いつも通りの日常。
人として生きる。あいつらはそう言った。
例え悪魔でも人として生きられる。その自信を俺に持たせるためにあいつらもこの世界では表では人間として生きることを決めた。
一日来ていなかっただけなのにやけに学校が久しぶりに感じる。やはり大きな出来事があると、それだけ時間が経ったという錯覚が起きるのか。
「おはよう!絢斗!」
龍弥が俺に話しかけて来た。あの事件以来、何事もないようで俺は安心した。
「おはよう、龍弥。」
「ところでよ、今日転校生が来るらしいぜ!」
「えらく急だな…」
なるほど、朝から何やら騒がしかったのはそのせいか。
「あとは…その。未だに平野が行方不明になったまま見つからないらしい」
「そうか…」
平野は死んだ。まだ、話すべきではない。この事実はいずれ話そう。前向きに生きると決めたのだ。平野のことは今は忘れるしかない。
〜♪
始業の音楽が鳴る。やはり、久しぶりに聞く感じがした。いつも通りの日常が戻ると思うとどこかホッとした。
「よし。全員いるな。今日は転校生を紹介するぞ。入ってこい。」
「はい。」
ガラッ…と教室のドアが開いた。
「…!?」
そこにはグラウトとルシファーの姿があった。
どこで手に入れたのかはわからないがきちんと制服も着ている。
「篝 ルシファと申します。」
「篝 グラウトと申します。以後お見知り置きを」
キャー!だの。イケメン!だの可愛い!だの。
やはりルシファーが言っていたように悪魔は人間にとってはルックスがいいらしい。自分で言うのもなんだがかく言う俺はいい方でも悪い方でもない、普通だと思う。それより
「篝?篝って絢斗と何か関係があるの?」
「ええ、篝くんとは遠い親戚です。外国にいたので篝くんとはあまり交流はありませんが」
「外国人なんだぁ…」
俺は二人の元へ近づいていった。
「お前ら、ちょっといいか?」
そう言って二人を外へ連れ出した。
「なんでここにいる。」
「それはお主と同じように人として生きると。」
「確かに聞いた。だがここまでする必要が…」
「あるんですよ。絢斗様。学校で何かあった時。誰があなたを止めるのですか?」
「監視というわけか…」
「人聞きの悪い言い方じゃが、まあそういうことじゃ。」
まあ確かにそうだ。もしものことがあればこいつらがいないと困るのは確かだ。日中家にはいないわけだし、これで当然なのだろう。
「わかった…でもあまり騒ぎは起こさないでくれよ」
「うむ、わかっておる。」
「心得ておりますよ。篝さん」
「おーい。お前らそろそろ教室戻ってこーい。授業始めるぞ。」
「あ、すみません。」
俺と二人は教室に戻り、授業を受ける。二人がいることを除けばいつも通りの日常。こんな日常がずっと続けばいいのに。
〜♪
終業の音楽が鳴る。
「絢斗。悪魔じゃ。悪魔の気配がする。」
「ええ、確かに。この近くにいますね。」
そういうわけにはいかなかった。やはり平和な日常を取り戻すためには、この問題を解決するしかなさそうだ。
「それじゃ、行きますか。」
こうしてまた、俺の新しい日常が始まる。