31話 ギルド挨拶
そこから屋台をはしごすること数件。
焼き鳥、お好み焼き、おでんに、サザエのつぼ焼きと、これはもう絶対に日本人が関わっているだろうというメニューを制覇し、腹がくちてしまって眠くなったのだろう白猫は、俺の懐で眠ってしまった。
なんというか、本物の猫かと思うほどの奔放ぶりだが、余計な口出しをされないならその方がいい。彼女の頭を撫でさすりながら俺は宿よりも先にギルドへ向かった。
それにしても……ナイブズが王都は人種の坩堝だと言っていたが、確かにそうだと思える人種の多さだ。
エルフにドワーフはもちろんの事、獣人らしき動物と人間が合体したのようなディ●ニーアニメのような存在もおり、そのハーフと思しき者達も当然ながらいる。さらに言えば俺のように目隠しをしている存在も珍しくなく、もしかしたらアレはご同輩なのかもしれなかった。
驚いたのはリザードマンという存在か。デカい爬虫類がそのまま二足歩行しているのは自分の目を疑ってしまった。
この時ほど自分が目隠ししている事を幸いに思ったことはない。注目しすぎて、下手をすれば難癖をつけられていただろう。
ともかく、魔族に近い種族も王都では普通に生活しているようである。これならば、ダンピールであることによって迫害されることを気にせずに過ごせるのではないか――
そんな思いを持って俺はギルドへの道を歩いた。
到着したギルドの建物は、元居た城塞都市のものよりも数段大きな規模を誇っていた。ヒトの往来も激しく、ひっきりなしにヒトが出入りしている。俺は胸元のタグを改めて確認すると、ギルドの中へ入って行った。
中の雰囲気はそう変わらない。
依頼票が張ってある掲示板があり、その前に多くのヒトが群がっている。そして、その依頼票の受付を行っている窓口がある。
今日の所は仕事は請けずに挨拶をするだけ。そう考えて俺は受付窓口の方へ歩み寄って行った。
「こんにちは」
「こんにちは、あら、王都では初めての方ですか?」
「ええ、地方の城塞都市から今日ここにやってまいりまして……明日から依頼を請けようと思っていますので、挨拶をと思いまして」
「それはご丁寧にありがとうございます。ちなみに何をするかは決まっていますか?」
「ええ。元いた城塞都市では魔獣や魔物の討伐を主に行っていました。この王都でも似たようなことが出来ればよいと思っています」
「あらあら、それは大歓迎ですよ。王都では都市が大きい分、中で仕事をする人が多いので……もっと外で仕事をする人を増やすように上から言われていたんですよ」
「それは渡りに船と言った感じですね。こんな身でもゴブリンやオーガくらいなら無傷で倒せるので、ご期待に添えると良いのですが」
「いやあ、そんな実力がおありならこの王都でも十分にやっていけますよ。詳しくは依頼票を見て頂きたいのですが、ここのところ、大森林どころか大草原にもゴブリンやオーガが出てくる始末でして……貴方のような実力者が増えてくれるなら心強いです。因みに、貴方の種族ですが、もしかすると……」
「お察しの通りかどうかは分かりませんが、半吸血鬼です。ちょっと見苦しいのでこのように目隠ししておりますが……」
俺はそう言うと少し目隠しをずらして、赤い瞳と縦に割れた瞳孔を受付窓口の人に示して見せた。
以前に城塞都市で受けた迫害じみた事はもう勘弁願いたいので、彼女に自分の正体をバラして様子を見てみようと思ったのだが、彼女は人間離れした俺の瞳になにも驚くことなく接してくれた。
「なるほど、ダンピールなんですね。そうであればゴブリンやオーガの討伐も問題ないと言うのは納得です。どうか明日から頑張ってください」
「……驚かないんですね。元居た城塞都市では少しごたごたがあったものですから……」
「あはは。ご存知の通り、この王都は色々な種族が集う場所ですから……人種差別なんてものは表向き存在しません。しかし、気を付けてくださいね。表向きはありませんが、裏では種族ごとに格付けみたいなものがありまして……ダンピールはその中でも微妙な立場にあります。能力としては強者の部類なのですが、魔族に近い種族ですので……ご自身がダンピールであることはあまり言い触らさない方がよいでしょうね」
なるほどな。本音と建て前はどこも同じか。
しかし、建前があるだけマシともいえる。表向き迫害が無いと言うのなら問題ない。裏で難癖を付けられたら実力で以って分からせれば良いだけだし。
「どうも、挨拶だけと言うのに長居して済みませんでした。明日からよろしくお願い致します」
「いえいえ、貴方のような礼儀正しい方であればいつでも歓迎しますよ。明日からのお仕事、頑張ってください」
そんな訳で、俺は王都でやっていける確かな感触を得て、ギルドを後にするのだった。
評価等頂ければ幸いです。




