前日打ち合わせ
「じゃあ本題入るわね」
「あれ、僕を怒るのが本題なんじゃないの?」
その僕の質問に対し、はっと鼻で笑いながら馬鹿にしたような態度で僕に
「そんなわけないじゃない。そんなくだらないことで貴方を呼ぶほど私はヒマじゃないのよ」
いや呼ぶよね。結構頻繁に僕を馬鹿にしたりくだらない事をするために僕を呼ぶよね。とは思ったもののそれを口に出すとまた怒られそうなので、黙っていることにした。
「なに? なにか言いたいことあるのかしら。まあ言いたいことはだいたいわかるし良いわ。それより本題よ。まあ明日のことね。準備はまあここに来るまでの歩き方とか身体の動かし方から大丈夫そうね。じゃあ後は名前と明日の予定ね」
そういえば名前を聞いていなかった。確かに秋人では男だと名前からバレてしまうだろう。そのためにも偽名を作る必要があるのだろう。と言っても今から決めたのでは遅いんじゃないか? もう書類は提出したんだし。
「まあ思っているとおりよ。こちらで名前は勝手に決めさせてもらったわ。梅宮紅葉とこれから3年間は名乗ってちょうだい」
梅宮紅葉か、僕の名前と近いし良い名前だ。さっき決めたんだ僕はこの3年間梅宮紅葉として楽しく過ごしてみせる。
「文句はないみたいね。じゃあ紅葉さんこれから3年間よろしくね」
「よろしくお願いします。良い学園生活を遅れるように頑張りましょう」
「そうね。家では軽い言葉遣いでいいけど、学園ではその言葉遣いでよろしくね。あまり仲良くしすぎてると舐められてしまうでしょうし。それじゃあ次の話だけど、明日は入学式だけだからそんなに時間はかからないわ。それでも、貴方が大勢の前に出る初めての機会なんだし注意するに越したことはないわ。というわけで明日は起きたらすぐにメイドの格好をして気持ちを入れ替えておきなさい」
それは春菜様の趣味じゃないの?
「それと交友関係なんだけど、名簿を見たところ私の知人も同じクラスに入学するみたいだから、誰とも交友せずに3年間過ごすことは100%できないわ。あの子たちは社交性が高い子だからきっと貴方にも話しかけてくるでしょう。その時に話せる話題やとっさの時に男の子にならないように心構えをしておきなさい。返事は?」
「わかったよ。春菜様とその友人の仲が悪くならないためにも頑張るね」
僕の返事に満足したのか、彼女はひとしきりうなずいた後ベッドに横になった。そして目を擦ると布団にくるまりだした。
「少し眠くなっちゃったわ。1時間経ったら起こしてちょうだい。後妹に手を出すことはないだろうけど、手を出すのだったら覚悟を持って手を出してね」
そう言ってついに眠りだしてしまった。話している時から気付いてはいたが、彼女には薄っすらとくまが合った。きっと彼女も緊張していてこの頃はあまり眠れていないのだろう。
自分の生活にそれに僕のこともある。バレた時の話を一切していないがもしバレてしまったら、それは大変なことだ。いや大変ではすまないだろう。僕だけじゃなくて家にも迷惑がかかる。
僕は確実に学校に来れなくなるし家で雇うことは無理だろう。しかもそれで済んだら最高といえるくらいだ。実際はこの紅家も追求され評判を落とすだろう。そんな恐怖を持って彼女は僕と学園生活を送りたいと言ったんだ。そんな緊張を僕がいると少しでも薄められるというならば、この1時間位は傍にいようと僕は思った。