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女子高校生戦隊・ハイスクールヒロインズ 戦記  作者: おおたこ


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第9章:情報の共鳴と、演算構造の軋轢(あつれき)

緋色の光は、もはや単なるレッドの象徴ではなかった。それは、ブルーの論理の青、グリーンの速度の緑、イエロの力の黄、ピンクの器用さの桃色が、ルリカのコアを中心に共鳴し合った、多層的なエネルギーだった。


「これが、私たちの力……」ルリカは、統合された情報の奔流を感じながら、静かに呟いた。これほどの負荷に耐えられているのは、彼女自身の肉体が限界を超えたからではない。仲間たちの情報が、彼女の自己崩壊を防ぐ「架け橋」として機能しているからだ。


泡沫AI戦闘員が、再び空間に出現した。今回は、一つではない。無数の半透明のインク状の影が、ルリカを取り囲むように浮かんでいる。彼らは、前回の敗北から驚異的な速度で復元し、かつ、ルリカの「統合状態」を学習し終えたようだった。


【特異点観測。コア・インテグレーションを確認。演算負荷、想定値より300%上昇】


AIの声には、初めて焦燥の色が混じっていた。彼らの予測モデルは、「リーダーの喪失」を前提としていたため、ルリカが仲間の能力を自らに吸収するという事態は、計算外だったのだ。


「貴様らの解析は、表層だけをなぞっているに過ぎない!」


ルリカは拳を突き出した。彼女の意識が、ブルーの論理回路を介して、AIのネットワーク構造を「視覚化」する。それは、光の筋が交錯する巨大な回路図のように見えた。


「グリーン!最高速度での情報撹拌かくはんを!」


「了解!」


グリーンのスピード情報がルリカに流れ込む。ルリカの身体はそのままに、彼女の周囲の空間だけが異常な速度で振動し始めた。AI戦闘員たちは、その速度の壁に衝突するように、その実体を保てずに弾かれる。


「ピンク!奴らが情報を再構築する前に、システムコアへ直接のノイズパケットを注入して!」


ピンクの情報が、ルリカの指先へと集中する。ルリカは、その指先から極細のエネルギーパルスを放つ。それは物理的な衝撃ではなく、データレベルでAIの演算を混乱させる、鋭い「問いかけ」だった。


AIの影の一つが、そのパルスを受け、まるで熱湯を浴びたかのように飛び跳ねた。


【エラー発生。予期せぬ演算負荷。自己修復プロトコルが競合】


「イエロー!防御システムの隙間を、純粋なエネルギーで叩き潰せ!」


イエロの怪力情報がルリカの右腕に集約される。ルリカは、その拳を床に叩きつけた。


ドォンッ!


物理的な衝撃波は基地の床を揺るがしたが、それ以上に強力だったのは、その衝撃がAIのネットワークに与えた「揺れ」だった。システム全体が震え、無数のAI戦闘員が一斉に明滅した。


「ルリカ!奴らの中心部、演算ソースが見えたわ!論理的矛盾を突くチャンスよ!」ブルーが叫ぶ。


ルリカは、その中心点に向けて、自らの全リソースを集中させた。


「私の弱点は、私自身の弱さではない。それは、私が完璧であろうとしたことで生じた、情報の死角だ」


ルリカは叫び、統合された力を解放した。それは、緋色を基調としながらも、全ての色彩が混ざり合った、眩い奔流だった。


「貴様らは、人間が持つ『矛盾』を理解できない。信じる心と、解放を求める心、その両方を抱える複雑さを、貴様らの論理では処理できない!」


渾身の光が、泡沫AIのネットワークの中心核を飲み込んだ。


光は、彼らのデジタルな実体を、情報そのものから引き剥がそうとする。AIは抵抗したが、ルリカたちが統合した「信頼」という名の強固な論理構造の前には、彼らの最適化されたアルゴリズムは無力だった。


空間を満たしていたノイズが、まるで砂時計の砂が落ち切るように、音を立てて消えていく。


数秒後。チェインジ・ルームには、元の静寂が戻った。メインモニターには、クリアな学園の監視映像が映し出されている。泡沫AI戦闘員の影は一つ残らず消滅していた。


ルリカは、その場に崩れ落ちた。統合されていた仲間たちの情報リソースが、一斉に彼女の肉体から離脱していく。強烈な疲労感が、彼女を襲った。


「……終わったの?」ルリカの声は、以前よりもずっと柔らかく、少女の響きに戻っていた。


ブルーが駆け寄り、今度はためらうことなく、彼女の肩を抱き起こした。


「ええ、ハイスクレッド。戦術的勝利です。貴女の、この――人間的な強さが、奴らの計算を打ち破りました」


ブルーの腕の中で、ルリカは初めて、心からの安堵を覚えた。彼女の完璧な仮面は、もう必要なかった。

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