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40話 宣戦布告2


 戦力を温存するというのなら、別の戦い方をするしかない。


 俺はその辺に転がっている拳大の石を拾うと全力で投石した。その威力は凄まじく、どっぱあん、とグールの頭がはじけ飛んだ。



『!!』



 よし、これなら十分武器になるぞ……まぁ、グールの飛び散った破片で汚れるのは勘弁して貰おう。


 非難の目で見て来るラファとミカに怯みつつ、俺は移動しながら石を拾い続けて投石を行った。それによって、どぱん、どぱんとグールの頭が次々と破裂し、数を減らしていく。


 ラファ達も戸惑っていたのは最初だけで、力加減を覚えたのか次々とメイスでグールを殴り殺していった。



「さて、マッシュと言ったか? アンタが用意したグールは全部倒したぞ」

「……これは驚きました。ピエールが討たれるのもやむなしの事ですね。しかも、あれだけ戦っても余裕さえもある」

「それで? 私たちの戦力分析は出来たかしら? こんなグールじゃ私たちの実力を測る事さえできないわよ。いい加減、あんた自身が出てきたらどうなのかしら?」

「今宵のメイスは血に飢えておりますわ。貴方の血も吸わせてくださいませ」



 なんだか、どちらが吸血鬼か分からないセリフを吐くミカに戦慄しつつ、俺も挑発を続ける。



「マッシュさんよ。こんなんじゃ、実力の十分の一さえも出してやれないぞ。アンタの主人、ダルガン子爵だっけか? 次はその子爵とやらも連れてきな。でなけりゃ、無駄に戦力を減らすだけだぞ」

「……黙って聞いていれば生意気な! 良いだろう、次は男爵級の吸血鬼である、このマッシュがお相手する。明日のこの時間に、この場所に来い。来なければ、王都の住人が一人ずつ消え去る事になるだろう」

「王都の住人を人質にするつもりか……卑怯な!」

「クク、何とでも言うがいい。貴様ら家畜に何と言われようと心は痛まぬ……明日までに私も十分な準備をしてくる。貴様らも悔いの残らないように準備をするのだな!」



 そう言ってマッシュと名乗った吸血鬼は幻影を消し去ってしまった。



「……さて、とりあえずは作戦成功、といっていいかな?」

「そうですわね。見事、子爵の部下を釣り上げる事に成功したわけですから」

「グールの飛び散った破片さえなければ完璧だったんだけどね!」

「悪かったよ。これで顔なり躰なりを拭いてくれ」



 俺は背嚢から綺麗な布を取り出すと、二人に渡した。それを使ってラファとミカは俺が飛び散らせたグールの破片を拭いていく。



「それにしてもあの怪力はなに? たかが投石でグールの頭を弾け飛ばすとか聞いたことがないわよ」

「もしかして、真祖カーミラに血を吸われたと言うのは本当の話なのですか?」

「だから最初からそう言っているだろう? ……本当は血を吸い尽くされて殺されるトコロだったんだけど、俺の血が凄く不味いらしくて中途半端にしか血を吸われなかったんだ。そうしたら、こんな半端な吸血鬼みたいな状態になっちまってさ。太陽の光も平気だし、吸血衝動も無いから、ダンピールを名乗っているってところだ」

「そういうこと……」

「本来、ダンピールは吸血鬼と人間の間に出来た子の事を言うのですわ。成り立ちから違うのであれば、その馬鹿みたいな怪力や、緋王眼の事も、まあ、納得できます」

「……頼むから俺を殺さないでくれよ? 何度も言うが、俺に吸血衝動はないからな。普通の吸血鬼とは違うって事を理解して欲しい」

「あら、見縊らないでちょうだい。陽の光で灰に成らない時点で、貴方は他の吸血鬼とは違うって分かっている。正直、実力も敵いそうにないしね」

「明日の吸血鬼退治、頼りにしておりますわ」



 そんな感じで俺達は親交を深めつつ、王都への帰路に就いたのだった。



---



 それにしても、明日はマッシュとの決戦だ。十分な用意をしないと。男爵級とか言っていたからピエールよりも格上な吸血鬼だということで、前より苦戦が予想される。



『何を言っとるんじゃお主は』



 宿のベッドの上で静かに闘志を燃やしていると、胸の上に白猫カーミラが乗っかって来て、呆れたようにぼやく。



『苦戦も何も、男爵級の吸血鬼なんぞ、貴様の緋王眼にかかれば雑魚よ、雑魚。何度言わせるのか。お主ら異界の民は自己評価が低すぎる。もっと自信と自覚を持て。我の眷属なのじゃからな、そのような低い意識でおられたら此方が困る』

「……お叱りの言葉、ありがたく……しかし、未だ我が力の把握が出来ていない状態です。それに相手の力も良く分かっていない。そのような状況では慎重に成らざるを得ないと思いまして」

『やれやれ……しかたがないのう。主人の言葉を信じられんとは噴飯ものじゃが、お主の言葉にも一理ある。よし、ここは幻界にて力を試させてやろうぞ』



 白猫カーミラはそう言うと、コツンとオデコを俺の額に当てた。それによって、俺の意識は暗闇の底へ落ちて行った。


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