最後の確認
「じゃあ行くわよ」
彼女の部屋で最終確認を行った僕たちは、ついに登校の時間を迎え家をでることにした。家からそんなにも離れておらず徒歩でも行ける距離ではあるが、今日は車で行くことになっていた。これも友人ができれば変わるのかもしれない。いやできる友人も車での送迎だろうし結局徒歩での通学は3年間ないのかな?
「考えるような顔をしてどうしたのかしら? 心配なのは分かるけれどそんな顔をしていればもっと怪しいわわよ。貴方はばかみたいに笑っていればいいのよ」
少し考えすぎていたみたいだ。春菜様も言動こそばかにするようだが、心配してくれているらしくいつもよりは覇気がない。これからの3年間の始まりをこんな感情出迎えるのは良くない。
「違うよ。確かに緊張してるけど、何時もの服の春菜様も可愛いけど、今日の制服の春菜様もかわいいなって思ってたんだよ」
取り敢えず僕は大丈夫だよと言うことと彼女の制服姿をほめてみることにした。実際に制服を着た春菜様はとても可愛い。特に何時もの豪華な私服しか見ていない僕からしたらこのような、学生が普通着るような制服を着た春菜様は新鮮で、いつもの春菜様じゃないように感じる。
「そっそうまあ当たり前ね。でもまあありがたく受けておくわ」
僕の言葉に対して少し驚いたようで顔が赤くなっているが、機嫌はさっきより良くなったようだ。そういえば彼女を直接的に褒めることは今まであまりして来なかったかもしれない。これだけ喜んでくれるならもっとしても良いかもしれない。
「よっ日本一! 世界一可愛いよ!!」
「なにバカにしてるの?」
一気に視線が厳しくなってしまった……なぜだ。
「ほら馬鹿なことしてないでまだ余裕で間に合うとはいえ、そろそろ本当に行くわよ。それとメイド姿かわいいわよ紅葉ちゃん」
彼女は何時もの人を馬鹿にした笑みを浮かべてそう返してきた。だがそうだこれから僕は紅葉になるんだ。気持ちを入れ替えて春菜様のメイドにならなくてはいけない。少しでも疑問を抱かれたらそこからバレる可能性もあるんだ。そうしたら後は奈落への1本道だ。楽しむことに変わりはない。それでも今一度気を引き締めよう。この3年をお嬢様と過ごすためにも。
「ありがとうございます。では改めて春菜お嬢様これから3年間よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いするわね」
その雰囲気を察したのか、彼女も馬鹿にした笑みではなくほほ笑みを浮かべかてくれた。
そうして僕たちはドアを開け輝かしい3年間の1歩目を踏み出した。