囚われの身
幻影の主。その影を追う方法はいまだにつかめていない。だが、一つだけ可能性があるという。
「幻影の主を追う方法。もしかしたら魔力の発生源を探知する能力を持っている方がいれば分かるかもしれませんね。」
「どういうことじゃ。グラウト。」
「はい。幻影は魔力を使い作り出す。その魔力から悪魔を特定することが可能です。」
「そんなことができるのか。」
「ただ、その能力を使えるのは限られた悪魔のみ。ルシファー様の時を止める能力のように悪魔個人にしかない能力。探すのは少し困難かと。」
「アテはあるのか?」
「一応私の所属する騎士団にその能力を持つ方が居ますが、それが気まぐれな方で…戦の時以外はどこにいるのか分からないんですよ…」
いいのだろうか。そんなものを王国を守る騎士団にいても。
「また、悪魔界に戻るということか?」
「はい。ですが、私だけで充分です。騎士団には私から連絡を。」
「うむ、頼んだぞ。グラウト」
「はい。ルシファー様」
そうして、グラウトは姿を消した。そう言えばグラウトは魔道書の状態でなくとも行き来出来るのだろうか。
「ところで絢斗よ」
「なんだ?」
「平野のことじゃが。」
「…なんだ急に」
急に平野の話題を出されたので少々驚いた。相手は思い女をなくしたというのに良くこんな話ができるな。と少々怒りも覚えた。
「もしかしたら…助け出せるかもしれん」
「…は?」
「可能性はわずかじゃ。だが一つ思い出したことがあってな」
「なんだその可能性というのは」
「過去に戻る能力。しかしその能力は一度きりしか使えん。それに、過去に戻ってもいい時間も限られておる」
「つまりはこの時間に戻るということだよな」
「そういうことじゃ。」
「だったらどうやって…」
「お主は一つ勘違いしておるの。生き返らせるのではない。過去の出来事を変えるのだ」
「!!」
「過去を変えれば未来も変わるじゃろ?わしたちはその状況を目の当たりにしている。いつ、どこで、誰が現れるか把握済みじゃ。」
「なるほど…」
「そうすれば簡単に解決させることができる。」
「だけど、どうやってその能力を…」
「それは全くアテがない。昔聞いた話なのでな。本当に実在するのかどうか。実在してもその悪魔が生きているかどうか。」
「…」
「まあ、一応頭に入れて置いてくれ。今はグラウトの帰りを待つとしようかの。」
「そうだな…」
そうして二時間が経った。日が暮れて、外はオレンジ色の空が広がっている。
「ルシファー様。ただいま戻りました。」
「どうじゃった。グラウト。」
グラウトが扉を開け、帰ってきたようだ。その姿は何やら慌てているようだった。
「そ、それが…」
「なんじゃ?」
「人間界にいるとのことです」
「…ふむ…なるほど。して、お主は何故そんなに慌てておる」
「それが…」
「お、落ち着けグラウト。落ち着いて話してくれ。」
「絢斗様…申し訳ない」
「うむ、して状況は」
「魔力探知のヴェルガー。彼は今人間により囚われの身になっているとのことです。」
「それはまずいな…どこにいるのか分かるのじゃろうか?」
「場所はすでに特定されておりますが…奇妙な宗教団体のようでして…相手は厄介だそうです」
「宗教団体かなんだか知らぬが、相手は人間じゃろ?すぐに終わる。」
「そうだといいですが。。「クラウェル」という団体でして」
「まさか…!?」
その団体は知っている。昔ニュースで信者が一斉に逮捕された団体だ。聞いた話だと信者は人が変わったようになりその姿はまるで狂人だと。
「絢斗。何か知っておるのか?」
しかし相手は確かに人間だ。こいつらにかかればどうってことはないだろう。
「いや、なんでもない。すぐに行こう。」
「うむ、そうするぞ。グラウト。」
「はい。ルシファー様。絢斗様」