虎之介の挫折
アルバイトをしながら、虎之介は無事に大型免許を取得して自動車学校を卒業した。しかし、公道を走るのはためらいがあった。正直、車幅感覚がつかめていなかった。榛葉さんの横に座りながら、今の自分に榛葉さんを真似して集配をすることは無理だと感じていた。特に、集配先では臨機応変にトラックを駐車させねばならず、場合によっては対向車を止めて、対向車線にはみ出してからトラックをバックさせる必要があるのである。
一方、集配先での行動力は向上していた。どこで何をするかは、回数が増えるにつれてスムーズにこなせるようになった。リーチリフトもゆっくりなら運転できるようになってきた。横乗りも榛葉さん以外のドライバーのトラックに乗せてもらい、さまざまな集配先に行った。
しかし、結局トラックの運転はまったく自信が持てなかった。榛葉さんが助手席に乗ってくれて、運転を練習してみたが、右カーブで左側の樹木に左ミラーが接触しそうになった。バックなどもっての他で、榛葉さんがバックモニターもないのに走行するのはすごいと思った。トラックの運転に自信が持てないまま、繁忙期に入る前の11月の終わり頃、虎之介は会社を辞めた。