ニート探偵の誕生 1
もう二ヶ月もたつ。
桜庭 美希は声にならない声を発しながら机に突っ伏していた。
美希は、二ヶ月前にこの鯏浜警察所強行犯係に配属されたばかりだ。
刑事ドラマに憧れて警察官になった彼女としては強行犯係というのは、「配属されたい部署第一位」のはずだが、この鯏浜市は何の変哲もない町である、だから凶悪事件など殆ど起きていない。
「ああ〜暇だ〜不可能犯罪おきないかな〜そしてその事件の謎を解いて崖で推理したいよ〜。「犯人は貴方だっ!」とか「真実はいつも一つ!」とかいいたいな〜。」
「おーい、願望大暴露祭してること申し訳ないんだけど仕事だ、行くぞ。」
「ひえぇぇぇ!生野警部!いつからそこにいたんですかぁ!。」
「馬鹿やろう!朝からいるよ!」
「どんだけ影薄いんですかっ!もっと存在感だしてくださいっ!」
「何で逆ギレしてんだよ!訳わかんねえこと言ってんじゃねえよ!」
生野警部は美希の上司であり自称
「鯏浜のコロンボ」らしい。なんでも、関わった数少ない事件を全て影で見守り特になにもしなかった実績をもつ迷警部である。
「それにしてもやけに騒がしいな、なんかあったのか?」
「ああ、なんか走り屋の大きいグループが鯏浜峠に来ていて今夜バトルがあるから一斉検挙しようとしてるみたいですよ。」
鯏浜市には峠とバイパスがあり、走り屋のグループがしばしば来る。
「へぇ、白バイ時代の血がうずくな・・・。」
「えっ、警部って元白バイ隊員だったんですか!?」
「ああ、まあちょっと怪我して白バイには乗れなくなったんだがな。」
「なんか意外ですね、今となっては頭が砂漠化している残念な中年オヤジですもんね。」
「俺の気にしているところをがっつり言うな!って、そんな哀れむような目でこっちを見るんじゃない!」
「ってゆうか、なんか仕事があるんじゃないんですか?」
「あっ、そうだそうだやっとお前さんの待ち望んでいた凶悪事件とやらが起きたぞ。」
「えっ、本当ですか!で、どんな事件なんですか?」
「隣町で三人を襲った奴がどうも鯏浜にきたらしい、目撃者がいるんだ。多分まだ近くにいるはずだ。」
「はやくそれを言って下さいよ。さぁ、はやく行きましょう。」
「例の走り屋の件でパトカーは出払っている。悪いが、自分の車でいってくれ俺は後で行く。」
「了解です!」
これは、手柄をたてる大チャンスだ!よし、頑張ろう!