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48話 ダンジョン探索1


 ――翌朝。


 俺はアマルガムの町の宿を出て、ダンジョンへ向かった。


 俺と同じ方向へ進む人が多く、彼らは皆ダンジョンへ挑む冒険者であろう。


 逆にアマルガムの町へ戻って行く人たちもいるが、これはダンジョンの中で夜を過ごした人たちか。疲労が濃く、足取りも重いが目がギラギラと輝いている。恐らくは何かを発見して持ち帰る途中ではないか――


 っと、あまり注目していたら変な顔をされてしまった。この目隠し顔は相変わらず目立つ。ついでに白猫カーミラも懐に入れているし、冒険者としては特異な存在だろう。


 さて、今日の所はダンジョンがどのような場所であるかを確かめるのが目的で、深入りするつもりはない。


 購入した地図の正確さであるとか、罠は存在するのかとか、ダンジョンの中で出て来る魔獣や魔物はどんなものかを確認するのが今日の目的だ。


 間違っても、財宝に目がくらんで奥に奥へと進み、取り殺される……ということは避けなければならない。


 そうやって自分を戒めている内にダンジョンの入り口が見えて来た。


 何というか……遠目でみると古墳?に近い形をしている。そして、その入り口は広く、思わず掃除機の吸い込み口を思わせられた。


 そんなダンジョンの入り口へ向けて、一人、また、一人と冒険者が入っていく。


 その様はまるで、大きな生き物の口に向けて食料が自ら入って行くように見え、怖気が走った。


 いや、実際にそうなのだ。


 迷宮ダンジョンは超巨大な生物で、自らでは動けず、その体内に作り出した他の生命体が有用とされるもので釣って取り殺す。そんな生命体なのだ。


 言わば、疑似餌の代わりにヒトの欲を煽る深海魚――チョウチンアンコウの地上版と考えれば合点がいく。


 だが、今日から俺もその餌に釣られてダンジョンに挑む『冒険者』だ。その疑似餌だけを上手く刈り取って、殺されないように立ち回らなければ……。


 再び自分を戒めた後、俺はダンジョンの中へと入って行った。



 ダンジョンの中は事前情報通り、どうやら壁や天井自体が淡い光を放っているらしく、陽の光が届かないのにほのかに明るく、松明がいらないほどであった。


 カツン、カツンと自らの足音が聞こえるほど地面は固く、コレは気を付けないと自分の場所を獲物に教えてしまうなと自然と忍び足となった。


 そう言えば、俺の探知能力はダンジョンでも使えるのかと思って試してみると……駄目だった。なにせダンジョン自体が巨大な生命体なのだ。その生命力の強さによって他の生命が上書きされているような感じでダンピール由来の探知能力は役に立たなかった。


 これはシノビの研鑽を積んだ能力を発揮する時だな。


 俺は視覚以外にも、聴覚、触覚、嗅覚を全開にして索敵を行う事にした。


 例えば聴覚は敵の足音を拾い、触覚は空気の流れを読める。そして嗅覚は敵性生命が持つ独特の匂いを以って接近を教えてくれる。


 果たして俺の感覚は、この道の曲がり角の先に、ゴブリンがいる事を教えてくれた。あちらはまだこっちに気付いていないようである。


 であるならば、待ち伏せが望ましいだろう。


 俺は曲がり角を曲がってこちらに気付いたゴブリンに対し、いきなり首筋に向けて足刀蹴りを叩き込んだ。


 ぼきゃ、という音を立ててゴブリンの首が折れ曲がり、絶命せしめる。


 そして、死んだゴブリンはその場に倒れ……ジュクジュクという音を立てながらダンジョンに吸収されていく。


 ……どうやら、命を失った生命は速攻でダンジョンに喰われるようだ。まさに俺達は巨大な生命の胃の腑に居ると言う事が改めて分かり、再び怖気が走る。



『何を恐れ戦いておるのか。命を失う事が無ければこのように喰われることはない。お主の力であれば、なんの心配もなく目的を果たせるじゃろうて』

「我が君は……ダンジョンに挑んだことがあるのですか?」

『ある。というよりは、我が城がいわばダンジョンでな……我を討伐しようとした愚かな人間共が倒れ、ダンジョンに吸収される様は何度も見ておるよ』

「だ、ダンジョンに住んでいたんですか?」

『おうよ。なかなか便利ではあったぞ。ヒトを吸収する毎に風呂などできたり、客室が増えたりして色々なバージョンアップをしていくし、排泄物なんぞも吸収するから下水道いらずではあったしな……あとは、我に敵対する者が入り込んだ時にアラームで教えてくれるなど、手なずければ非常に有用な生き物じゃぞ、ダンジョンは』



 それは……吸血鬼とダンジョンの相性が良くて、共存共栄というやつが上手く行った例なのだろう。


 魔族である吸血鬼を倒さんとする人間やダンピールを返り討ちにすることで、魔王城と言うダンジョンは栄養を得て成長していく。そしてその見返りとして快適な生活空間をダンジョンは作り出す。


 言うならば、魔王カーミラという存在自体が大きな疑似餌となっていたわけだ。


 この世界の生命体の逞しさを感じながら、俺は更にダンジョンの奥へ歩を進めるのだった。


評価等頂ければ幸いです。

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