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51話 ダンジョン探索3


 その後、何食わぬ顔で戻って来たメリーの護衛をとっちめたり、明日以降の探索計画を立てたりして、その日は過ぎて行った。


 その翌朝。


 準備を整えた俺達は、再びダンジョンへ挑む事となった。


 昨日の内に2階層までの様子見を終えているので本日は4階層まで、いや、できれば安全地帯があるらしい5階層までは歩を進めるつもりである。


 この辺りまで来ると、珍しい鉱物は無いモノの、銀鉱石や銅鉱石などの普通(?)の鉱石が出土するらしく、多くの冒険者はこの範囲で探索を行っているのだとか。


 出て来る魔獣や魔物も、二角熊やオーガまでらしいので、少し腕のある冒険者であれば何とか倒せる範囲である。


 しかし、6階層を超えると更に凶悪な魔物や魔獣が出て来るらしい。トロールや三角大鹿などの地上では滅多に出て来ない凶悪な魔物や魔獣が出るそうで、上級の冒険者達は日々これらの怪物たちの相手をしつつ、貴重な鉱物を持ち帰ると言うのだから脱帽だ。


 そして10階層ともなると、ワイバーンなどの劣化竜種も出て来るらしい。


 ここまで来ると本物の怪物だな。


 空は飛ぶし、炎の吐息は吐くわ、その巨体から繰り出される爪や牙の一撃は、普通の人がくらえばいずれも致命傷となるだろう。


 しかし――それを聞いて俺の心は逆に躍った。


 なにせ、ずっと半吸血鬼ダンピールの能力を中途半端に使いながら仕事をしてきたのである。ワイバーンほどの怪物であればダンピールの能力を全開にして戦えるのではないだろうか?


 自分でも狂っているとは思うが、俺が求めるのは命をギリギリまでに追い込んだ戦闘なのだ。命の鬩ぎ合いにこそ生きがいを感じる人間なんだと、俺はダルガン子爵との戦いで思い知った。


 ワイバーンという怪物を相手に、俺の体術や魔眼がどれだけ通じるか……今から楽しみでしょうがない。


 だが、それはともかく、メリーを守る事も忘れてはいけない。



「なんや、さっきからにやにやと……私らはこれからダンジョンへ潜るんやで。しっかりして貰わなあかへんよ」

「ああ、悪い悪い。気にしないでくれ。魔獣や魔物達との戦闘を想像して口元が緩んだだけだ。護衛の仕事はしっかりこなすさ」

「……何や兄さん、バトルマニアかいな。まぁ、私の事をしっかり守ってくれるんなら文句は言わへんけど」



 ヤレヤレと言った感じでメリーは首を横に振る。どうやら目的は共有できても性分は共有できないらしい。


 まあ、鍛冶師と戦闘者では近しい様で違う。


 鍛冶師は道具モノを作る職業なのに対し、戦闘者はその作られた道具を使って生物モノを壊す職業だ。お互いの理念が異なるのもむべなるかな……。


 そんな事を思いながら俺達は再びダンジョンの中へ入って行った。




---




 ダンジョンの中は昨日と特に変わらぬ状態にあったので、一気に3階層まで進んだ。このフロアからはオーガや二角熊が出るようだが、最早彼らは俺の敵ではない。


 シノビの訓練で培った体術を駆使して出会った魔物や魔獣を斃していく。そこには魔眼を使う余地はない。



「ははぁ、凄いな兄さん。ダンピールってこんなにも強い種族なんやな。魔族である吸血鬼とも対等に渡り合えるのも納得やわ」

「さて……高位の吸血鬼ともなれば敵うかどうかはわからないが、俺の場合は伯爵級の吸血鬼までなら滅したことがある。問題は10階層にでるワイバーンがそれより強いかどうかだが……いざとなれば俺を見捨てても逃げる事を優先してくれ」

「なーにをいっとるのよぅ。6~9階層に出るっちゅう、トロールや三角大鹿に出会ったらどの道、私は死ぬしかなくなるんよ。しっかりサポートするよってん、ワイバーンくらいちょちょいのちょいと倒したってや」


 確かに、言われてみればそうか……無駄に不安を煽る事を言ってしまったのは失敗だったな。


 なに、俺には緋王眼をはじめとする精霊眼があるのだ。それは飛んでいるワイバーンにも有効だろう。それに接近戦ともなれば、俺には50mを跳躍する脚力がある。決して敵わぬ敵ではないだろう。


 

 さて、3階層の探索も無事に終わり、4階層へ降りて来た時だった。またも何処からともなく悲鳴が聞こえて来た。


 悲鳴の数は二つ。両方とも華奢な声で、何処かで聞いたことのあるような声だった。まさか……。



「悪い、メリー。どこかの冒険者がピンチのようだ。これから救援に向かおうと思うが、いいか?」

「かまへんよ。まだ階層も浅いし……襲われてるのはルーキーやろ。私もそれで助けられた口やからな。兄さんんの行動に文句をつける事はないで」

「助かる。どうやら、知り合いらしくてな。放って置くには気が引ける」



 俺はそう言うと悲鳴が聞こえて来た方向へ駆け足で向かった。同時に此方へ走って来る足音も聞こえて来る。


 そして彼らハーフエルフの兄妹は現れた。



「ええ? なんでこんなところにゲンヤさんが!?」

「ちょうどいいわ、私達を助けなさいよ!」

「やはり、ナイブズにアリアだったか。奇遇だな」

「何を呑気に挨拶しとるんよ! アレはトロールやで、なんで第4階層におるんよ!?」



 ナイブズとアリアの後ろからオーガより一回り大きな太っちょなヒト型の魔物が現れた。そいつは新たな獲物を見つけた所為か、歓喜の咆哮を上げた。


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