トラックの横乗り
翌朝、虎之介にとって新天地で仕事が始まった。8時からラジオ体操をドライバーのみんなで行った後、玉木所長が簡単な紹介を所員の皆さんにしてくれた。当面、先輩ドライバーに付いて仕事を手伝い、覚えるようにとのことだった。
虎之介は榛葉さんという先輩と行動することになった。もう定年が近いということだが、寡黙な人でまさに昭和の先輩だと思った。
トラックは4tで、各ドライバーに専用車があてられていた。榛葉さんがアルコールチェックを済ますと、虎之介は助手席に座った。玉木所長は横乗りと言っていた。横に乗って、いろんなことを覚えておいでと言われた。
既にトラックには配達する荷物が積まれていた。4tとはいえ、全幅2.5mは大型車10tトラックと同じである。ちなみに虎之介の現在保有する普通自動車免許で、車両総重量8t未満の中型トラックは運転できるのだが、大型1種免許取得中の感覚から言わしてもらえば、今4tトラックで公道に出れば、すぐ事故を起こすだろう。
榛葉さんの巧みなクラッチ操作を横目で見ながら、虎之介は果たして自分にもできるだろうかと思った。トラックは営業所を出て配達先に向った。最寄りの松城東インター下り線に入り、高速道路を使って西インターまで移動した。