シスコンで小説家志望の兄が妹に語る バレンタインデー編
むかーし昔。ある王国のお姫様が病気に掛かりました。王様は国中の名医を呼び集めましたが、お姫様の病気は治りませんでした。
そこで王様は国民達に向かってこう言いました。
「我が娘を治療した者は、この娘と結婚する権利を与えよう。」
そのお姫様は大変美しいことで有名だったので、世の男共は張り切って治療法探しに取りかかりました。
しかし、やはり素人連中がどれだけ頑張っても、お姫様の病気は治りません。
そんな時、小さな行商人の息子は、行商に行った村で南方の国「アテスカ」で、万能薬と言われている物があることを知りました。そこで少年は、
「父さん。僕はお姫様をお救いするために南方へ万能薬を取りに行って参ります。」
そう言って一人旅にでました。
そして少年は艱難辛苦の果てについに万能薬を手に入れました。
王様のもとにそれを持って行き、早速お姫様に飲ませると、見事にお姫様の病気が治ったのです。
お姫様は、自らの為に万能薬を取ってきた少年に一目惚れし、少年と二人で幸せに暮らしましたとさ。
「ーーという話があってね。今で言うところの二月十四日が万能薬を飲ませた日で、実はこのときに飲ませたのがチョコレートだと言われているんだ。」
「へえ。じゃあ、チョコレートで病気が治ったの?」
「そうだよ。昔チョコレートは万能薬だと言われていたんだ。」
「なるほど。それでバレンタイ ンデーにはチョコレートを渡すんだね。でもなんでバレンタインデーって言うの?」
「……それはこの少年の名前がバレンタといってね。バレンタとお姫様がゴールインした日だから、略して『バレンタインデー』というんだよ。」
「さすがお兄ちゃん! 物知りだね。」
「ああ。お兄ちゃんは何でも知ってるんだ。」
「あれ? でもこのお話だと男の子が女の子にチョコをあげる日になっちゃうよ? バレンタインデーは女の子が男の子にチョコをあげる日なのに。」