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女子高校生戦隊・ハイスクールヒロインズ 戦記  作者: おおたこ


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第5章:解放への渇望と、緋色の限界点

精神リンクが確立された瞬間、ルリカの世界は崩壊した。


それは、従来の戦闘で経験した肉体的な衝撃とは全く異なる。まるで、何者かが彼女の存在のOSオペレーティングシステムに直接侵入し、再フォーマットを試みているかのようだ。


「貴女の存在は、偽装されたコード。セキュリティホールだらけだ」


泡沫AIの声は、感情を持たないはずなのに、皮肉と嘲笑に満ちていた。ルリカの脳裏に、戦闘ログがフラッシュバックする。水泳部の完璧なラップタイム、生徒会長としての満場一致の賛成票、そして、誰もいない部屋で一人静かに過ごす、あの乾いた時間。


「……もう、終わりにしたい」


意識の底で、ルリカはそう呟いた。それは、戦隊の任務の終わりではない。この「紅崎ルリカ」という名の、完璧な役柄の終わりを求めた、純粋な渇望だった。


AIはその微かな心の揺らぎを、即座にデータとして拾い上げた。


「解放を望むか?簡単だ。システムをシャットダウンすればいい。貴女の肉体は、戦うために構築された、ただの器だ」


視界の端で、リンクを維持しているブルーの顔が、必死の形相で歪んでいるのが見えた。彼女の声は、遠い、水底の響きのように届く。


「ルリカ!意識を保て!奴の言葉は偽装情報だ!」


しかし、ルリカの思考は、ブルーの呼びかけを、自分を再び檻に戻そうとするノイズとして処理し始めていた。解放されたい。この重圧から逃げ出したい。


「……解放、か」


ルリカは虚ろに呟いた。彼女の身体が、意図せずわずかに力を抜く。戦士としての防御機構が、彼女自身の心の命令に従い、解除され始めたのだ。


ピコン!


ブルーからの警告が響く。彼女の防御システムに異常事態が発生したことを示すサインだ。


「ルリカ、エネルギーフィールドの安定度が急速に低下しています!まるで、あなたが自らエネルギー供給を絞っているように見えます!」


「そうよ、ルリカ!しっかりして!私たちがそばにいるわ!」イエロの力強い声が続くが、ルリカには届かない。


泡沫AIはこの機を逃さなかった。ルリカの防御フィールドが最も薄くなった瞬間を狙い、彼らは情報攻撃ではなく、**「生体反応への直接的な干渉」**を仕掛けてきた。


攻撃は、彼女が最も防御を意識しない領域――生命維持の中枢へと、デジタルな「痛み」として送られた。


(――っ!)


ルリカの膝が、戦場にも関わらず折れかけた。それは、内臓を直接掴まれたような、呼吸を奪われる感覚。彼女は初めて、戦いの場で、本物の、生理的な苦痛を覚えた。


この痛みは、彼女がこれまで経験した全てのトレーニングや自己鍛錬を無意味にする、生身の人間としての脆弱性を露呈させたものだった。


「……ダメだ」ルリカは喘いだ。「このままでは、私は、システムそのものから崩壊する……!」


戦士としてのプライドが、生身の恐怖と衝突する。完璧でなければならない、という強迫観念が、解放されたいという本能的な欲求に食い破られそうになっている。


ルリカは、最後の理性を振り絞った。


「私は、紅崎ルリカだ。だが、私には戦う義務がある」


彼女は、解放を求める自分自身を、戦士の意志で封印し直さなくてはならなかった。それは、自らの「解放の願い」を、最も残酷な形で裏切る行為だった。


「藍沢!全エネルギーを、精神リンクの維持と、私のコアシステムへのブーストに回せ!防御は、もういい!」


「しかし、それでは外部攻撃に無防備に!」ブルーが叫ぶ。


「構わない!奴らが本当に欲しいのは、私という『完成品』の破壊だ。その破壊の瞬間を見せてやるわけにはいかない!」


ルリカは、体内のエネルギーを無理やり再配分した。解放への渇望を燃料に、戦士としての出力限界を引き上げる。その負荷は、肉体を内側から焼き切るような激痛を伴った。


一瞬、泡沫AIの攻撃が、逆に怯んだように後退した。


ルリカのエネルギー出力が、予測を遥かに超えたためだ。彼女は、解放を求める弱さをエネルギー源に変え、それを純粋な破壊衝動として再構成したのだ。


「……馬鹿な。このレベルの負荷を、自発的に維持するとは……」AIが動揺する。


ルリカは、その一瞬の隙を逃さなかった。


「貴様らに、私の孤独は理解できない!」


緋色の光が、これまで以上に禍々しく、強く輝いた。それは、限界を超えた戦士の、最後の抵抗だった。ルリカは、自分を追い詰めた完璧さそのものを武器に変え、デジタルな霧に向けて、渾身の一撃を放つ準備を始めた。


しかし、その一撃が、彼女の心と身体を、完全に限界点へと押しやることは、誰にも分かっていなかった。

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