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登校初日

 僕たちは、今学園の門を潜ろうとしている。右隣には春菜お嬢様がいる。だが逆側にはきっと同級生になるのだろう、生徒たちがすれ違っていく。正直楽観視していた。今まで僕のメイド姿を見たことがあるのは僕の本当の姿を知っている人だけだ、お屋敷の皆は大丈夫だよと言っていたが、これだけの人数がいるのだ。気付く人がいるのではないかと僕の背中の冷や汗は止まらない。それでもさっきの決意が効いたのか表情は一切崩さずに、春菜様にふさわしいメイドでいることはできたと思う。


「あら案外普通にしているわね。もう少し動揺するかと思ったわ」


「私は春菜様のメイドですから。これくらいの人で動揺するわけには行きません。」


春菜様はきっと僕の緊張を崩そうとしてくれたのだろう。正直決意はしていてもつらいものが合ったからありがたい。

 そして春菜様と会話を交わしながら入学式が行われる会場に向けて歩いていると、前を歩いている人がいきなり振り向き目があった。その人は僕を指さしてから近づいてきた。


『もしかしてバレた!』


僕の顔は彼女の歩が進むに連れ加速度的に青くなっていく。だが彼女は僕の隣で止まった。


「久しぶりだね! 春菜。いやーこの学園来るなんて全然知らなかったよ」


「久しぶりね夏樹(なつき)さん。私たちのクラスの名簿は先に届いたはずですけれど、見ていないのですか?」


「あぁーなんか届いてたね。でもまあ面倒くさいから放置してた。どうせ入学すればわかるしね! それにこういう出会っていうのもいいものだよ!!」


 僕は、座り込んでしまいそうなほどあんどしてしまったがここで座り込むのは怪しんでくださいと言っているようなものだ。それにしても春菜様の友人だったのか。確かに前日に私の友人も入学すると言っていたな。春菜様の友人だからお嬢様なんだろうけれど、どちらかと言うとスポーツ少女といったほうがあっているのではないかというほどの活発さと社交性を感じるな。そんなことを考えていると。


「夏樹様いきなり先に行かないでください。ご当主様も夏樹様にもう少し落ち着いて欲しいといつも言っているのは知っていますよね」


「ゴメンゴメン、わかってるよ。この学校入れられたのだって周りのお嬢様を見て自分の態度を直してほしいからでしょ。知ってる知ってる!」


「わかっているなら少しは治す努力をしてください」


 後ろでわかったよーこれからやるよーなどという会話が聞こえる。それに対してもうやれややれというような会話をする2人は雇用主とメイドと言うよりは姉と妹のようだった。僕は昨日の会話を思い出し、隣の春菜様を見るが、すごく冷たい目をしながら鼻で笑われた。……少しくらいは乗ってくれてもいいじゃないか。2人で目を合わせていることに気付いたのか夏樹様はこちらに向きを変えた


「そうだそうだメイドの紹介をしていなかったな。香月(かづき)は家のメイドでまあ私の姉みたいなものだ。これから3年間一緒に通うことになるだろうからよろしく頼む」


「香月です。これから3年間夏樹様の学園でのお手伝いをさせてもらいます。それとメイドの身ながら痴がましいですが、これから3年間夏樹様のことをよろしくお願いします」


「おい! それじゃあ私がダメな子みたいじゃないか!!」


 その後も違うのですか? などと会話をしながら2人でじゃれあっていた。彼女たちはやはり、姉と妹みたいだ。その関係は僕もやっぱり憧れる。もう一度春菜様を見てみるが今度は顔も合わせてくれなかった。……悲しい。


「そろそろ私たちの紹介もいいでしょうか?」


「ん? おおごめんごめん! そっちの紹介がまだだったな。」


そう言った夏樹様に続いて香月さんも頭を下げて謝ってきた。


「こちらは、紅葉さんです。貴方がたみたいに姉代わりのような関係は一切ないのだけれど、それでも頼りになるので、いつも助かっていますわ」


『そこまで姉や兄は嫌なのかなあ』


「紅葉です。これから3年間春菜様の学園でのお手伝いをさせてもらいます。それと私もメイドの身ながら痴がましいですが、これから3年間春菜様のことをよろしくお願いします」


 そう言うと春菜様は僕のお尻を見えないようにつねってきた。なので僕はニッコリと微笑がえしてあげた。


「ん? 春菜どうした何かいつもと雰囲気が違わないか?」


そんな春菜様をおかしく思ったのか夏樹様がその変化を指摘してきた。


「そうですか? いつもと変わらないと思いますが……?」


春菜様はすぐに手を僕のおしりから離し、何事もないかのように振る舞っていた。


「そうか? パーティーなどで会うよりすごく楽しそうに見えたんだがな? いや! そりゃあ楽しいよな! なんたって入学式だ。これからの生活を思って楽しくならないほうがどうかしてる! こうしちゃいられない早く入学式の会場に行くぞ!!」


 夏樹様たちが行ってしまったので僕たちも夏樹様を追いかけ入学式の会場に向かった。なつき様に追いつくまでに春菜様がぼそっと僕に向かってつぶやいた。


「後で、お仕置きだから」


軽めでお願いします……





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