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居眠り夏樹様

 夏樹様も頑張っていたのだ。1限目の授業が始まった直後は、気合を入れて授業に望んでいた。だが、授業が半分をすぎる頃になると、目の虹彩が減っていき、どんどんとどこを見ているかわからなくなっていった。そして、ついに授業終了5分前になり。


「zzzzz……」


隣で香月さんも仕方ないな。と言う笑みを浮かべている。きっといつもに比べてとても頑張ったのだろう。夏樹様に比べて、こちらの春菜様は、一切眠そうな様子も見せず授業を受けている。授業の補佐の役割もメイドの役割だが、このぶんだと、僕の補佐は必要なさそうだ。良かった。


 そんなことを考えているうちに授業は終わった。春菜様と、冬歌様は喜々として、夏樹様の元へ向かって行くので、僕も春菜様の後ろをついていった。


「どうだ? 授業は楽しかったか? 私が見た感じではとても楽しそうに見えたぞ。特に最後の5分間がな」


 冬歌様は、昨日も思ったが、人をおちょくるのが好きらしい。いつか喧嘩にならないか心配だな。現に夏樹様は、ムッとした顔をしている。


「おい! 香月に紅葉、どれだけ頑張っても、授業は面白くなかったぞ」


えぇ……、怒ってるのは僕たちに向けてですか。


「まだ、1時間目です。今日1日頑張ればと言ったではないですか。まだ楽しみが見えてきていないだけで、今日1日頑張れば見えるはずです」


おぉ!すごい。もうやる気を無くし始めている夏樹様に向けて、自分が怒られているにもかかわらず、やる気を出させるような、チョイスができるとは、見習いたいな。


「むぅ……。確かに、まだ1限しか終わってないな。まだ、結果を出すには早過ぎるか。わかった。今日1日は頑張ってみるぞ」


「はい、頑張ってください」


でも今日1日が終わった後はどうやって言い訳するのかな? いや、もちろん夏樹様が面白いと感じてくれる可能性もあるけどね。


「まあ、夏樹が眠くなってしまうのもわからなくはない。1回目の授業だというのに、とても進行が速く難しかったからな」


 確かに、授業は1回目とは思えないスピードで進んでいった。これは、さっきも言ったようにメイドが、授業補佐として、帰った後にわからなかったことを、わかるように教えることを前提で、教えているからだ。だから実は、夏樹様のように、眠っている人も、少なくなかった。


「私も付いて行くのがとても大変でした……。紅葉さんと香月さんはどうでしたか?」


皐月さんが言うように大変なのは、メイドだ。主人は別に、授業をこの1回で理解しなくてもいいが、メイドはしっかりとこの授業で内容を理解しないといけない。僕も、勉強は苦手ではなかったから良かったが、苦手だったらとても苦労しただろう。


「私は、学園に入学する前に、一度予習を行っているので、そんなには苦ではなかったですね」


「そうですね。私も、勉強は苦手ではないので、そんなに苦ではなかったですね」


 僕たち2人の返事に、皐月さんは、涙目で恨みごとを呟いている。そんな皐月さんに冬歌様は、やれやれと頭を撫でた。……皐月さんが、学校では浮かべてはいけないような恍惚とした表情を浮かべている。こんな調子でいつも大丈夫なのかな?


「私も、勉強は得意な方だ。別に授業だけで理解できるから、皐月が頑張る必要はない。」


「そうですね。紅葉も別に頑張る必要はありませんよ。私も苦手ではありませんから」


「そう言われると、少し諦めてしまいそうです……」


 確かに、皐月さんの言うように、主人が勉強ができるのならば、僕たちが頑張る必要はない。僕たちは、あくまで、主人の持ち物なので、テストもないからだ。だから、極論を言ってしまえば、主人が勉強ができるのならば、僕たちは、一切勉強ができなくても卒業することができる。


「確かに、主人が勉強ができると少し怠けてしまいそうになりますね」


「はい、私は特に勉強が得意ということはないですから……機械と電磁波系なら得意なのですが」


 それは、盗聴や盗撮のためではないですよね? 少し冬歌様のプレイベートが気になったが、僕は何も突っ込まないことにした。皐月さんのことは内緒なのだ。


「私は、苦手だからな! 香月頼んだぞ!」


 僕たちが、主人2人が勉強ができるので、サボってしまいそうだと話しているのに、少し焦ったのか、夏樹様は、私はできない宣言をしてきた。


「わかっていますよ。でもなるべく理解できるように頑張りましょうね」


「そうだな! 取り敢えず今日1日は、楽しいと思えるように頑張って見るぞ!」


 夏樹様と香月さんは、昨日は姉妹だなと思ったが、どちらかと言うと親子に近いんじゃないかと思えてきた……


「そろそろ2限目が始まりそうだな。では私たちは、席に戻る。2限目も期待しているからな」


「では春菜様、僕たちも席に戻りましょうか」


「そうですね。私たちも期待していますよ」


「うむ期待していてくれ!」


 夏樹様は、気合順分のようだ。もしかしたら今度こそやってくれるかもしれない。




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「zzzzz……」


 うん。やっぱり、気合でどうにかなる問題ではないよね。

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