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33話 申し出


「改めてよろしく、私の名前はラファよ」

「ワタクシはミカと申します。よろしくお願い致します」

「……俺はゲンヤだ。そしてこの懐で寝ているのは猫のカーミラ、俺共々よろしく」



 俺は若干気後れしながらも、自分の名前と我が主人を紹介した。


 なぜなら目隠しをしているとはいえ、両者ともえらく美人だからだ。ラファの方が黒髪ショートで、ミカの方が金髪ロングとなっている。更には、双方ともメイスをメイン武器にしているようで、アレで叩かれたら骨折どころか、その部位ごと持っていかれるんじゃないかと思えるほど凶悪なトゲトゲがついていた。


 そして、此処から先は声を潜めての情報交換となった。



「それで、俺も、君達も半吸血鬼ダンピールって事でよいのかな?」

「ええ、その認識で間違いありませんわ」

「目隠ししている上、リビングデッド討伐の依頼を見て執着を見せるとなれば、お仲間じゃないかなと思ったケド、やっぱりそうだったようね。吸血鬼狩りはダンピールの本分だもの――親も含めて根絶やしにしてやりたくなるほどね!」



 リビングデッドの元には必ず吸血鬼がいる。そしてその吸血鬼を狩るのはダンピールにとってほぼ本能のようなモノらしい。


 俺はその存在自体がイレギュラーみたいなものだからその自覚が薄いが(そもそもダンピールなのかも怪しいのが本音だ)、能力的には吸血鬼狩りの力を備えている。


 ただ、どうやら彼女たちは生粋のダンピールらしく、吸血鬼という自ら発した言葉に対して強烈な執着を見せた。これは、白猫カーミラの正体を知られる訳には絶対にいけないなと、今懐で寝ている彼女の頭を軽く撫でた。



「それで……俺に声を掛けて来た目的は? もしかして、俺とチームを組みたいと言う事かな?」

「悪いけどそうじゃないわ。ご同輩かと思ったから声を掛けておこうと思っただけ」

「貴方のこと、ワタクシ達はまだ何も知らないわけですから、チームを組むのは時期尚早かと……ただ、共通の敵を持つ身として知り合いと言う立場には成っておきたかったのですわ」

「そういう事か……勘違いしてゴメン。しかし、そういうことなら分かった。もし、このリビングデッドの発生源である吸血鬼の情報が得られたら提供させて貰うし、君達の方も情報提供してくれたら有難い」

「うん、今のところ、それくらいが妥当な所かしらね」

「あとは貴方様の実力を見たいところではありますが……これから大草原にまいりますのよね?」

「確かに、俺はこれから大草原か大森林へ向かい、ゴブリンやオーガなどを狩って生活の糧を得ようと考えている所だ……君達も同じか?」

「ええそうね……じゃあ丁度いいわ。今日の所は同行してお互いの実力を確かめ合う事にしない?」

「俺に異存はないよ」



 そんな訳で、俺達はお互いの実力を知るために大草原、若しくはその先の大森林へ向かう事となった。


 因みに彼女たちのギルドランクは俺より上で『D』だった。王都の門を潜るときに胸元からタグを出すとき、門番は鼻の下を伸ばしていたが、続く俺がタグを見せると睨んできた。


 どうやら彼女たちの存在は広く知られているらしく、俺は嫉妬の対象らしい。


 そんな色っぽい関係ではないんだけどなと思いつつ、俺は周りからの視線を出来るだけ無視して彼女たちの背後を追った。



 大草原に出ると、俺は自前の探知機能を用いてゴブリンやオーガを探した。幸いな事にすぐに見つかり、彼女達にも方角と距離を教える。



「えっ、何で分かるの!?」

「吸血鬼の探知ならともかく、他の魔物や魔獣の探知は出来ない筈なのですけれども……」

「俺はちょっと特殊でね…………それより、我が君。現場に到着したのでそろそろ降りてください」

『んー、む? そうか、早かったな。では此処から先は歩くとしよう。決して置いて行かないようにせよ……っと、なんじゃその小娘らは? ダンピールの匂いがするが……』



 そう言えば、彼女たちの事はカーミラが寝ていたから紹介し忘れていたのだった。俺は彼女達と吸血鬼に関する情報交換をする事と、これから実力を確認することを手早く小声で話し、了解を得た。



『フム、ならば我の事は使い魔とでも言っておけ。豪腹じゃが、それが最も軋轢を生むことになるまいよ。ただし、献上品を忘れる出ないぞ?』

「我が君の度量の大きさには感激しておりますよ」


 

 俺が白猫カーミラと話していると不審に思ったのか、ラファとミカが話しかけて来た。



「? なに猫と話をしているの。もしかして、探知能力はその猫の能力だったりする?」

「……使い魔がいるんですね。羨ましいです」

「あ、うーん、まあ……そう言う事かな。は、ハハハ」



 不審な目で見られたが、勝手に誤解してくれたようで何とか誤魔化せた。


 さて、それよりも遠目にゴブリン数匹とオーガ1体らしき存在が見えて来た。それはあちらもそうで、俺達の方へ向かって土煙を上げて走って来る。


 俺は懐からナイフを取り出し、彼女たちはメイスを構えると、向かってくる魔物たちと相対した。



評価等頂ければ幸いです。

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