こえた。驚きのあまり目をつぶり本を投げてしまった。

「いてて…」

少女の声が聞こえた。目を開けるとそこには銀髪の少女が尻もちをついていた。

「君…は?」

「ふふ、我が名はルシファー!悪魔を統率する王なり!」

「悪…魔…」

俺は恐怖のあまり声が震えていた。

「はわわっ、脅かすつもりはなかったんだけど…ごめんねっ!」

銀髪の少女は何故か謝っている。悪魔の王がこんなのでいいのだろうか。イメージ的に庶民には興味などなく例え自分が悪くとも謝らない。そんな奴だと思っていたのだが…

「え、えとルシファー?あの…ルシファー?」

「む、人間界にも我が名は知れ渡っていたのか。人気者は辛いのう…」

なんだろう。王と名乗るほど大した悪魔ではない気がする。

ぐう〜

そんな音が聞こえた。あたりを見回すと何もない。目の前に顔を真っ赤にした銀髪の少女が…

「まさか…お前…」

「はう!?」

「お腹…空いてるのか?」

「し、仕方ないじゃろ!この世界にきてずっと「魔道書」の状態で3日も過ごしたのじゃ!」

魔道書…?つまりは平野が持っていた本も魔道書ということか…

「なあ」

「なんじゃ」

「その魔道書ってどう使うんだ?」

「まあ、色々ある。悪魔の召喚の形式が書かれた物、私のように魔道書そのものになり、開けば元の姿に戻れる者…」

なるほど。つまりはベルフェゴールは前者、ルシファーの場合は後者になるわけか。投げた時に開きでもしたのだろう。

「まて、なんでお前らはこの世界にきた。他の悪魔もこの世界にいたりするのか」

「他の悪魔は知らぬが…と、とりあえず何か食わせてはくれぬか…もう限界じゃ…」

本当に悪魔の王なのだろうか。こいつは。

「わかった。それじゃあ近くのファミレスに…」

「ふぁみれす?分かった。うまいものが食えるのなら主について行くことにしよう。」

そうして俺とルシファーは昨晩龍弥といったファミレスに行くことにした。

「それでさ。」

「むぐ?」

誰かに似ている。誰とは言わないが金髪の不良少年によく似ている。あいつならいい。でもこいつは仮に悪魔でも女の子だ。がっつく姿は似合わない。

「さっきの話の続きだが、お前らは何故ここにきた。」

「様々な理由がある。一つ目は我々の世界で異性にモテず、人間界で恋愛を目的にくるもの。」

「すごく虚しいな。」

「でも人間にとっては悪魔は中々ルックスがいいらしい。基準が違うので分からないがな。」

まあ確かに漫画やアニメでみる悪魔はかっこいいし可愛い。この銀髪の少女も悪くはない。それに何かいい匂いも…

「二つ目だが」

「ひゃいっ!?」

変な声が出た。変な考え事をするのはやめよう。

「ん?二つ目だが人類の殲滅を試みようとするもの。」

「なっ!?」

「理由は簡単じゃ。王になれなかったものが自分が世界を支配するという望みを叶えられず諦められず、人間界を乗っ取り悪魔の世界を作ろうとするもの。」

つまりは今は何もないがその計画が立てられているということか…予言などで人類が滅亡するという話も案外嘘ではないのかもしれない。

「お前は…なんなんだ?」

「我か…我はその二つともを滅ぼし、人々の記憶から悪魔を消すこと。元々悪魔と人間が共存することは許されない。それに王になった我が王戦脱落者の過ちを正す責任があると思ってな。」

こういうところは王らしい。そう思った。

「しかしどうするんだよ。」

「まだ決まっておらぬ。そこでだ、一つ提案を出したい。」

「なんだ。」

「我と契約をしてほしい。この世界の主である人間と契約をしなければ我々悪魔が居られる時間にも限度がある。」

「契約ってなんだよ。」

「まあ、人間界でいう「恋人」というものかのう。」

「は?」

「え?」

待て、いきなりそんなことを言われても困る。大体俺には平野という心に…

「っ!待てよ…」

昨日の事が思い浮かんだ。あの悪魔と平野のキスシーン。あれはもしや契約というものでは…

「その可能性もあるじゃろうなぁ」

「なっ!心を読むな!////」

心を読める者ほど嫌な奴はいない。

「でもその可能性がある…と。」

「分からぬぞ。一つ目のように恋愛そのものが目的の悪魔もいる。」

でもその可能性は捨てがたい。まだ諦めるのは早い。ということか。落ち込むのはまだ早い。

「それで、契約の件はどうするのだ?」

「それだ。それが問題だ。」

「は?」

「俺には平野という好きな人がいる。契約のこともありまだ諦めるのは早いという事もある。事が済んで契約が解かれ俺と平野がくっついたとしても面倒なことに…」

「いったじゃろう。「記憶を消し去る」と」

「!!」

「つまりは事が済めばお主らの頭の中から我々は消える。それで全てが解決するのだ。」

俺はどうするべきなのか。こいつと契約して全てを片付けるか。自分の気持ちを優先するか。

いや、迷うことではない。記憶が消えれば全ては済むのだ。例え自分の初めてのキスが奪われたとしても、平野の唇が奪われていても。それで人類を救えて平野と過ごせるなら俺は…

「ルシファー」

おれは手をそっと差し伸べた。

「よろしく頼む」

「お主は頭がいい。こちらこそよろしく頼む」

二人は手を握りあった。そろそろ日が暮れる。うちに帰ろう。…うち?

「ルシファー?」

「む?」

「お前はどこで暮らす気だ?」

「もちろん。主の家じゃが」

…いいのか?健全な男子高校生が家に一人のところにこんな銀髪の美少女が住んで。おれの理性が保てるかどうか…いや大丈夫だ。俺には平野という心に決めた人が…決めた人が…

ちゅ…

「!?」

唇になにやら柔らかい感触があった。

「これで契約は完了じゃ」

「あ、あぁ…」

覚悟は済ませたはず。これでよかったのだろう。きっと。人類を守るため、平野と過ごす日々を掴むため、俺と悪魔の王「ルシファー」との新しい恋人生活(仮)が始まる。


新しい出会い(悪魔)

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