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54話 ダンジョン探索5


 本日はダンジョン攻略三日目である。


 昨日の内に安全ポイントまでの道のりは把握し、また、発掘ポイントでの発掘も経験したので、今日は10階層の発掘ポイントまで行ってみるつもりだ。途中、強力な魔物や魔獣が出現するだろうが、俺の精霊眼で何とかなる事は昨日の探索で実証済みである。


 ダンジョンに潜るのは結構なストレスを感じるし、早いところミスリルやアダマンタイトを発掘して、おさらばしたいというのが正直な感想だ。



「ま、それはそうやね。陰気なダンジョンの中を魔物や魔獣にいつ遭遇するか分からない状況で探索するのも結構なストレスがかかるし、発掘自体も結構な労力がいる上、それら発掘した重い鉱石を持ち帰らなアカン。昨日は欲張りすぎたわ」



 昨日は6階層の発掘ポイントで銀鉱石と金鉱石を発掘・採取したが、面白いほど鉱石が出てきたために、つい、自分たちのキャパシティを超えた鉱石量を持ち帰ろうとして腰を痛めそうになった。あの分量の鉱石を背負っていたら戦闘にも支障が出ただろうし……そういう意味ではとても貴重な教訓になったと言えるだろう。


 自分の欲に溺れて溺死する――というのも、ダンジョン内では十分にあり得ることだと思い知った。


 

 そんな教訓を得た俺達は、アマルガムの町を出て再びダンジョンの中へ潜っていく。


 1階層から4階層までの道のりは特段、なにも障害となるモノはなく、早歩きで踏破した。安全ポイントのある5階層も、安全ポイントの位置を再確認しただけで、足早に踏破する。


 さて、俺達にとっての本番は第6階層からだ。


 此処からは強力な魔物であるトロールや、危険な魔獣の三角大鹿が出現するため気が全く抜けない。


 そろり、そろりと足音をなるべく立てないように、歩を進める。


 なにせダンジョンで一番怖いのが、曲がり角などの死角から急襲を受けることなのだ。いわゆる不意打ちは、いかにベテランの冒険者であっても即座に死を招く。


 それを受けないために、どれだけ相手に自身の情報を与えないかが肝要となるのだ。


 

「本当だったら、匂いも消したいところだけどな……森の中とかだったら草の汁とかを塗りたくればいいんだが、ダンジョンの中じゃ、何が匂い消しになるかわからないからなぁ……」

「流石に気にし過ぎとちゃうか? 魔獣や魔物が近づいてきたら足音で分かるし、風の吹かんダンジョンで匂いを気にしてもしゃーないで。それよか、兄さんは何時でもその魔眼?を使えるように目隠しを取っといた方がええと思うけど? 少なくともこのダンジョンの中にいる間はな」

「……それもそうか……しかし、俺の魔眼、メリーは不気味に思わないのか?」

「正直、最初は怖かったけど……ま、慣れたわ。いつまでも相棒の事を怖がっているのは不毛ちゅうもんよ」



 相棒……相棒か。


 不覚にもジンと来てしまった。なにせ元の世界ではずっと一人で厳しい仕事をやり続け、此方の世界に来ても、この眼のおかげで心から気を許せる仲間を得る事はなかった。


 白猫カーミラは仲間と言うよりは主だし、同じダンピールであってもラファとミカは仕事仲間という域を出ない。


 よって、命を預け合う相棒と言う存在に、思わず心が動いてしまったとしても仕方がないだろう。



「任せておけ、お前の身の安全は俺が絶対に保証するから」

「お、おぅ。よろしゅう頼むで」



 そんな感じで、第6階層以降の探索も順調に進む。


 アマルガムのギルド支部で購入した地図は本当に優秀で、次の階層までの階段の位置はもちろんのこと、危険と思われるポイントから、その階層に出て来る魔獣や魔物。そして発掘ポイントまでも記載されている。


 高いカネを払って購入したのだから当たり前ではあるかもだが、もっと杜撰なものだと思っていたからこれは買って大当たりと言う所だろう。


 そんなワケで、途中に出現するトロールや三角大鹿を翠王眼で倒しつつ、ダンジョンに深く潜っていく。


 6階層、7階層、8階層、9階層……と、ここまで来ると、今まで少しは見かけていた他の冒険者たちもいなくなり……ダンジョンの壁も無機質から半ば有機質へと変わって生き物じみて来た。


 やはりダンジョンは巨大生物なのだなと感心すると同時に、俺達はその体内にいるのだと思い知らされて緊張度が上がっていく。


 そしてそれは、後ろ隣りを歩くメリーも同じようだ。



「なんや、ダンジョンてけったいな場所なんやな。今日、ミスリルかアダマンタイトを採取したら、二度とこんなところには来うへんで」

「同感だ。奥に進めば進むほど、こんな不気味な場所になるとは思っていなかったよ。よくもまあ冒険者はこんなヤバ気な場所を職場にできているもんだ」



 そして更に進む事、10階層。


 もう殆ど巨大生物の胃の中に居るんじゃないかと思えるほど不気味な場所となったダンジョンで、そいつは現れた。



「……ワイバーン」



 その劣化竜種は、俺達を見つけるや大きく口を開け、巨大な火の球を吐き出した。


評価等頂ければ幸いです。

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