第6話 選択と決意
神様は僕が泣き止むまで静かに待ってくれていた。
「ありがとうございます神様、これで安心して逝くことが出来ます」
ひとしきり泣いた僕は神様に感謝の気持ちを伝えた。
神様は少し間を置いてから話始める。
「今のお主には聞きにくい事なのじゃが……今ある選択を二つ決めかねておっての」
「僕に関係あることですか?」
そう答えた僕の顔を神様は静かに、何処か安心した表情で聞いてきた。
「そうじゃ……お主が死んだのはこちらの手違いと言ったが、今お主が死んでしまった事で運命が空白な者が存在するのじゃがお主はどうしたい?」
その問いに僕は考えることなく答えていた。
「そうですね……多分〈はなちゃん〉は正義感の強い子ですから間接的にでも自分のせいで僕が死んでしまった事に悩んでしまうと思います。〈ゆう〉も多分それは同じだと思うんです。出来る事なら二人には僕の分まで幸せになって貰いたい」
その答えを聞いて神様は満足げに微笑んだ。
「お主ならそう言うと思っておったよ。これは今だから話せる事なのじゃが、〈はな〉はお主との事でやるべき事を、それこそ使命感のように必死でやり終えた後、抜け殻のようになってしまう時期があるんじゃよ。その時に支えるのが同じ思いを共有していた〈ゆう〉なのじゃが……運命が定められていない二人は長い年月を掛けてお互いにどれだけ想い合っても結ばれる事はなかったんじゃ……お主が願ってくれた事であの二人は幸せになることが出来る」
神様はそう言うと懐から黒い端末を取り出し操作を始めた。
それは地球で最近普及し始めた、某有名メーカーの天才が開発した〇フォーンに良く似ていた。
「神様それは?」
「良いじゃろう。これは最近開発されたカミホと言う機械じゃよ。これを使えば紙で見るより何倍も早いんじゃ。紙の時代はもう終わりじゃ‼ じゃが周りの連中はわしが使うのは反対じゃと言って取り上げてしまったんじゃ。そこで保管されておる場所を探して強引に借りてきたのじゃよ」
それは窃盗では…と思ってが神様が楽しそうに使っていたからその発言を飲み込んだ。
「もう紙の書類など古いのじゃ。それなのにあやつらは(ぶつぶつ)…よし‼ これで二人は大丈夫じゃよ」
神様がカミホ? の操作を終えて一仕事終えたような笑顔を見せてくる。
「あと一つ、こちらの方が本題になるのじゃがお主は死ぬ予定では無かったから、天界に行っても居場所が無いんじゃよ」
この話を聞いて僕は衝撃を受けた‼ だって安心して成仏しようと思っていたのだから‼‼。
「そこでお主には死んでしまったお詫びも兼て新しい人生を与えようと思うのじゃが受け取ってはくれんかの?」
神様はそう言うと最初に見た見ているだけでこちらが安心する笑顔を向けてきた。
少し考えて僕は答えを出した。
「はい……新しい命を受け取ろうと思います。受け取るに辺り僕はまた一から人生をスタートするのですか?」
僕は浮かんできた疑問を神様に聞くことにした。
「そうじゃ、お主はまた一から人生を歩むことになる。ただ今回はこちらの手違いから始まったことじゃからのお主の生前の記憶を持ったまま転生と言う形をとるがの。それとこれは決まりで一度死んだ者は次も同じ世界に蘇ることが出来ないのじゃ」
いまいち話に付いていけない僕は神様に話を進めるように促した。
「じゃからお主は違う世界で産声を上げることになる。今行ける世界の中でお主に最も適した世界は剣と魔法が存在して魔物を仲間に出来る世界かの。その世界ではステータスとスキルがある、お主達の世界で言うファンタジー小説のような世界じゃな。おぉ心配するでないお主にはわしから向こうで不便しないようにいくつかのスキルを与えるからの」
そう神様は矢継ぎ早にノリノリで説明してくる。
僕は完全に話に取り残されてしまったのでもう神様に全部任せる事にする。
「はい、その辺の事は全て神様に任せますのでお願いします」
「良し任せておくのじゃ」
神様は胸を叩いて請け負うのだった。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
3/1 ご指摘を受けまして、〈はなちゃん〉と〈ユウ〉についての選択の内容を一部変更しました。