はじまりの日3
「いや、想像以上だわ」
僕の完成したメイド姿を見た、彼女の第1声はチョット引いた声だった。確かに男が女装をしているんだ。小さいころのかわいい頃ならまだ知らず、いくら女性っぽいとはいえ、大人に近い体形の僕が女装をしていれば、違和感は大きいのだろう。きっと鏡を見せてもらえば、僕も同じ反応をするのだろう。それでも自分でしといてひどいのではないか。
「いや、わかってたことだよね。僕はもう大人に近い男性なんだよ。気持ち悪いのは当たり前じゃないか。でも、自分でしといてそれはひどくないかな」
それに対して、彼女はいやいやいや違う違うと、手を振りながら鏡を持ってきた。
「いや逆よ逆。完成まで見てほしくないから鏡は避けて見ないでって言ってたけれども、もう見てもいいわよ。ほら、どこからどう見ても女性でしょ。いや女性より女性らしいって言えるわよ。」
鏡を見るとそこには美少女が写っていた。いつもはセミショートくらいの髪をウィッグでロングにし、化粧を行った僕は、どこからどう見ても女性だった。肩幅が狭いと言ってもやはり少しは広いがそれもごまかせる程度には美少女だった。そしてなぜだか涙が止まらなかった。
「ねっ美少女でしょ。でも想像以上だわ。少し美少女過ぎて引いてしまったもの。あら泣いているの? 新たな道を見つけたうれしさからかしら」
僕が泣いているのを見つけニヤニヤからかってきた彼女を見て泣き止んだ僕も、不本意ではあるが、これならばよほどのことがなければ、それこそ着替えを見られたりすることがなければ、ばれないだろうと確信することができた……それがいいことなのかは分からないが。それは彼女も同じようで。
「これならば、着替えさえ服の下に大きな傷が合って見られたくないんです。とでも言ってトイレで着替えればなんとかなりそうね。」
「そうですね。正直微妙な気持ちですが、これは良かったんだと捉えます」
そこで僕をバカにする種を思い出したかのように、彼女はいきなりニンマリと顔を変化させた。
「そういえばさっき秋人君、メイドですか? って聞いてたわよね。でもその前に男は入れないとも言っていたわ。ということは、あなた最初聞くまではスラブ女学院の生徒となって私と一緒の立場で、隣りに座って授業を受ける気だったのよね。」
僕は、その質問の意図が読めずにただ普通に返事を返すしかできなかった。
「うん、そうだけど。最初はメイドのことは知らなかったし、普通に考えたら、隣りに座って普通に学友として過ごしてってことだと思うんじゃない?」
その返答に、とてもうれしそうな顔をしながら、高笑いを上げた。
「バカね、それは流石に無理よ。入学するには身分証もいるし、確認もされるわ。そうなれば書類の段階で落とされるわ。万が一通ったとしても身体検査でアウトね。それに比べてメイドなら家ごとの信用問題になるわ」
「ということは、メイドはちゃんと調査されないの?」
「そうよ。どちらかと言うとメイドは持ち物なの。持ち物検査はあるかもしれないけど、それも家からくる書類を見るくらいで、しっかり検査はしないわ。それ以上を調べるというのなら、家を信用していないとなって、それこそ関係が悪くなるわ。それは学校側も避けたいのよ。わかったかしらオバカさん」
僕の鼻に指をつきつけ、少し振りながら勝ち誇ったようにニヤニヤしている表情を見て、少しイラっと来ながらも、僕は以外に考えているのだなと少し感心した。
そして少したち満足したのか、彼女は席を立った。
「今日のところはこのくらいにしましょうか。まだ話さなきゃならない内容もあるけれども時間はまだありますからね。取り敢えず庭でお茶でもしましょうか。紅茶とクッキーよろしくね」
そう言い残すと、彼女は庭に1人でいってしまった。その後姿に、僕はこれから3年間の苦労が見えた気がした。




