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24話 ランクアップ


 小川に着くと、俺は下着一丁となって返り血の付いた服をじゃぶじゃぶと水に漬けて洗った。


 下流で水を使っている連中には悪いが、血がべっとりと付いていて気持ち悪いのだからしょうがない。青色の水と血の色が混ざり合って紫色になった水の色がなんとも不気味である。まあ、これを見て飲もうとするヤツはいないだろう。


 そんなどうでもよいことを考えながら、自身の能力について反芻する。


 身体能力は、凄すぎて測れないと言うのが正直なところだろう。筋肉ダルマのオーガの足を蹴りで消し飛ばすとか、心臓を貫手の一撃で抉るとか、底が知れない。この細い身体のどこにそんな力が宿っているのか、自分でも不思議に思うくらいだ。


 あとはやはり、この視線を媒介しての魔法じみた力か……。


 俺は目隠しをずらすと、適当な場所へ向けて『燃えろ』と念じてみる。すると、真っ赤な火炎が立ち上がり、辺りを赤く染めた。そして今度は逆に『消えろ』と念じるとすぐに炎は消え去った。


 火遁の術……というには派手過ぎるな。


 火遁の術は遁術の一種で、火で以って相手の注意を引き付けている間に逃げたり隠れたりする術だ。いわば逃走用の術であって相手を死に至らしめる術ではない。


 区別するために『業火の術』とでも名付けるか……。


 俺のこの魔法じみた力は相手を十分に死に追いやる力を秘めている。先ほどはゴブリンだけに試したが、もしかしたらオーガにも利くかもしれない。


 視線を確保しなければいけないという条件はあるが、正直、無敵に近い能力だと思う。このエネルギーは何処から来ているのやら……。


 そういえば……炎以外にも、水や風を操る事は出来ないだろうか? 今まで試していなかったが、この際、試しておくのもありだろう。



 結論から言うと、炎以外にも水、風、土を操る事ができた。


 水は拳大の水塊となって飛んで行って岩を穿つ威力を見せたし、風はカマイタチの如く岩を真っ二つにする力を見せた。土が一番わかりやすく、拳大の石くれが飛んで行って岩を砕く威力を見せた。


 どうやら少なくとも『地水火風』の四元素の力を操れることが出来るらしい。


 ダンピールにこんな力があるとは初耳なのだが……実際に出来るのだから、大いに活用すべきだろう。今日の夜にはリビングデッドとの戦闘が待っているだろうから、持てる武器が多いことに越したことはない。


 さて……そうやって瞳力?を試している内に、洗濯した服が乾いたようである。


 よくよく考えれば真っ裸で陽の光を浴びるとか、流石にやりすぎだったかもしれない。灰になるということはないが、曇り空だと言うのに日焼けしてヒリヒリと肌が痛い。


 俺は手早く服を着ると、荷物をまとめて町の方へと歩き出した。




---



 

「ほう、コレは凄い! 二角熊の角は昨日も収めて頂きましたが、ゴブリンに、オーガの角まで収めて頂けるとは……流石にコレが出来る方を『F』に留めておく理由はありませんな。今からあなたのランクを『E』へ上げさせて頂きます」

「はい……それは見習い卒業と言う意味で?」

「そうですね。これで今日からあなたはギルドの正式な一員として見なされる事となります。期待しておりますよ」

「それはどうも、ありがとうございます」



 俺は討伐依頼の報奨金と共に、『F』から『E』へと表示が変わったタグを受け取った。どうやらこの印が一人前と言う証らしい。


 まあ、社会的な地位がランクアップすると言うのなら謹んで受け取っておこう。


 俺が新たにEのタグを首から掛けると、それについて目聡く見つけるものがいた。いつものハーフエルフ兄妹である。どうやら彼らも狩りから戻ってきたようだ。



「あー、アンタ何様のつもりだよっ、こっちが苦労して獲物を狩って貢献しているってのに、そんな私達を置いて、もうランクアップとか馬鹿にしているのか!? あ?」

「アリア! 流石にそれは言いがかりだよ。ゴメンね、ゲンヤ。今日も二角熊に襲われている所を助けてもらったのに難癖付けちゃって……けど、凄いね。登録から二日目でランクアップって、レコードじゃないかな? いや、君の実力を疑う理由はないけど、どうやったらそんなに早くランクアップしたか教えてくれると嬉しいかな……そうじゃないとアリアが納得しなさそうで、ね」

「うん、いやまあ、別にいいが……」



 俺は今にも噛みついて来そうなアリアと、それを羽交い絞めにして抑えるナイブズに対して、森の中でゴブリンとオーガを討伐した事を教えてやった。それで、その討伐部位をギルドに納めたら、ランクアップしたという事も。



「マジかよ! あの後、本気で森の中に入って行ったのか? そんでもってオーガを一人で倒したァ!? 嘘だろう。あれって、中堅どころの冒険者が数人のパーティを組んで何とか倒すことができる化け物だぞ。幾らお前が……」

「す、すごいね。流石は魔王の……ッ、ゴホン。いや、怪力を誇るゲンヤだけあるよ!」



 なにやら不穏な事を口走りそうになっていたハーフエルフ兄妹に対し、ボキリと指関節を鳴らして睨みつけると、青くなって黙ってくれた。


 まったく……いらない情報を漏らして身バレするとか冗談じゃないんだからな。気を付けて欲しいものだ。


 俺は彼らに軽く手を振ると、宿へと戻るのだった。


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