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NEXT MISSION  作者: 翔香
7/12

7 喧嘩

 翌朝、真央は再び雅紀に起こされた。もうこれが日課になってきている。


 洗面台に直行し、顔を洗い、寝癖を整えてからリビングへ入り朝食を摂る。いつもと同じように準備を済ませ、ソファーにもたれ掛った。


「あれ、今日はバス?」


 雅紀に問われ、真央は頷いた。


 バス到着まで5分となり、真央は鞄を持って家を出た。












 同じ高校の制服を着た高校生が群がっているバス停に着き、バスが来るのを待つ。この群れの中には友達もいなければ、同じクラスの子もいない。真央は1人孤独にバスが来るのを待つだけだ。


 バスが到着し、周りにいた高校生が一斉に乗り込んだ。真央も流されるままに乗り込んだ。それから、何気なく斗真の姿を探してみた。


―――いた


 斗真の隣が丁度空いていたので、さり気なく隣に腰かける。


 そこで、斗真の異変に気が付いた。苦しそうに唸っている。


「どうしたの、具合悪い?」


 斗真は頭を抱えて途切れ途切れに答えた。


「ちょっと、頭が・・・」


 戸惑った。こういう場面に遭遇したことが無い真央は、どうすればいいのか分からない。


「学校行けそう?降りたかったら言って」


 真央は頭に響かないように小さく言った。


 斗真は頷き、それから何も言わずに、頭を抱えたままだった。


 この調子だと、このまま学校に行く気だ。大丈夫なのだろうか・・・












 学校に着き、校門前でバスが停車した。真央は斗真の鞄を持ち、斗真の腕を自分の肩に回した。


「バカ。何してんだよ・・・」


「分かるでしょ。このまま斗真を教室に連れて行くの。あ、保健室がいい?」


「・・・教室がいい」


 真央が立ち上がった途端、斗真がふらついた。持ち前の筋力で何とか耐える。


 周りの視線を気にすることなく玄関に入り、自分の上履きと斗真の上履きを靴箱から取り出し、自分の上履き履いてから斗真の上履きを斗真の足元に置いた。


「ごめん・・・」


 今すぐにでも倒れそうな斗真を教室まで連れて行き、斗真を座らせた。


「大丈夫?ちゃんとご飯食べてる?」


 真央は斗真の顔を窺った。


「いや、そういうのじゃないんだ・・・何か、嫌な予感がして」


 自分でも途端に顔を歪ませたのが分かった。


「斗真、大丈夫なの?」


 瞳子が真央に話しかけた。


「いや・・・大丈夫じゃないかも。ねえ、昨日のニュース見た?」


「え、見たけど。昨日のってあれでしょ。脅迫状の」


「そう。あれ、この高校だったらどうしよう」


「いや、でもあれはいつも悪戯じゃない」


 瞳子は笑って真央の背中を軽く叩く。


「いや・・・本当に起こるかもしれない。この学校で」


 話を聞いていたらしい。斗真は声を発する。


「嘘でしょ」


「斗真が言うからね・・・」


 2人が黙り込んでいる間に、明るい声が混じった。


「おはよ!」


 飯田だ。


「あんたって奴は・・・」


 瞳子が頭を抱えた。


「どうしたんだ?みんなして黙り込んじゃって」


 そして、真央の隣に寄ってきた。


 真央の頭に、昨日の映画館で手が繋がれた記憶がよみがえる。


「昨日のニュースでやってた、脅迫状の事で斗真がこの学校に仕掛けてくるかもって言ってるのよ」


 瞳子が簡潔に説明する。


「本当かよ!まあ、斗真が言うんだったらほぼ確実だろうけど」


「何でそんなに陽気でいられるのよ。このガキ」


 瞳子が冷たく言い放つ。飯田はダメージを受けたのか、黙り込んだ。


「ほら、座れ」


 斉藤先生が教室に入ってきた。チャイムが鳴る前に入ってくることなど滅多にない。


 瞳子と飯田は素早く席に座った。


「昨日のニュースの事は知ってるな。脅迫状の」


 全員が僅かに頷く。


「それなんだが、この高校が標的になる確率が高いらしい。何処からの情報か俺は知らんが」


 教室内がざわつきだした。チラッと斗真を窺うと、痛みが治まったのか無表情で外を眺めていた。


「だが!」


 大声を上げ、皆を黙らせた。


「あくまで可能性の話だ。実際に起こるとは言っていない。いままで全部悪戯だったんだ。今回もそうだろう」


 途端にみんなが安堵の表情をする。


「ねえ、皆に知らせた方がいいんじゃない?斗真の意見」


 小さく斗真に訊くと、斗真は真央に視線を向けた。


「今言ったら皆を混乱させるだけだ。余計な口出しをしない方がいい」


 その答えにあまり満足できなかった。少しでも警戒心を持っていた方が行動が素早くできるのではないか。


 そう伝えると、斗真は腕を組み、また外に向いてしまった。


「言ったら、みんなが帰りたいって大騒ぎだ。ニュースで言ってたろ。都内の高校は登校中止にしないようにって。今俺たちが帰ったら、犯人を刺激する」


「正論だね・・・」


 呟き、俯いた。


 この高校に何が起こるのだろう。銃を乱射したりするのか・・・


 だめだ。悲惨な光景しか思いつかない。


「それと、みんなに忠告しておく。先生が戻って来るまで、1歩も教室から出るな。今日は移動が無かったから、トイレ以外は教室にこもってろ」


 生徒は各々に頷いた。


「じゃあ、授業頑張れよ。まあ、この調子だと集中出来ないだろうが」


 そう言って、足早に教室を出て行った。会議か何かあるのだろう。


 しばらく俯き、なにか別の方法が無いか考えていると、頭上から瞳子の声がした。


「ねえ、あんたはどうするの?」


 意味が分からなかったので、瞳子を見て首を傾げる。


「だから、あんたは帰るのって訊いてるの」


「は?」


 思わず声が裏返った。周りに視線を送ると、鞄を持って教室を出て行くのものが大多数を占めていた。


「ちょっと待ちなさいよ!」


 この声は、女子学級委員の相田慶子あいだきょうこだ。


「斉藤先生が教室から1歩も出るなって言ってたじゃない!あんたたち無視する気なの!?」


 慶子は先生に恋愛感情を持っている、という噂を聞いたことがある。


「うっせーな!こんな状況に立たされて、大人しくしていられっかよ!」


 ここで反論したのは、反抗期真っ盛りの大地智也だいちともやである。この男は、中学生のころは親になついていたようだが、高校に入学してからこの様である。


「そうだけど、先生の命令よ!従った方が身の為よ!」


 慶子は折れずに言い返す。


「俺は相田の意見に賛成だな」


 男子学級委員の赤田魁あかだかいだ。こいつは相田に恋愛感情を抱いている。


「人の勝手だろ!あいつのいう事なんか聞いてられっかよ」


 そうして背を向けて歩き出した。


「ちょっと待って!」


 躊躇したが、とりあえず引き留めてみることにした。


 大地は少々不機嫌そうな表情で振り返る。


「先生のいう事は正論じゃないかもしれない。でも、今外に出ても危険なのに変わりはないと思うよ」


 大地はすたすたと真央の目の前まで近づき、立ち止まった。


「一緒に帰るか?」


「・・・は?」


 意味が分からない。今日は何かと理解するのに時間がかかる。


 目を丸くしたまま突っ立っていると、腕を強く引かれた。そして、強引に外へ連れて行かれる。


「待てよ」


 斗真だ。何故か斗真の声を聞くと、安心してしまう。


「んだよ」


 斗真は大地の腹に蹴りを入れた。反動で大地の手が真央の腕から離された。足を崩した真央を斗真が支えた。


「こいつと一緒に居たいのなら、ここに残れ。だが、真央に手出ししたらどうなるか、分かってるな」


 大地はこういう外面だが、窮地に立たされると、何でも人の言いなりになってしまう。


「分かった。すまなかった」


 大地は斗真に懸命に頭を下げた。


「謝るのは俺じゃないだろ。蓮井に謝れ」


 大地は真央に向き直り、何度も頭を下げた。


「あ、もういいよ。そんなに謝ることないのに」


「お前は甘いんだよ」


 斗真は呆れて、真央の体から離れ席に座った。


 ここで、また斗真に魅かれた女子が、次々と戻ってきた。いつの間にか全員が戻ってきていた。斗真の力は凄いなと実感する。


 皆が落ち着いたところで、授業開始のチャイムが鳴った。












 今日のすべての授業が終わり、一息ついたところで大地が大声を上げた。


「何も無かったじゃねーか!帰ろうぜー」


 そう言ってゲラゲラ笑う。そこで噛みついたのが慶子だ。


「何言ってるの!先生帰って来るまでここに残っていなさい!」


 命令口調に腹が立ったのか、大地がまた反論する。


「じゃあお前だけ残っておけよ。俺らは帰るから」


「あたしはここに残ろっかな」


 浜岡美代だ。今日もいつもと変わらず笑顔を振り撒いていた。恐らく、家に帰っても悲しみが増すだけだ。それなら、友達といた方が楽しい。そういう思いがこの言葉には混ざっている。


「美代はご両親が亡くなったから家に帰りたくないのよ。そうよね?」


 慶子は美代に尋ねた。美代は苦笑して頷く。


「あいつ、馬鹿なのか」


 隣にいた斗真が真央に囁く。


「頭は良いんだけどね。多分、人の心を読めない人なのかも」


「そうなのか・・・」


 若干斗真が引いたのが雰囲気で分かった。


 その時、教室にあった液晶テレビが勝手についた。そして、大音量で砂嵐が流れる。


「何!?気味悪いわ。赤田、止めて」


 赤田は慶子の命令に従う。だが、怪訝な表情でこちらを向いた。


「消せない」


「はぁ?」


 大地への苛立ちが残っているのか、慶子はイライラしながらテレビへ向かう。


「あれ、ホントね。消えないわ。壊れちゃったのかしら」


 テレビをいじっている2人を見ていると、ふいに瞳子が話しかけて来た。


「ねえ、何か不気味じゃない?悪霊でも憑りついたのかしら」


「んなわけないでしょう」


 真央は笑って返す。だが、何かおかしい事だけは、はっきりわかる。


「ってか、先生何してんだよ。俺たちの事忘れて帰っちまったんじゃないか?」


 飯田の次にお調子者である大石祐樹おおいしゆうきだ。


「帰ったって事は無いだろ。忘れてる可能性はあるけどな!」


 飯田は大石に続く。


「何よ、これ」


 突然慶子が緊迫した声を出した。みんなの視線が一気にテレビに集中する。真央も目を向けると、テレビ画面に顔に黒い布を被った人が映った。そして、こう発した。


「我々は笈川高校を支配下とする」

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