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47話 アマルガムの町


 ――翌日。


 俺と白猫カーミラは、アマルガムの町へ向かう旅路にあった。


 かの町へは王都から北西に50kmという位置にあるらしく、大人の脚であれば1日程度で辿り着ける場所だ。


 逆にそんな近くにダンジョンと言う危険な場所があって、王都の守りは大丈夫かという気がするが、どうやらそこは王都の騎士団が常駐していて、ダンジョンから出て来る魔物や魔獣を撃退しているらしい。


 そして、ダンジョンから専門に出て来る魔獣や魔物は、結構なお金になるらしく、それを討伐する専門のギルド構成員もいるのだとか。無論、此方が一方的に倒すのではなく、ダンジョンに取り殺される者も多い。


 しかも、ダンジョンの中は宝が潜んでいる。


 多くの者が一攫千金を求めてダンジョンに挑戦しては、散っていく。一般人は、そんな命知らずのギルド構成員に対して『冒険者』と呼んで区別しているんだとか。


 たしかに……どこにあるかも分からない宝を求めて、魔物や魔獣が潜む迷宮に入って行くとか、冒険者と言われても仕方がない。ただそこには、単なる蔑みではなく憧れも込められている気がする。


 事実、一回の探索で大金持ちになったと言う例も多くあるらしく、まさしく一攫千金を得られる場所なのだ。


 そんなヒトの欲望を満たす町として、アマルガムの町は結構な栄え方をしていた。


 何処からともなく金属を叩く音や、客引きをする人の声がひっきりなしに聞こえて来る。


 どうやらアマルガムの町は、ダンジョンから産出される鉱物を加工する職人と、ダンジョンに潜る冒険者を相手に商売をする人たちで溢れかえっているらしい。



『騒々しい町よな。お主、いつか王都でスリに目を付けられた時のようにキョロキョロするでないぞ』

「分かっておりますよ、我が君。しかし、喜んでください。ここの屋台で出ているものは王都の屋台とほぼ同じもののようです」

『なぬ? そうするとお好み焼きもあるというのか?』

「ええ、その様です。それどころか、焼き鳥も、焼きそばも……王都にはなかった焼きトウモロコシなんかもあるようですね」

『ほぅ、それはまた……新しい味に挑戦してみるのもよいな』

「はは、それはまた後で。とりあえず、ギルド支部に顔を見せて挨拶するのを先にしましょう」

『む、仕方がないのう。しかし、その後は必ずお好み焼きを、いや、焼きトウモロコシなるものを献上するのじゃぞ?』

「承知しました。我が君」



 なんだか腹ペコキャラになって来たなと思いつつ、俺はギルド支部の扉を潜る。するとそこは町の喧騒よりも尚も激しい状態となっていた。



「助っ人はいらねーか!? 三日で10万オンスだ、こんな破格の条件出してるヤツは他にいねーぞ!!」

「僕たちと一緒にダンジョンへもぐってくれる人を募集しまーす! 出来たら内部構造に詳しい人が望ましいです」

「誰かミスリルを持っている奴はいねーか? 50gを500万オンスで引き取るぞ!」



 ダンジョンに潜るために助っ人を申し出る人、逆に仲間を探す人、ダンジョンで得たであろう鉱物を買い取ろうとする人など、多種多様な目的を持つ人が集まっているようだ。


 俺はそんな彼らを搔い潜ってギルドの受付に辿り着いた。


 

「初めまして、今日からこの町にお世話になろうと思っているゲンヤと申します」

「はい、こんにちは。今日はどのようなご用件で?」

「実は王都でこのような依頼票を見まして、この町にやって来た次第です。ご挨拶と、アダマンタイトとはどのようなものかを知りたく、伺わせて頂きました」

「なるほど。アダマンタイトがどのようなものか知りたいのですね。それでしたらちょうどいい。先ほど持ち込まれた鉱石の原石がありますので、これを参考になさってください」



 ギルドの職員が一度奥に引っ込んで、再び戻ってくると、その手には小指の先ほどの大きさの青紫色の鉱物が乗っていた。どうやらこれがアダマンタイトらしい。



「ははぁ、コレがそうですか。手に取らさせて頂いても?」

「それはご遠慮ください。この程度の大きさですが、300~500万オンスはするものですから。万が一、落として割ってしまえば価値は半減します。その保証がアナタにできますか?」



 俺は思わず身を引いて遠ざかった。


 あんな小指の先ほどのモノが500万オンス! まるで宝石のような価値がある鉱物だなと青くなった。しかし、これからアレを求めてダンジョンに潜らなければならないのだ。



「そうです。このアマルガムの町では主にこのアダマンタイトを求めて冒険者がダンジョンに挑む。中には道半ばで倒れる者も沢山おります。さて、貴方はどちらになられるのか……ダンジョンに喰われて倒れるのか、それともアダマンタイトを得て一攫千金の冒険者になられるのか」

「……脅すのが上手いですね、しかしご心配召されるな。このゲンヤ、多少腕には覚えがあります。必ずやアダマンタイトを手に入れて生還してみせますよ」



 俺は薄笑いを浮かべるギルド職員に一礼をすると、その場を立った。


 今日はもう夕方だ。明日からダンジョンへ潜ろう。我が君にも献上品を与えないといけないしな。


 俺は未だ喧騒が絶えないギルドから出て、屋台が立ち並ぶ街へ繰り出すのだった。


明日より盆帰省のため、暫く更新を停止します。

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