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37話 吸血鬼階位


「ゲンヤ、貴方のおかげで吸血鬼退治が楽に出来たわ」

「少し釈然としませんが、お礼を言わせて頂きますわ」



 吸血鬼の血がべったりと付いたメイスを片手に、笑顔で礼を言われてもなぁ……質の悪いホラーにしか見えない。俺は愛想笑いで恐怖の感情を誤魔化していると、白猫カーミラが何処からともなく現れて懐に収まった。



『勿体ないことをしよるな。アレは純粋なる力の結晶じゃ。喰らわば己の力を増すことが出来ると言うのに。ま、ダンピールがそのような行為をするわけがないか』

「我が君、何処にいらっしゃったんですか?」

『おう。末端とは言え、同族が狩られるのはあまり気持ちのよいモノではないからな。その辺を散歩しておった』

「どうやらダルガン子爵とやらの部下らしかったのですが……」

『……悪いが伯爵以上の吸血鬼でなければ覚えておらぬ。そのダルガン?とやらも、子爵級というのであれば大したものではない。お主の緋王眼に掛れば一発で昇天するだろうさ』



 俺が半吸血鬼となった事で得たこの緋王眼――改め、精霊眼はどれほどの力を秘めているのか。もしダルガン子爵とやらが襲ってきたら試してみるか……。



「さて、何はともあれ吸血鬼退治は終わったわけで、王都に帰ろうじゃないか」

「そうですわね。彼の主人たるダルガン子爵とやらが出てきたらワタクシ達の手には余りそうですもの」

「子爵級の吸血鬼ともなれば、もっと仲間のダンピールに声を掛けないとね。ゲンヤ、貴方のさっきみたいな影縛りの術だっけ?期待しているわよ」



 ……なんだか、話の乖離が激しい気がする。


 白猫カーミラは、子爵級の吸血鬼であれば俺単独でも楽に倒せると言い、ラファとミカは苦戦必至と考えているようだ。


 それもこれも、俺が実力を示し切れていない事で起こっている認識の齟齬なワケで、この際、ちゃんと俺の実力を示した方が良いのだろうけれど、問題は俺の実力を示し切れる『的』が無いと言う事だ。


 この状態で何を話したところで、先ほどのように嘘つき呼ばわりされるだけであろうから、黙っているのが吉だろう。それに、もし、そこから白猫カーミラの本性がバレて、ラファとミカが襲い掛かってきたらカーミラに返り討ちにされるだろうし……。


 そんな訳で、俺は全ての事に沈黙を守り、皆と共に王都への帰り道を歩くのだった。



 結構な遅い時間になってしまったが、王都の門はまだ空いているようだった。


 俺達は次の日の朝に今回の件をギルドに話すことにして、今日は解散することにした。


 本当であれば今日の内に吸血鬼とその対策について話すべきであろうが、今の時間は24時を超えている。当然、ギルドは閉っているし、恐らくは話をすべきギルドの上役も夢の中だ。


 この辺、お役所仕事だよなと思いつつ、その日は宿に帰ってぐっすりと眠ったのだった。



 ――翌朝。


 俺とラファとミカは待ち合わせした時間にギルドへ集合していた。昨日あった事、そして新たなる脅威である吸血鬼、ダルガン子爵の事をギルドの上役へ話すためだ。


 まず、俺達は受付の人に昨日あった事を話し、証拠品としてピエールが使っていたクレイモアを提出した。それを見た受付の人は真っ青になって上役を呼びに行き、俺達は応接室に通された。


 通された応接室でしばらく待っていると、上役と思われる年嵩の男が現れ、事情を再確認したいと言ってきたので、俺達は昨日の事を最初から最後まで話す事になった。



「――と言うわけで、この王都は子爵級の吸血鬼であるダルガンに狙われている可能性があります」

「リビングデッドを作り出している吸血鬼……それを倒したら思わぬ大物が釣れたか。なんとも厄介な事だ」



 俺達が事情を話すと、上役の人は頭を両手で抱えてしまった。どうやら相当にまずい問題らしい。



「なあ、俺ってよく知らないんだが、子爵級の吸血鬼ってそんなにヤバイ存在なのか?」

「あっきれたわねー、そんな事も知らないでダンピールをやっていたの? ミカ、復習がてら教えてやってよ」

「承知しましたわ」



 彼女が語るところによると、吸血鬼には階位があるらしく、上から、『魔王』『公爵』『侯爵』『伯爵』『子爵』『男爵』『騎士』と別れているらしい。


 どうやら昨日戦ったピエールは『騎士』階級に当たる吸血鬼らしく、武器として持っていたあのクレイモアがその証拠なのだとか。


 それで『騎士』階級の吸血鬼であれば、文字通り武器とその怪力を以って戦うだけなのだが、『子爵』級ともなると、魔法を使うらしい。



「魔法!? それって、炎を出したり、雷を出したりするのか!?」

「ええ、そうよ。吸血と怪力だけじゃなく、超常的な力を行使する。それが子爵級以上の吸血鬼。別名、ダンピールキラーとも呼ばれているわ」

「ワタクシ達、ダンピールは基本、魔法が使えません。腕力で戦うしかないのです。そんなワタクシたちに対して絶対的に有利な能力を持つため、彼らはそう言われておりますの」

「……いや、実は俺も魔法じみた能力が使えるんだけれど……」

『はぁ!?』



 いや、そんな驚かなくてもいいんじゃないかな……。


評価等頂ければ幸いです。

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