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NEXT MISSION  作者: 翔香
8/12

8 捜索

“支配下”という言葉を聞いて背筋が凍った。横目で斗真を窺う。斗真も混乱しているのか、目を泳がせている。


「悪戯じゃないの?さっさと消しなさいよ」


「悪戯じゃないぞ」


 慶子の手が止まった。


「我々はお前たちのいる2年B組を監視している。そして、お前たちが帰れない原因をつくったのがこいつだ」


 そこに、もう1人の顔が隠れている人が、手首、口を縛られている斉藤先生を引きずり、画面の前に立たせた。


 慶子は身を乗り出した。


「この高校には2年B組しか生徒は残っていない。先生が戻ってくるのを待っている間に、みんな足早に帰って行った。教師もこいつ以外は追い出した」


 みんな、驚きのあまり微動だにしなかった。

ちなみに、高校の全ての出入り口には爆弾を仕掛けている。もし、誰かがここから出ようと、外へ出る通路を開けた途端、この高校はドカーンだ」


「お前は、今どこにいる」


 斗真の挑発的な言葉に、真央は一瞬慄いた。


「おお、気の強い男だね。名前は」


 斗真は少し間を空け、名前を告げた。


「斗真涼か。面白そうな人物だな」


「質問に答えろ」


 真央はチラリと斗真を窺った。斗真の目は、これまでに見たことのない鋭い目をしていた。


「我々は職員室にいる」


 その時、教室のドアの傍で、何かが倒れる気配がした。見ると、斉木侑奈さいきゆうなだった。

 真央はすぐに駆け寄り、声を掛けた。すると、うっすら目を開け、囁くような声でこう言った。


「真央ちゃん、できるだけ私が見えないようにして。警察に連絡するから」


 それを聞き、戸惑った。そんなこと出来るのだろうか。監視カメラが何処にあるのかも分からない。もし、見つかったら―――


「早く」


 躊躇したが、言う通りに行動した。


「何をやっている」


 この声を聞いて、心臓が飛び出しそうになった。


「いや、あの呼吸を確認しようと思って」


「ちゃんと呼吸しているように見えるぞ」


 ヤバイ。これはヤバいぞ。完全に見抜かれてるじゃないの。


「嘘をついたのかな」


 真央はぶんぶん首を振った。


「明らかに嘘じゃないか。こっちにはすべてお見通しですよ」


 どうすればいいんだろう。侑奈のせいにするのも悪い気がするし。かといって言い訳も思いつかない。


 すると、侑奈が真央の腕を振り払い、立ち上がった。


「この子、ここから逃げようとして私に命令してきたんです。倒れたふりしろって」


「え・・・」


 待って、理解できない。私がいつそんなこと言った?いや、言ってない。私、ハメられたの?


「そうか。そりゃ悪い女だな。どう処刑しようか」


 処刑という言葉を聞いて、目の前が真っ暗になった。言い訳したいのに、どう言えばいいのか分からない。


「蓮井はそんな捻くれた女じゃない」


 斗真だ。


「おお、斗真君。何か意見があるのか」


 斗真は静かに、トゲのある声で言った。


「蓮井はそんなこと言う女じゃない。蓮井は、馬鹿で、優しくて、純粋な女だ。そんな考えはこいつには思い浮かばない。斉木、何か言ったらどうなんだ」


 斗真は鋭い目で侑奈を睨んだ。侑奈が慄く。


「わ、私は別に悪気があって―――」


「言い訳すんな。謝れ」


 侑奈は反射で斗真に頭を下げた。


「俺にじゃないだろ」


 その時、真央の肩に手が乗った。そして、ゆっくり真央を立たせた。見ると、斗真だった。


「蓮井に謝れ」


 真央は肩に乗っている手を外した。だが、斗真は真央の手を強く握った。


「いいよ。私は大丈夫だから」


「お前が許しても、俺が許せない」


 斗真は侑奈を睨んだまま言った。


「ごめんなさい。勝手なこと言って」


 真央は首を振った。別に怒っているわけではない。人間、誰でも窮地に立つと人のせいにして、自分を守るものだ。


「もう、いちいち面倒くさいな。仲間割れはよしてくれよ。これからゲームが始まるのだから」


 その言葉で、全員が顔をテレビに向けた。


「これから、君たちの生き残りをかけたゲームを始める。準備が整うまで、静かに待機するように」

 

 そこで、テレビ画面が真っ暗になった。途端に、周囲がざわついた。


「真央、大丈夫?」


 瞳子がすぐに声を掛けてくれた。


「うん。それより、本当にこんなことするのかな」


「あんた、本当バカね」


 真央は口を尖らせた。


「バカじゃないって」


「バカよ。こんな騒ぎ起こしたんだから、実行するに決まってるでしょ。それぐらい分かりなさいよ」


「みんな!ちょっと聞いて!」


 クラスみんなの視線が、慶子に集まった。


「絶対に先生を助けるのよ。そのためには、犯人のいう事に従う事。それが一番安全だと思うわ」


「今ならまだ間に合うかもしれない」


 そこで、1人の男子生徒が教室を飛び出して行った。


「おい、待て!」


 すぐに斗真が追いかけて行った。


「私の話、聞いてなかったのかしら」


 慶子は呆れて、机の上に座り足を組んだ。


 間もなく、斗真が逃げ出した男子を連れて戻ってきた。男子は涙を流していた。


「気の弱い男ね」


 慶子が吐き捨てるように言った。


「だって、怖いし」


「怖いのは皆同じだよ」


 斗真は優しく言い、その男子を椅子に座らせた。


 その時、再びテレビ画面に人影が映った。


「準備か整った。全員音楽室に行け。抜けようと考えてるやつ、そんなこと考えても無駄だからな。校内には至る所に監視カメラが設置されている。逃げようとしたら、その場で即死だ」


 それだけ告げられ、切れてしまった。


「移動するわよ」


 慶子は1番に教室を出て行った。それから、続々と教室の中にいた生徒が出て行く。


 瞳子、飯田も出て行き、残ったのは真央、斗真、先ほど逃げ出した男子だけになった。


「荒木、行くぞ」


「いやだ。逃げてやる」


 斗真はため息を吐き、俯いた。


「お前1人が逃げると、クラスみんなの命が無くなる」


 荒木は斗真を見た。斗真が顔を上げた。鋭い目だった。


「お前が逃げ切ることは出来ない。ここから出た途端、爆発だ。犯人の指示に従っていた方が、生き抜く確率が高い」


 荒木は斗真の迫力に目を逸らした。


「どっちだ。俺たちと一緒に行くか。それとも、逃げるのか」


 数秒の間があり、荒木が突然立ち上がった。


「分かったよ。俺は逃げない」


 そう言って、教室を出て行った。


 残ったのは2人だけになった。


「何か、不安だね」


「そうだな」


 ふいに、斗真の手が真央の肩に置かれた。


「大丈夫だ。何かあったら、お前は俺が守る」


「・・・うん」


 斗真は真央の肩を2、3度叩き、一緒に教室を出た。












 音楽室に入ると、異様な雰囲気が漂っていた。


「あれ、荒木と一緒じゃないの?」


 瞳子が声を掛けてきた。


「え、来てないの?」


「うん」


 すぐさま斗真が音楽室を飛び出して行った。慌てて真央もついて行く。しばらくして、飯田が走ってきた。


「蓮井!」


 真央は足を止め、振り向いた。


「俺も探す。あいつ、嫌がってたから逃げようとしてるのかもしれない」


「でも、さっきは逃げないって言ってたよ」


「嘘なんかいくらでも吐ける」


 そう言って、飯田は走り出した。でも、真央の足は動かなかった。


 嘘をついたの?自分だけ助かろうと思ってるの?


 真央は思考を巡らせた。


 ここからは抜け出せない。爆発する。それなら―――


 嫌な予感が過った。自殺だ。


「荒木っ!」


 真央は叫んだあと、全速力で走った。












 飯田は4階から2階まで下り、全ての教室を回って行った。


「どこ行ったんだよ」


 飯田は舌打ちしながら教室を見渡し、確認する。


 2階にもいないことを確認し、北校舎で探していない場所は1階だけになった。


 階段を下り、1階の保健室に入る。


「荒木、いるんだったら返事しろ」


 飯田はベットの下や、業務机の下を確認する。


「・・・いねぇや」


 保健室を出ると、ばったり斗真に会った。


「お前も探してるのか」


 斗真は感情がこもっていない声で問うた。


「ああ」


 同じように飯田も返す。


「ってか、蓮井は?」


 斗真は辺りを見渡す。


「荒木の事探してる」


「1人でか?」


「そうだ」


 斗真は舌打ちした。


「何だよ」


 キレ気味で返すと、いきなり斗真が飯田の襟を掴んだ。


「1人で行動させると危ないだろ!そんぐらい分かれよ!」


 腹が立って、言い返す。


「お前だって蓮井置いて勝手に飛び出したろ!」


「蓮井が一緒に探してくれるなんて思ってなかったんだ!」


「あいつなら探すに決まってんだろ!あいつの性格考えろよ」


 斗真は言葉に詰まり、掴んでいた手を離した。


 その時、上の階から悲鳴が聞こえた。


「蓮井だ」


 斗真は反射で階段へと走って行った。


「マジかよ」


 飯田もその後を追った。

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