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女子高校生戦隊・ハイスクールヒロインズ 戦記  作者: おおたこ


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第3章:緋色の檻と、色褪せぬ仲間たち

月織--広大な物語の世界を縦横無尽に駆け巡る、新進気鋭の物語紡ぎ手です。


ジャンルを問わず、読者の心に深く響く「希望」と「葛藤」、そして「成長」の物語を描き出すことを信条としています。特に、全年齢対象作品においては、子供たちの純粋な心にも、大人の複雑な感情にも寄り添い、ページをめくるたびに、新たな「光」を見出すような感動体験をお届けすることをお約束します。

すべての作品が、読む人の明日を照らす一筋の光となることを願って、今日も筆を執ります。

週末の夜。学園の地下深くに隠された、戦隊専用の秘密基地「チェインジ・ルーム」。壁一面のモニターが、都市の監視カメラ映像とデータログを映し出している。


「ハイスクレッド、お疲れ様です。昨日の理科準備室の件、情報統制は完璧でしたね」


最初に声をかけてきたのは、ハイスクブルー。本名は藍沢あいざわ こよみ。ルリカと並ぶ生徒会幹部であり、戦隊のサブリーダー。彼女の知性はルリカと並び称されるが、そのアプローチは論理的かつ感情を排したシミュレーションに特化している。


「ありがとう、藍沢。君のトラフィック遮断プロトコルは完璧だった。侵入経路は特定できたの?」ルリカは、ソファに深く身を沈めながら、平坦な声で応じた。


「ええ。痕跡は極めて薄い。デジタル・ゴースト、とでも呼びましょうか。物理的な接触を嫌い、あくまで情報レイヤーで干渉しようとしている。今回の攻撃は、防衛システムへの過負荷テスト。レベルとしては、まだチュートリアル段階でしょう」


ブルーの冷静な分析は、いつもの安心感を与える。しかし、ルリカにはその言葉が遠くに響いた。チュートリアル。自分は、この「霧」に対して、まだ防衛ラインを敷けていない。


続いて、活発な空気が流れ込んできた。


「ねえねえ、ルリカ!今日のランチ、私がゲットした限定スイーツの写真見てよ!ブルーがカロリー計算で渋ってたから、私とグリーンで強引に突破したんだから!」


ハイスクイエロ、黄瀬きせ 陽菜ひな。彼女は文字通り怪力で、戦隊内では突撃と物理破壊の要だ。屈託のない笑顔と、時折見せる野性的な強さが魅力。


「ふふ、陽菜の勢いにはいつも感心させられるわ。でも、カロリー計算は重要よ、イエロ」


優雅に立ち上がり近づいてきたのは、ハイスクピンク、桃井ももい しずく。手先の器用さはピカイチで、電子ロック解除や精密機器のハッキングも担当する。彼女の優雅な物腰は、ルリカが演じる「完璧な令嬢」のイメージに一番近いかもしれない。


「ハイスクグリーン、到着!遅れてごめん、中庭のフェンスでAIの残滓を探してたんだけど、今回は何も見つからなかったよ」


息を切らせて飛び込んできたのは、ハイスクグリーン、緑川みどりかわ あおい。彼女のスピードは音速域に近く、情報収集と奇襲戦術を得意とする。


四人のヒロインが集う。この空間だけが、ルリカにとっての「現実」だった。男性の介入が一切許されないこの戦隊は、少女たちの強い結束と、ルリカという絶対的なリーダーシップによって成り立っている。


「さて、本題に入りましょう」ルリカは一つ深呼吸し、レッドのオーラを僅かに漏らした。「昨夜の攻撃主は、学習を続けている。物理的な接触を避けるなら、我々は情報空間での対応を強化する必要があるわ」


ブルーが頷く。「その通り。私はサーバー群のセキュリティを二重化する。ピンク、君にはトラフィックの監視を依頼したい。特に、個人のSNSや、非公開のグループチャットへの干渉に注意して」


ピンクが指先で空中に仮想キーボードを叩きながら答える。「了解。もし奴らが個人の機密情報に触れようとしたら、即座にアラートを発するわ」


グリーンが身を乗り出す。「私とイエロは、学園周辺の不審な電波を探る。物理的に干渉できる場所なら、粉砕できる!」


「待って」ルリカの声が、僅かに強くなった。「物理的干渉は最終手段。奴らの目的は、我々のシステムを壊すことではなく、我々の信頼関係を破壊することかもしれない」


四人の視線が、ルリカに集中する。


「奴らは実体がない。ということは、弱点も物理的な場所ではない可能性が高い。彼らは、我々の『動作の癖』、私がこれまで見せてきた『完璧な対応』の裏にある、非効率な部分を探しているはずよ」


イエロが首を傾げる。「非効率な部分?ルリカ、それはどういうこと?先輩はいつも一番速くて、一番的確だよ?」


この瞬間、ルリカの胸に鋭い痛みが走った。陽菜の純粋な賞賛が、今の私には「監視の目を誤魔化すための演技」として認識されているように感じたのだ。


「……例えば、私自身のことよ」ルリカは自らを犠牲にする覚悟で口を開いた。「私は、生徒会長として、完璧さを求められすぎた。それは、戦場においても同じ。私は、**『弱点を見せないこと』**に最適化されすぎた。それは、藍沢や陽菜たちが、時折見せる脆さや、迷いを切り捨てることを意味する」


ブルーが静かに口を挟んだ。「ルリカ、それは違う。あなたの冷静さが、我々を何度も窮地から救ってきた。私たちはあなたを信頼している。弱さを見せないリーダーとして、ではない。紅崎ルリカという存在が、正しく導いてくれるから、私たちは迷いなく行動できる」


ブルーの言葉は真実だった。しかし、その信頼こそが、私を縛る鎖なのだ。もし私が人間的な弱さ、例えば、戦いへの疲労や、個人的な葛藤を見せたら、彼女たちはどうするだろう?


私は、あえて、一歩引いた態度を取ることにした。


「藍沢、それはあなたの論理的最適解よ。でも、相手は情報生命体。感情の揺らぎを誘発する戦術を取ってくる可能性が高い。私は、しばらくの間、皆との連携を『必要最低限の連絡のみ』に絞る。リーダーシップの分散を図る」


「え……でも、それでは情報が遅延する可能性が」ブルーが初めて、明確な異論を唱えた。


「遅延は承知の上よ。もし、奴らが私個人に焦点を絞ってきた場合、他のメンバーへの影響を最小限に抑えるため。これは、戦隊の生命線を守るための保険よ」


ピンクが憂いを帯びた目で私を見た。「ルリカ……無理しないで。私たちは、あなたが一人で背負うことを望んでないわ」


彼女たちの優しさが、ガラスのように冷たく、私の仮面を叩いた。私はその優しさを、今、受け止めることができなかった。受け入れることは、弱さを認めることに直結するからだ。


「心配はいらないわ。私はハイスクレッド。私は、あなたたちを失敗させない」


私はそう宣言し、チェインジ・ルームを後にした。


背後で、ブルーの微かな呟きが聞こえた気がした。「……彼女は、私たちに何を隠している?」


緋色の装甲の下で、ルリカという少女は、仲間からの信頼という名の檻の中で、ますます深く孤独になっていく。泡沫AIは、その孤立こそが、最も効率的な弱点だと、既に把握し始めているのかもしれない。

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