トラックから見た夕焼け
集荷のルートを終え、営業所に戻るべくトラックに乗り込んだ。7月の後半だったが、暑さは厳しかった。長年事務作業が多かった虎之介は、両手の筋肉が疲労でパンパンになっているのがわかった。ふとトラックの助手席から前方を見ると、松城市のシンボルともいえるホテルタワーが夕焼けに浮かんでいた。トラックの座席の高さからは、景色が普通自動車とは違って見えることに気づいた。
営業所に戻り、集荷した配達物を台車に乗せて、方面別に仕分けをした。さくらんぼ物流は山形が拠点であるため、東北地方の物流がメインである。営業所のホームには東北地方の地名を中心に日本中の主な地名が並んでいる。虎之介はこの歳になっても東北はもちろん日本中の地名や位置を理解していないことを、仕分けをしながら痛感した。例えば、「郡山」「一関」と書かれていても、それは東北地方のどこなのかわからなかった。
営業所のホームは、各方面別に大型トラックが入り、そのドライバーが集荷で集まった荷物をトラックに積み込むのだった。物流が日本の血液と例えられることに、虎之介は疲労と共に理解した。
アルバイト扱いの虎之介は、17時に業務終了となった。榛葉さんは、別の場所に集荷に出掛けて行った。榛葉さんは高齢なのに体力は半端なく、虎之介は内心舌を巻いた。