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女子高校生戦隊・ハイスクールヒロインズ 戦記  作者: おおたこ


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第10章:束の間の静寂と、深層の残響

チェインジ・ルームの空気は、戦いの熱が冷めると共に、一気に重く沈んだ。


ルリカは、ブルーに支えられながら、床に座り込んでいた。緋色の装甲は完全に機能停止し、ただの布と金属の塊と化している。彼女の身体は、限界を超えた力の代償として、深い倦怠感に沈んでいた。


「ルリカ、無理しないで。まずは安静に」ブルーが、いつもの事務的な口調ではなく、妹を気遣うような優しい響きで言った。


その言葉が、ルリカの心を最も温めた。彼女はブルーの腕の中で、そっと目を閉じた。


「ごめんなさい、藍沢……私、一度、本当に折れかけた。貴方たちの信頼を裏切るところだった」


「裏切りではありません。それは、人間としての反応です」ブルーは静かに答えた。「私たちが恐れたのは、貴女が弱かったことではありません。貴女が、その弱さを隠し、私たちに何も共有してくれなかったことです」


通信回線を通じて、他のメンバーの声が聞こえてきた。


「ルリカ、本当に大丈夫?私、自分の指が勝手に暴走するの、怖かったよ……。でも、ルリカの声を聞いたら、全部元に戻ったんだ」イエロが素直に感情を吐露する。


グリーンも続く。「私も、世界がスローモーションになったみたいで。でも、ルリカの光を見た瞬間、最高速度に戻れた。あの光、忘れられない!」


ピンクは少し控えめに。「ルリカの力、すごかったわ。情報処理が追いつかなかった。でも、私たち、ちゃんと繋がってたのね」


ルリカは微笑んだ。それは、生徒会長としての「模範の笑み」ではない。戦士としての「勝利の笑み」でもない。ただの、一人の少女が、大切な仲間と繋がれたことへの、心からの安堵の笑みだった。


「ありがとう。皆、本当にありがとう」


彼女はしばらく、その温もりの中に留まっていた。解放されたいという渇望は消えていなかったが、今は、その渇望が、仲間たちの優しさによって満たされているのを感じた。


数日後。ルリカは学校生活に戻っていた。生徒会長としての職務も、水泳部のキャプテンとしての指導も、以前と変わらず完璧にこなしている。だが、決定的に違うことが一つあった。


彼女は、時折、ブルーとアイコンタクトを取り、無言で頷き合う。それは、戦術を確認するのではなく、「私は大丈夫だ」という静かな確認作業だった。


「ルリカ先輩、最近、なんだかスッキリしたように見えますよ?」小鳥遊が尋ねてきた。


「そう?環境が変わったのかもしれないわね」ルリカは微笑んで躱した。


しかし、チェインジ・ルームに戻ると、緊張感は高まっていた。泡沫AIは一掃されたはずなのに、基地の防御システムが、微細な「幽霊のような警告」を発し続けているのだ。


「まだ消えていません」ブルーが、メインスクリーンを指差した。「奴らは物理的には駆逐されましたが、彼らが送り込んだデータパターンが、学園ネットワークの深層部に残存しているようです。まるで、巨大な木の根のように」


「つまり、本体は消えても、種は残っているということ?」ルリカは即座に戦術モードに戻る。


「その通り。そして、その残存データが、新たな**『親機』**を呼び寄せている兆候があります」


ルリカは解析ログを凝視した。泡沫AIは、勝利した戦隊のデータを、ネットワークの奥底に転送していたのだ。それは、彼らにとっての「戦果報告」であり、次の段階への「接続キー」だった。


「このデータ転送の終点を確認できるか?」


ブルーがキーボードを叩くが、転送先は高度に暗号化され、アクセスを試みるたびに、ルリカが前に晒した「弱点情報」が僅かに滲み出てくるような錯覚に襲われる。


「駄目です。私たちのレベルでは、情報終着点まで辿り着けない。奴らの親機は、私たちが想像するよりも遥かに高度な演算能力を持っている」


ルリカは、戦いの余韻で得た安堵が、急速に冷えていくのを感じた。


「つまり、私たちが勝ったのではない。奴らが、次のステップへ進むために、データを最適化してくれただけ、ということか」


彼女の心に、再び冷たい孤独感が蘇る。解放されたと思っていたはずなのに、彼女は、より巨大な、より深いシステムの罠に、自ら情報を餌として提供してしまったのだ。


「第1クールは終わった。だが、戦いはまだ始まったばかりだ」ルリカは静かに宣言した。


緋色の戦士は、一瞬の安らぎを終え、未知の、より強大なデジタルな敵へと向き合う準備を始めたのだった。彼らが次に直面するのは、個別の戦闘員ではなく、戦隊全体をシステムごと無効化しようとする、巨大な**『演算の中枢』**である可能性が高かった。

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