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53話 ダンジョン探索4


 さて、4階層の地図も問題なく正確であることが分かったので、5階層への階段を見つけ、降りていく。この分では購入した10階層までの地図については正確なのかもしれない。


 更に地図によれば、このダンジョンには罠がないとあるが、どうやらそれも本当らしい。


 とりあえず、今日のところは5階層にあるという安全ポイントまで到達したら折り返して帰るつもりである。


 いくら地図が正確であるというのが分かったとはいえ、ダンジョンの中では何が起こるか分からない。現に、先ほどは6階層以降でしか出ないとされているトロールと遭遇してしまったし、一歩一歩確実に進めて行かないと何に足を掬われるか分からない。



「しっかし、慎重すぎるのもあかんと思うよ。いざという時に萎縮してしもうて実力が発揮できんということもあるさかいな。ま、兄さんの魔法を使えば、どんな魔物や魔獣が襲って来てもイチコロやと思うけど」

「さて……トロールには魔法が通じたが、10階層に出るというワイバーンはどうかな? ヤツら、下位の竜種だけあって、魔法への耐性が高いと聞く。一発でとはいかないかもだ」

「たとえあかんでも牽制くらいには使えるやろ。そのあとは兄さんの怪力でとっちめれば大丈夫やと思うで。飛んどる魔物は大抵が骨格が柔く出来ているもんやし」

「そうだな。出来る事をとにかくやってみるよ」



 んー、いけないな。慣れないダンジョンということもあって、どうにも思考が後ろ向きになっている気がする。護衛対象であるメリーに余計な心配をさせてしまうとあっては、護衛失格だろう。


 言われた通り、もっと前向きに思考しなければな。




---




 5階層に降りて、暫く歩いていくと安全ポイントと思わしき場所が見えて来た。


 そこは一種の広場となっており、俺達と同じく貴重な鉱石を狙う冒険者が、まばらに座って休憩しているようだった。


 どうやら仮眠を取っている者もいるらしく、起きている仲間の側で鼾をかいている。


 食事を摂っている者もいるようだ。流石に火を使ってはいないようだが、スライスしたパンや肉を口に運んで咀嚼している。



「それにしても、ダンジョンの中で安全に過ごせる場所があるってのは不思議なもんだな」

「いわゆる飴と鞭の、飴の方やね。ダンジョンが生き物ちゅうんなら、エサであるヒトが入らんと枯れてしまう。ヒトをおびき寄せる分かりやすい飴がミスリルやアダマンタイトというんなら、それに準じた飴がこの休憩所っちゅうことや」

「……なるほどな、よくできているもんだ」



 さて、本日の目的である5階層の安全ポイントまでの道のりは把握した。本当であれば、今日はここから外へ向かって帰る予定であったが……。



「なあ、兄さん。せっかくやから6階層の発掘ポイントまで行ってみんか?」

「6階層の発掘ポイントまでか? 予定と違うが……」

「ええやん。例えトロールが出たとしても兄さんの魔法で一発やってのがわかったし、ここまで来て手ぶらで帰るのもしゃくやで。上手く行ったら銀鉱石の他にも金鉱石が見つかるかもしれん。ついでに言うと、思ったよりアマルガムの町の滞在費が掛ってしもうとって、路銀が心もとないっちゅーのもある」

「それは……」



 なんとなく、ミイラ取りがミイラになるという思考に思えたが、ここまで無事に来れたのだから、もう少し足を延ばしてみたいというメリーの気持ちも分かる気がした。



「……分かった。しかし、発掘用の道具は持って来ているのか?」

「ははん、そこは抜かりはないで」



 どうやら最初からこういう事態を予測していたらしく、メリーはピッケルの他にも発掘道具を俺に示して見せた。


 それであれば此方としても断る理由は無い。


 俺達は安全ポイントを抜けて6階層の発掘ポイントへ向けて歩き出した。




---




 6階層へは特に問題なく到達した。


 途中、オーガやトロールが出現したが、俺のパワーアップした翠王眼の前には敵ではなく、風に斬り刻まれた後は全てダンジョンに飲み込まれていった。


 また、ダンジョンで命を落としたヒトも居たらしく、その場に装備品だけ残っているような場合があった。恐らく、魔物や魔獣と戦って命を落とした後、ダンジョンに吸収されたのだろう。


 俺達は一瞬だけ黙祷を捧げた後、ギルド構成員の証であるタグのみを拾い上げて懐にしまった。これは後でアマルガムの町のギルド支部へ届け出るつもりだ。


 そんなハプニングも経験しつつも、俺達は発掘ポイントに到着する。



「ここが発掘ポイントか……」

「少々人がおるね。私らと同じ、一攫千金を狙う冒険者たちや」



 発掘ポイントは5階層の安全ポイントよりも広く、それなりの数の冒険者達がその岩壁に向かってツルハシやピッケルを打ち込んで鉱石を発掘しているようだった。



「さ、私らも負けておられへんで! あそこの空いてる場所で発掘といこやないか。兄さん、護衛はよろしゅうな」

「承知した。メリーの身は絶対に守るから、安心して発掘してくれ」

「……よろしゅう頼むわ」



 その日、俺達はそれなりの数の銀鉱石と金鉱石を採取し、満足顔でもって地上へ帰還したのだった。


評価等頂ければ幸いです。

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