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怪力お嬢様

 兄妹みたいだと伝えたはずなのに、なぜか結果は冬歌様の恋人認定。春菜様は僕を睨んでるし、夏樹様はおお! と盛り上がってるしどうしてこうなってしまったのか……でも夏樹様もなぜその答えになったのかわかってませんよね。


「あの私は兄妹みたいだと伝えたつもりなんですけど……」


「紅葉が兄妹みたいだと伝えたいのはわかった。強調し過ぎなくらいに伝わった」


 なら兄妹のような親愛なんだと認めてくれてもいいのに。


「ではなぜ、その恋人同士だと?」


 冬歌様は、春菜様の方を振り向き、ニヤリとした笑みを浮かべながらクククと笑っている。だが春菜様も負けたものではない。僕にだけわかるように、睨み殺すような目を向けながらも、冬歌様たちにニコニコした笑みを浮かべ、感情を一切表さないで対処している。それに対し冬歌様は更に声を上げハーッハッハッハ!と笑い出した。どう見ても悪役です。おやめください。


「良いぞ説明してやろう。まず第1だ。小さい頃から春菜が手を引いて一緒に遊んでいたという点だな。私もパーティーなどで、小さい頃から顔を合わしていたが、たしかに昔は、もう少しわんぱくだったとはいえ、そこまでアグレッシブな春菜を見たことがない。これは小さい頃からとても気を許していたということだ。」


 確かに何時も手を引かれていたのは、僕だった。けどそれは、一番身近にいたからじゃないかな。パーティーじゃ流石にそこまで、わんぱくには振る舞えないだろうし。でも、気を許しているっていうのはホントだろう……と信じたいな。


「次に、第2だ。その秋人という執事と一日の内いる時間が50%を超えているという点だな。確かに、昔からの執事だ。一緒にいる時間は増えるだろう。それこそ、その執事にしかできないことも多いだろうしな。お茶会ようの紅茶を入れるのなんてその筆頭だろう……まあ2人で御茶会を行っているという点は、取り敢えずおいておこう」


 え? 二人で御茶会を行うことって、もしかして変なことなの? 確かに他のメイドや執事と御茶会をしてるのは、見たことなかったけど、当たり前すぎて考えたことがなかったな。帰ったら少しみんなに聞いてみよう。


「だが一日の内半分というのは多すぎる。多くて25%だ。その調子じゃ、本当にその執事がいるとまずいことを行うとき以外は、ずっと一緒にいるのではないか?」


 確かに、春菜様がそれこそ、男の僕が一緒にいるとまずい事を行っている時と料理をつくる時以外は、一緒にいる気がする。でもこれも春菜様のお世話係が一番の仕事だし、しょうが無いところがあると思う。ご当主様も、なるべく春菜様のそばに居てやってくれって言ってたし。


「そして最後だ。2人で春菜の部屋で、お話しているという点だ」


 ん? もしかしてそれは、女の子の部屋でうんぬんの話かな? でもそれこそお嬢様と執事なら普通じゃないのかな?


「あの、執事とお嬢様という関係なら、それは普通なのではないでしょうか?」


 その僕の質問に冬歌様は、やれやれと首を振り、手を両側に広げて答えた。


「よく考えろ。一日の内ほぼ全てを2人でいるのに、部屋で話し合う必要はないだろう? あってもそんなに多くは必要ないはずだそれこそ普通に話すなら部屋以外でもできる。まあ部屋でないとできないこともあるが、話しあうだけならどこでもできるはずだ……ん?」


そこで冬歌様は首をひねり何かを考え始めた。


「そういえなぜ、紅葉は部屋でやっていることが話し合いだとわかる? それこそ勉強を教えてもらっていたりと色々あるはずじゃないか」


 えええ!?まさかの飛び火。春菜様に注意してくださいと思っておいて、一番不注意だったのは僕のようだ。春菜様もバカを見る目で僕を見てくるし……今攻められてるのは貴方だってこと忘れてません? まあ僕のせいなんですけどね。ゴメンナサイ。

 

 ふぅ落ち着け。精神を落ち着けるんだ僕。大丈夫だ。これくらい乗りきれなければ、これから3年間なんてやっていけない。


「その、それは、実はメイドの間でも一時、春菜様の部屋で二人で何をしているのか話題になりまして……その時に秋人さんが、普通に話をしているだけだよと。ただ部屋で話したい気分だったみたいだよと言っておりまして……」


 その僕の話に納得がいったのか、冬歌様はなるほどとうなずいた……良かった。


「だが、それではどんな話をしていたかの証明にはならないな。それにもし付き合っていたとして、それ以上のことをしていたとしても、本当のことを言うはずがないだろう。それこそお嬢様と執事だ。普通は隠すだろうな」


それ以上とは一体……いやわかるけどね。絶対にないなと思うだけで。だが僕が微妙な表情をしていることも気にせず、冬歌様は話を続けた。


「まず部屋の中で話すということは、外では話しにくいことということだ。そして今までの推理から……2人は部屋で甘い会話を繰り広げているに違いない!」


夏樹様がおお! と声を上げた。さっきから夏木様はそれしか言っていない。うん今まで話がよくわかってなかったんだね。一番興味津々だったはずなのにな。


「甘い会話と言うと好きだぞ! とかもう離さないとかか!」


 うんもしも。


『やっぱりバカね』


『もう本当にしょうがないわね』


『ほら私を労いなさい。』


このうちの1つでも甘い会話ならば、僕たちはしょっちゅう甘い会話を交わしていることになるね。そんな僕の考えはつゆ知らず夏樹様と冬歌様は盛り上がっていた。


「もしかしたらそれだけでは、収まらないかもしれないな。それこそ膝の上に乗り、後ろから抱きしめられながら、耳元で囁かれているのかもしれない」


「それはいいな! いやー私も好きな人ができたらやってほしいな!」


 冬歌様はそうされたいのかな? 皐月さん今度やってみたらどうですか。きっと冷たい目で見られるだけで終わるでしょうけど。

 その後もきっとこうだと言う甘々シュチュエーション話で2人は盛り上がっていた。

 そして僕とは違う、張本人のもう1人は、


「…………」


 すっごいイライラしてる!見たこともないほどイライラしてる。手に持ったコップが割れそうです抑えてください。流石にここまでイライラしていると僕でも感情が読み切れないけど、それでもイライラしていることだけは伝わってくる。

 それは僕だけではなく、流石にここまでイライラしていると2人にも伝わったのか2人が露骨にヤバイという顔をした。


「どっどうした春菜。もしかして最近、彼とうまく言っていないのか。この頃あまり相手にしてくれないとかか。もしくは学校で彼と会えないのが寂しいのか。メイドだったら彼を連れてきたのにとでも思っているのか?」


 駄目です春菜様。コップにヒビが入っています。抑えてください! なんでヤバイという顔をしながらも煽ってしまうんですか。そこはもう話を止めましょうよ! それと執事だとしてもメイドとして学校に連れて来ています。


「いえいえ。まず秋人くんとはなにもないと私は言い続けてますよね。そ・れ・を、秋人くんととうまくいってない? とか、秋人くんが私にかまってくれないだとか? 私の思いに答えてくれないだとか? そんなことはぜんっぜんないですから。秋人くんとはた・だ・のし・つ・じとお嬢様という関係ですから」


 春菜様それ以上はいけません!それ以上続けると、今まで築き上げた春菜様の清楚で可憐なイメージが、りんごを握力で潰せる怪力お嬢様になってしまいます。それでなくても、もう夏樹様と冬歌様は完全に引いてしまってます。

 それでもこの雰囲気をなんとかしようと、ためらいながらも冬歌様が口を開いたのだが。


「いや思いに答えてくれないとは言ってないんだが……そのなんていうか、すまなかったな」


 春菜様のコップは遂にガシャンと音を立て割れてしまった。だがそれだけですむはずもなく、中に入っていた紅茶は春菜様とそして僕にかかってしまった……あれまずくない?

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