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22話 ゴブリン


 森の中に入ると、まず感じるのは湿気だ。森が蓄えているであろう高密度の酸素と青臭い匂いが俺を歓迎してくれる。ここはヒトの領域ではないと。早く出て行かなければ命を失う事になると警告してくれているようでもある。


 俺は半吸血鬼ダンピールに備わっている、探知能力を使ってみた。近くには動物の反応はないようであるが、1~2km先に複数の生命反応がある。


 もう少し精度を上げてみると、どうやら二角熊よりも生命力?が大きい。どうやら、これが小鬼ゴブリン大鬼オーガの反応らしかった。


 ただ、新規に得た能力を頼って危機を招いたらシノビ失格なので、既存の探索技も使ってみる事にする。


 俺はその場で柏手を一つ行った。


 シンとした静寂な森に『パンッ』という音が響き渡る。それから帰って来る反響音から鑑みるに……近くにいるのは小動物だけか。魔獣のような凶悪な動物は居ないらしい。


 ――これは柏手を利用したアクティブソナーのようなもので、半径50m以内にいる動物であれば全て探知できるという、シノビの技である。


 どうやら、半吸血鬼になった事で得た探知能力の精度は高いようで、これからは、この感覚を頼りに狩りをすることになるだろう。


 俺は風向きを気にしながら、探知能力で感じた生命反応の方へ近寄って行った。



 足音を消しつつ森の中を進む事、約十分……俺は茂みの陰から覗き込んで、小鬼ゴブリン数匹を発見していた。


 小鬼とはいうが、その背丈は大人程もあって、手にはこん棒らしき武器も持っている。外見はサルとオラウータンを混ぜて割ったようなもので、げしゃげしゃと笑っている様は高い知性を感じられない。その躰は隆々とした筋肉に覆われており、なるほど、二角熊より脅威度が上と言うのも頷ける。あとは……鬼らしく頭に角があるのが特徴と言えば特徴か。


 そのゴブリンたちであるが、どうやら捕まえた一角兎を叩き殺した上で生で貪っているらしく、口の周りが真っ赤に染まっていた。


 この森の中では一角兎が生態の最下層にいるらしいな……って、ことはどうでもいいか。とにかく、連中が食事に夢中になっているのなら、遠くから攻撃して数を減らしてやろう。


 俺は拾っておいた拳大の石を振りかぶると、ゴブリンの頭へ目掛けて投擲した。


 投擲した石は狙い通りに飛び、ゴブリンの頭を砕いて血の花を咲かせた。崩れ落ちる仲間のゴブリンに驚き、げしゃげしゃと変な鳴き声を上げているが、俺の存在にはまだ気づいていないようである。


 続く第二投も同じく頭を砕いて血の花を咲かせ……どうやらそこで最後の一匹が俺の存在に気付いたようである。こん棒を振りかぶって俺の方に投げて来たが、それを何とか避ける。


 たまらず俺は茂みの中から躍り出て残ったゴブリンと対峙した。身体能力を試すには理想的な状況だ。


 仲間を殺されたゴブリンは怒っているらしく、己を鼓舞するかの如く咆哮する。いや、コレはもしかしたら仲間を呼んでいるのか?


 俺の探知能力で探知した500m圏内の生命反応が急激に此方へ向かって来るのが分かった。


 これは短期決戦が必要だな。


 そう思っていると、残ったゴブリンは仲間の死体を引っ掴んで投げて来た。


 死んだとなれば仲間の遺体も利用するのかよ!


 一瞬呆気に取られた俺であるが、身を屈めてギリギリで回避する。そこへ、これまた仲間の体を武器として叩きつけようとしてきたゴブリンに対し、俺は両指から指弾を発射して目に命中させた。


 仲間の死体を放り出して両目を抑えるゴブリンであったが、それは大きな隙だ。


 俺は左手で手刀を作ると、いまだ両目を抑えているゴブリンの首に向かって打ち込んだ。


 ぼきゃ、という音を立ててゴブリンの首が折れ曲がる。


 ……よし、この場にいたゴブリンは全て片付ける事ができた。単体としては武器を使う分、二角熊より少し強い程度であったが、群れると厄介な事になりそうだ。


 現に今もゴブリンと思わしき生体反応が近寄りつつある。先ほどの咆哮で呼んだ仲間だろう。


 数は1、2、……6匹ほどか。


 同時に相手をするには心もとない数だ。もう少し戦いに慣れたら行けるとは思うが、今は自身の能力を把握するのが先だ。ここは一つ、木登りの術で身を隠させて貰おうか。


 俺は近くに生えていた太い木に手を掛けると、スルスルと木を登って行く。


 するとその十数秒後、小鬼ゴブリン5匹の他に、大鬼オーガと思しき巨体を持つ鬼が現れた。


 オーガはゴブリンを3回りほどデカくした巨躯で、筋肉も凄まじく盛り上がっている。まさしく大鬼と呼ぶにふさわしい体躯をしていた。ぶっちゃけ、ゴリラの二倍ほどの巨躯を想像して貰えばいいだろう。


 あんなのに殴られたら、一発でやられるだろうな……。


 俺は戦々恐々としながらも、小鬼ゴブリン大鬼オーガの群れを、さてどうして倒したものかと木の上から眺め続けた。

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