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55話 ワイバーン


 ダンジョンの中で火を吐くとか、正気かコイツ!?


 俺は咄嗟に瑠王眼――水の魔眼を発動させ、ワイバーンの火の球と相殺させた。辺りに水蒸気が立ち込めるが、視界にはしっかりとワイバーンが写っている。


 なんで空中に浮かんでいるのかと思えるトロールを超えた巨体、エナメル質を思わせる強靭な鱗、腕と一体化した巨大な翼、そして、長く伸びる尾の先には毒針が仕込まれている。


 ギルド支部で聞いた通り、巨大で強力な魔獣である。



「メリー、ここは俺が引き受けたっ、お前はこの階層の発掘ポイントまで走れ! 資料によるなら、十階層にいる魔獣はコイツ1匹だけだ。もし、何かあったら大声を上げろっ、必ず駆け付ける」

「わかった。兄さん、ここは頼むで!」


 

 対峙する俺とワイバーンの間をメリーが駆け抜けていく。


 ワイバーンがメリーの方を向いて再び火の球を吐こうとしたが、俺は翠王眼――風の魔眼でもって『切り刻め!』と念じた。


 残念ながら対魔法防御力に優れるワイバーンを両断というわけにはいかなかったが、多少の傷をつけられたことにより、メリーに吐こうとしていた炎は霧散した。


 代わりにワイバーンのターゲットは完全に俺の方へ向いたようだ。正面に俺を見据え、その巨体に見合った巨大な咆哮を上げる。


 びりびりと振動を伴ったそれは、心臓の弱いモノであれば心停止に至ったかもしれない。だが……



「こちとら脅しには慣れているんだよっ! なにせ、前の世界じゃ債権者にさんざ脅されてたんだからな! 今更お前の咆哮ごときでビビるかってんだっ」



 そんな俺の挑発に対して、ワイバーンは空中から火の球を連続して吐く。俺はその火の球に水の魔眼でもって対抗する。


 ジュワッという音を立てて水蒸気が辺りに立ち込め、かなり視界が悪くなった。それによって俺を見失ったのか、ワイバーンは俺を探して右往左往している。


 ……これはチャンスだ。図らずとも水遁――霧隠れの術を発動した状態だ。


 俺は気配を消してワイバーンの巨体に近づくと、まずはその飛行能力を奪うべく、巨大な翼に向かってその辺に落ちていた拳大の石を投げつけた。


 すると、ばつん、という音を立てて翼に大きな穴が開いた。それによって、ワイバーンは空中から地上へ向けて落下する。どうやら片翼だけで飛ぶことはできないようである(当たり前ではあるが)。


 しかし、地に堕ちたとはいえ、その強大な牙であったり爪であったり、尻尾の毒針は健在であり、危険な存在であることに変わりはない。あと、勿論、火を吹く器官も健在であるからして迂闊に近づくことはできない。


 さてどうしたものかと悩んでいたら、ワイバーンはその長い尻尾を振り回しての尾撃を繰り出してきた。


 鞭と言うよりは巨大な丸太を叩きつけるような一撃で、それを受けたら一発で戦闘不能になるような強力な攻撃だ。しかも、その先端には毒針も付いている。


 俺はその横殴りの一撃を跳んで避けると、今一度、『風よ切り刻め!』と念じた。


 先ほどのような咄嗟の一撃ではない。威力を十分に発揮できるよう気迫を込めたその一撃は、振り回してきた尻尾を根元から切り裂いた。


 悲痛な叫びをあげるワイバーン。


 どうやらヤツの対魔法防御よりは、本気の魔眼の方が出力が上のようである。そうと分かればこちらのモノである。空も飛べなければ、吐き出す炎も中和できるとなればトロールとさほど変わらない。



 残る牙や爪を用いて襲い掛かって来るワイバーンに対し、俺は翠王眼を用いて切り刻んでいった。




---





「よう兄さん、片づいたようやな」

「まあ、なんとかな」

「いつもの赤眼と違うように見えるけど、どうしたんや?」

「ああ……魔法を使い過ぎると黒い目になるんだ。こうなると暫くは魔法が使えない。ワイバーンを斃すので力を使い切ってしまったんだ」



 俺の目の前でワイバーンの巨体がずぶずぶとダンジョンに喰われていく。強敵ではあったが、強力な魔法を使える俺の敵ではなかった。


 そして、それを言ってきたメリーの右掌には、拳大の青紫色の鉱物があった。



「それは……アダマンタイトか? 随分と大きなモノを発掘できたんだな」

「兄さんがワイバーン相手に時間を稼いでくれたおかげやで。これだけあれば、品評会に出す武具の他にも、つこうて余るわ。本当ならミスリルも手に入れたいところやったけど、『二兎追うモノは一兎も得ず』というしな。魔法が使えやんというんなら、またワイバーンが再出現リスポーンする前に、とっとと退散しようやないか。この階層、ワイバーン一匹しか出ない代わりに、倒すとすぐに再出現するっちゅうて聞いとる。現にホラ聞こえるやろ?」



 ダンジョンの奥からは新たなワイバーンと思われる咆哮が聞こえて来た。たしかに、魔法が使えない状態で再びワイバーンと事を構えるのは一苦労だ。俺だけならともかく、メリーを護衛しながら戦う事は難しいだろう。


 俺達は頷き合うと、とっと10階層を後にしたのであった。


評価等頂ければ幸いです。

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