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38話 作戦会議


 俺の言葉が信じられない彼女達を納得させるべく、俺達はギルドの裏手にある戦闘訓練場へと移動した。


 どうやら此処はギルド内で戦闘を専門に行う者の訓練場らしく、王都の中だと言うのにかなり大きい広場が用意されている。その一角を使って俺の魔法実験が実施される事となった。


 

「いや、別に魔法といったって、エルフやハーフエルフでも使えるだろう? そう珍しい能力じゃないと思うんだけどな……」

「それはそうだけれども、ダンピールが魔法を使えると言うのが信じられないのよ!」

「魔法……それは、限られた種族のみに許された奇跡の術ですわ。先ほど貴方が申したとおり、エルフやハーフエルフ、そして高位の吸血鬼や夢魔などの魔族にしか使えない力のはずなのです。それが使えると言う事は、実質、貴方はデイウォーカーと遜色ない力を持っている事になりますわ」

昼を歩く吸血鬼(デイウォーカー)ねぇ……」



 それは何千年も生きた吸血鬼が至るとされる、日光を克服した吸血鬼である。吸血鬼最大の弱点を克服したそれは、リッチにも匹敵しうる化け物として認知されているが、あまりにも長く生きすぎた所為か、悟りを開いて人里にはまず降りてこないとされる仙人的な存在でもある……と、以前、図書館で調べ物をした時に得た知識に在った。


 そんな伝説的な存在に近しいと言われても反応に困るが、嘘つき呼ばわりされるのも豪腹だ。


 俺は目隠しを外すと、用意された的に向かって『燃えろ!』と念じてみる。するといつも通り、標的となった的は真っ赤な炎に包まれて燃え尽きた。



「本当に魔法が使えるんだ……」

「信じられませんが、目の前で起こっている事から目を逸らすほど愚かではありません」

「俺の親はこの力を『緋王眼』と名付けていた。どうやら子爵級の吸血鬼であれば一発で昇天させられるらしいが……実のところは分からない」

『緋王眼ですって!?』



 あ、あれ? どうやらこの言葉も彼女たちの胸に刺さったようで、すごい勢いでもって胸倉を掴まれた。それでもってがくんがくんと揺らしてくる。



「ちょっとアンタ、それって……ああ、もうしんじらんない!」

「どれだけ属性特盛なんですかッ、この調子では真祖カーミラに血を吸われたと言うのも間違いではないかもしれませんわ!」

「ちょっと、おい、二人とも落ち着いてくれ! 苦しくてしょうがないぞっ!!」



 胸倉を掴んで振り回してくる二人を俺は振り払った。まったく、何だっていうのか。



「いい? よく聞きなさい。『緋王眼』とは、真祖カーミラが持つ灼熱の魔眼の事よ! かの魔王に睨まれた者は例外なく焼き尽くされるという伝説の魔王眼」

「その他にも三つの魔王眼があるといわれております。即ち、翠王眼、瑠王眼、玻王眼……その頂点に位置するのが『緋王眼』なのです」

「アンタの親がなんでそんな大層な名前を付けたかは知らないけど、そう名付けたからには近い力を持っていると思って良いかもね」



 マジかー……。なんちゅう物を継承させてくれたんだ、我が君は。


 しかし、何か話が違うな。カーミラはこの眼の事を、吸血鬼狩りを専門とするダンピールが持つ、最大の奥義とかなんとか言っていたはずだ。それを彼女らが知らないというのはどういうことだ。彼女らが無知なだけか? 失伝している可能性もあるが……。


 いや、もしかして、カーミラ自体がその伝説のダンピールで、吸血鬼の王として祭り上げられているとか? じゃあ真祖って一体何なんだ。実は自称か? ああ、実は単純に『緋王眼』をカーミラが使えるってのもあり得るのか……。


 んーむ、よくわからん。こんがらがって来た……これは本人に聞いてみるしかないか。


 しかし今、我が君は散歩に出掛けていて見当たらない。とりあえず今は子爵吸血鬼対策を考えるのを先にしよう。


 ……とは言うのものの、そのダルガン子爵吸血鬼が何処にいるのか、何を企んでいるのか、さっぱり分からないと言うのが現実だ。


 今、出来る事と言えば、大草原や大森林に出ると言うリビングデッドを狩る事ぐらいである。眷属を狩られ続けたらその本体も出て来るのを期待するとか……あとは昨日みたいにダンピール同士が集まって狩りをしていれば、ピエールのような配下がちょっかいを掛けて来て、そこからダルガン子爵に辿り着く……なんてことが出来るかもしれない。



「そう考えると、昨日、ピエールを消滅させてしまったのは悪手だったか……」

「仕方ないじゃない! ダンピールにとって吸血鬼を滅するのは本能なんだからっ」

「しかし、次に配下が襲ってきたら、出来るだけ情報を引き出さないと、ですね。ゲンヤさんが使う影縫いの術ですか。アレを使えば尋問が楽に出来るでしょうから頼りにしておりますよ」

「まあそうなるか……」



 すると、ずっと黙って俺達の話を聞いていたギルドの上役は、重々しい表情でこう言ってきた。

 


「話はまとまったかね? では、ギルドはこの件について君たちに一任する。というか、話を聞く限り、そうせざるを得ない。一刻も早く事件を解決に導いて欲しい。もちろん、相応の報酬は用意させて貰う。よろしくお願いする」



 ……どうやら、俺達に課せられた責任は重大のようだ。


評価等頂ければ幸いです。

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