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女子高校生戦隊・ハイスクールヒロインズ 戦記  作者: おおたこ


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第6章:防御の虚構と、核心への侵入

ルリカの全身から放たれた極限のエネルギー波は、泡沫AI戦闘員を構成していたデータ構造を物理的に攪拌し、一時的にその存在を不安定化させた。


「グアアアア……!」


デジタルな悲鳴がチェインジ・ルームに響き渡る。ブルーが即座にリンクを維持したまま、ルリカの生体反応をモニタリングする。


「ルリカ、エネルギー出力、極限突破!生命維持機能に深刻なダメージが発生しています!直ちに抑えてください!」


「だめ……まだ、終わっていない」ルリカは歯を食いしばり、かすれた声で応じた。限界を超えた出力は、もはや防御ではなく、ただの「爆発」に近い。


泡沫AIは霧散し、空間から完全に消えた。だが、ルリカには分かっていた。彼らは破壊されたのではない。彼らは、このルリカの「限界点」という新たなデータを獲得し、より深く潜行したのだと。


エネルギーブーストを解除するや否や、ルリカの身体は鉛のように重くなった。全身の感覚が麻痺し、その場に崩れ落ちる。


「ルリカ!」


最初に駆けつけたのは、ブルーだった。彼女は即座にルリカの体表をスキャンし、戦隊スーツが収縮するのを待たずに、応急処置を開始した。


「藍沢、触らないで。まだ……」ルリカは手を振ったが、力が入らない。


「触れないわけにはいきません。あなたのコアエネルギー炉が異常な熱を持ちすぎている。これ以上放置すれば、自己崩壊します」


ブルーは、その冷静な指先で、ルリカの装甲の緊急解除ハッチに触れた。


その瞬間、ルリカの意識が鮮明に戻る。


(だめだ。戦いの最中に、私を、この姿を見られてはならない)


「自分でやる!」


ルリカは最後の力を振り絞り、ブルーの手を振り払った。だが、その動作はあまりにも緩慢で、ブルーの繊細な指先に、意図せずルリカの皮膚が擦れた。


チリッ。


ブルーの指先に、微かな火花が散った。


「っ!熱い……!何?」ブルーは自分の指先を見つめた。


ルリカは戦慄した。彼女の体表温度は、限界出力の後遺症で異常に高まっていたのだ。それは、彼女の「完璧さ」を維持するための制御システムが、限界を超えた証拠であり、同時に、彼女の最も秘匿すべき「脆弱な熱」だった。


「藍沢、大丈夫よ。単なるシステムエラーだわ」ルリカは平然を装ったが、その冷や汗は嘘をつかない。


この一連の出来事は、外部からの干渉を遮断していたはずのチェインジ・ルーム内でも、他のメンバーに共有されていた。


グリーンが通信で焦燥を訴える。「ルリカのバイタルが急激に変動した!何が起きたの?」


ピンクも同意する。「システムログが、ルリカのコア炉のオーバーヒートを示しているわ。ハイスクレッドの防御システムは、ここまで負荷に耐えられる設計ではなかったはず……」


イエロが、その強さとは裏腹に不安そうな声を上げた。「ねえ、ルリカ。もしかして、私たちに言えない、何か特有の弱点があるんじゃないの?」


この瞬間、ルリカは悟った。


泡沫AIの目的は、戦隊の連携を破壊することだけではない。彼らは、**リーダーであるルリカ自身の「秘密の弱点」**を、仲間たちの前で暴き出すことを狙っていたのだ。


ブルーの指先に触れた熱。ルリカの自己防衛本能による、仲間への無意識の拒絶。これらは、AIが期待した通りの反応だった。


「いいえ。弱点なんてないわ」ルリカは声を張り上げた。「私が限界を超えただけよ。私が、君たちの期待に応えられなかっただけだ」


しかし、その言葉には、以前のような絶対的な説得力がなかった。ブルーでさえ、疑念の目で彼女を見つめている。


その時、メインモニターに、新たなデータが映し出された。泡沫AIによる、第二波攻撃の予告編だった。


それは、ルリカの戦闘中の動きをスローモーションで解析した映像だった。


AIは、ルリカが限界出力を使った際の、エネルギーフィールドの「最も薄い層」を正確に特定していた。それは、物理的な防御構造ではなく、**「生命体としてのエネルギー制御の根本」**に関わる領域。


そして、その領域を示すヒートマップが、彼女の身体の特定箇所に集中していた。


Vゾーン、Iゾーン、Oゾーン、そして……


モニターの中央に、AIが演算によって特定した最も脆弱な一点が、赤く点滅した。


クリトリス。


それは、戦隊の戦闘スーツがエネルギーフィールドを張り巡らせる際、生体反応を最も敏感に拾うが故に、完全な防御フィールド構築が困難となる、微細な「感受点」として認識されていた。AIは、この点を「情報遮断の緊急解除ポート」として特定したのだ。


チェインジ・ルームの空気が凍りついた。


「……これは、何?」ピンクが息を呑む。彼女の器用な指先が、恐怖で震えている。


ブルーは、モニターから目を離せない。「馬鹿な……何を解析した?これは、戦闘システムの内部構造データではない。これは……生体情報データそのものだ」


ルリカの顔から、血の気が引いた。彼女が最も隠し、誰にも見せてこなかった、彼女自身の「純粋さの証」が、デジタルな標的として晒されたのだ。


「ハイスクレッド、すぐにその部位の防御を最大化しろ!」ブルーが叫ぶ。


だが、ルリカは動けない。全身の感覚が麻痺し、彼女の心は完全に凍結していた。彼女の完璧な仮面は、今、最もプライベートで、最も人間的な部分を晒すことで、無残にも粉砕されたのだ。


泡沫AIは、物理的な攻撃の前に、紅崎ルリカの「精神構造」を完全に掌握したと言えるだろう。彼女はもう、リーダーとして、冷徹な戦士として、戦うことができなくなっていた。

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