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49話 ダンジョン探索2


 本日のダンジョン探索は、購入した地図の正確さであるとか、罠は存在するのとか、出て来る魔物や魔獣はどんなものかを確認するのが目的だ。


 とりあえず、第一階層の地図は正確であり、罠は存在せず、出て来る魔物はゴブリンのみと言った感じで難易度は低いと感じられた。


 これでは第二階層へ潜っても問題ないのではないだろうか? 目的のアダマンタイトは第十階層くらいから出るそうで道のりは長い。そんな思いもあって、初日ではあるが、まだ時間はあるし、第二階層まで調査を進める事にした。



「しかし、生き物なのに内部に階段があるって、変な感じですね」

『ああ確かにな、ただ、こう思う事にすればいい。ダンジョンとは生きる建築物なのだと。そう思えば階段があるのも、部屋があるのも気にならなくなるじゃろう』

「んー、なるほど、そういうモノですか……」



 流石、ダンジョンに住んでいたヒトの言葉には説得力がある。生きる建築物か、確かにそう思えば階段があるのも当たり前のように思えて来たし、内部が明るいのも当然のように思える……いや、それは流石に毒され過ぎか? なんにしても現実を受け入れるしかないわけだが。



 さて、そんなことを思いながら第二階層も問題なく調査が進む。


 出て来る魔物はゴブリンばかりだし、地図も特段おかしなところは無い。俺の感覚を信じる限り、罠もないようであるし、これなら第三階層へ降りても大丈夫ではないだろうか。


 そう思っていたら、何やら悲鳴らしきものが聞こえた。


 ダンジョンの中では視界が限られていて、動きも制限されるため、ギルドにおいては相互扶助が推奨されている。無論、自己責任の範疇でという但し書きが付くのであるが、今の俺には余裕があるため、助けに向かうべきだろう。


 俺は悲鳴の聞こえて来た方向に向けて駆け足で進み、角を曲がると、そこにはゴブリン数体に襲われているドワーフの女子らしきヒトが一人、こちらに向けて走って来るところだった。



「め、目隠しの兄さん!? 逃げなっ、ゴブリンじゃあ! 一匹ならともかく、三匹は手にあまる!」



 確かにこの二階層では、ゴブリンが出るにしても一匹ずつだった。それがいきなり三体も出たとなれば驚くのも無理はない。しかし、このゲンヤ、王都付近の戦闘では百に近いグールを一人で倒し切った実力の持ち主である。ゴブリン三体程度、敵ではない。


 俺はまず、此方に駆けて来るゴブリン一体に対して跳び蹴りを敢行した。その蹴りは狙い通りゴブリンの首筋に当たり、ごきゅりという音を立てて首が折れ曲がった。


 驚いてたたらを踏む残りのゴブリンに対し、足払いを行い、転げさせた後は首に向けて踵を落とすと、同じく、ごきゃ、という音を立てて首の骨が折れた。


 残った最後のゴブリンは俺の残虐な殺し方に恐れをなしたのか、逃げ去ってしまった。



 そんな訳で、九死に一生を得たドワーフの女性は恐る恐る俺に話しかけて来た。



「ほえー……、兄さん、強いんやねェ。こんなに鮮やかにゴブリンを倒すところなんて初めてみたんよ」

「ん、まあな。ところでケガは無いか? もしケガをしているならダンジョンから出た方がいい。この人食いの洞窟は、何を判定して取り込もうとするか分からないからな」



 そう言う側から、斃れた二匹のゴブリンがじゅぶじゅぶとダンジョンに喰われていく。その様を見るのは初めてなのか、ドワーフの女性は悲鳴を上げて俺に抱きついてきた。



「ひッ、こ、こわぁ……ダンジョンの中で死んだらこうなるんやね。だけど、大丈夫。アンタのおかげで私は傷一つ負ってないんよ。感謝感激やわ」

「そ、そうか。それならいい。ところで君の名前は? 俺はゲンヤだ」

「私の名前? ああ、メリーと呼んでくれたらええよ」



 どうやらメリーはダンジョンに今日初めて挑んだらしく、運よくここまで魔獣や魔物に遭遇しなかったようである。しかし、突然三匹ものゴブリンに遭遇して逃げていたところを俺に助けられたと言う事らしい。



「ゴブリンの相手も出来ないのに、なんでダンジョンに挑もうとしたんだ? 自殺志願者かよ」

「ちがうんよ! 私にはどうしてもミスリルかアダマンタイトが必要で……けど、依頼を出しても中々持って来てくれる冒険者はおらん。このままやと品評会に間に合わんから、自分で……」

「まてまて、話がまったく読めない。それに話をするならこんなダンジョンの中じゃなくて、外でしたい。ちょうどこれから外へ出るところなんだ。君さえよければ話を聞きたいと思うけど……」

「なんや、兄さん。私のお願いを聞いてくれるんか? それやったらこんな陰気な場所に用はないわ。さっさと出ようやないか」



 そう言うとメリーは鼻歌交じりで、ダンジョンの出口に向かって歩き出す。これは変なのに関わってしまったなと思ったが時すでに遅し。


 

「早ようきいや、兄さん。おいてくで」

「はいはい、いまいくよ」



 俺は彼女の後ろについてダンジョンの出口を目指すのであった。


評価等頂ければ幸いです。

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