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15話 ジビエ


 結果から言えば、午前中に4羽を狩る事が出来た。大体30分に一羽を狩った計算だ。大草原における一角兎の分布数からしてこの数は結構なものになる。少なくとも彼らに負けていると言う事はないだろう。


 さて、そんな彼らはどんな感じだろうか? 俺の探知能力を使って様子を探ってみる事にする。


 すると……なんだ? 何かに追われているような……彼ら二人の反応と、それを追う大きな反応が感じられた。


 これは助けに行った方が良いだろうな。ギルド員は相互扶助が推奨されているし、俺個人としても彼らを失うのは辛く感じる。


 もし大型魔獣に遭遇したとしても撃退できるように、大きめの石を拾った上で救援に向かう事にした。


 そして、しばらく彼らの方へ走って行くと、前方から大きな土煙が見えて来た。前の方にいるアリアがなにやら必死になって叫んでいる。



「おおい、逃げろ! 熊だ、二角熊が出やがった! 私達の敵う相手じゃないっ、早く逃げないと喰われちまうぞ!」



 そう言われて彼女らの後方を見れば、コメカミあたりからシカのような角を生やした熊が、二足歩行でのっしのっしと余裕のある歩行速度でハーフエルフ兄妹を追っていた。


 その表情は弱い者をいたぶる邪悪な欲望に染まっており、コイツとは分かり合えないと言う事が良く分かった。


 であるならば、攻撃することに躊躇はない。俺は手にした大きめの石を振りかぶると、角の生えた熊に投げつけた。


 人が持つ攻撃力の中で何が最も強いかと言われたら、即座に『投擲』と答えるだろう。遠くから一方的に攻撃できる上に、その威力は骨折を招くほどだ。更に俺の場合、そこへ半吸血鬼としての力が加わっている。


 そんな俺が石を全力投擲した場合、どういった威力が出るかというと――『キュンッ』という空気を切り裂く音を立てて石が飛び……その直線上にあった二角熊の胴体を易々と貫いた。


 直径5cmほどの大きな穴が開いて、そこからはだくだくと血が流れ落ちる。


 二角熊は一瞬、自分の身に何が起きているか分からないようであったが、痛みを自覚したのか悲痛な叫び声を上げた。その場で踵を返して逃げようとしたが、人を襲うような魔獣を放って置く訳にはいかない。


 俺は俺は再び石を振りかぶると第二投を行った。今度は頭に直撃し、鈍い音を立てて頭蓋骨が砕けて脳がまろび出る。


 今度こそ致命傷となったようで、二角熊は数歩歩いた後、大きな音を立てて倒れ込んだ。



「た、助かったのか……?」

「信じがたいことだけど……君が、石を投げて撃ち殺したって事でいいのかな?」

「まあな……こうもうまく行くとは思わなかったが」



 ハーフエルフの兄妹は追われていた時に大分恐怖を味わったのか、俺の服を掴んで離さない。しかし、いつまでもそうやっている訳にもいかないだろう。


 俺の服を掴ませたまま、二角熊が確実に死んでいるかの確認を行った。


 死因は腹部裂傷による出血多量と、頭部破損によるショック死だな。特に頭部の破損は酷く、自分でやっといてなんだが、かなりグロイ。ちょっと口を抑えたくなるほどだ。


 しかし、件のハーフエルフ兄妹はそんな俺に構わず、完全に死んでいる事が分かった途端、即、解体作業に入った。近くにあった太い木に熊の巨体を吊るして、スルスルと皮を剥いでいく。



「なに、ぼーっと見てるんだよ、アンタが仕留めた熊だろ。解体するの、手伝ってよ」

「あ、ああ、すまない。俺、熊を解体するのは初めてでな、今回は見学って事にさせて貰いたいんだが……」

「別にイイケド、それなら半分以上、貰っちゃうからな? 後で文句を言うなよ」

「……妹が生意気ですみません。けれど、解体が出来ないというのであれば、それなりの量を僕たちが頂くことになりますよ?」

「まあ、別にいいよ。この熊は完全に想定外の産物だから……それにしても凄いな。君たちは熊の解体の仕方も習得しているのか」

「まあね。故郷じゃ、大人たちの狩った熊を練習台として随分と解体したモノだよ」



 そう言って、ハーフエルフ兄妹はモノの十分ほどで全て熊の解体を終わらせた。皮と肉と内臓と骨とが綺麗に捌かれて、木に吊られている。



「さてと。じゃあ、ちょっと遅くなったけど昼飯にしようか。熊の肉って癖があると思われがちだけど、新鮮で処理をきちんとすればとても美味しい肉なんだ。勿論、ちゃんと火を通すことが前提だけどね。ゲンヤさん、焚き木の準備をしてくれるかな? 僕たちは肉を食べやすいように切ったり、下味をつける準備をしておくから」

「ああ、わかった……」



 何というか、さっきまでその熊に追われて泣きそうになっていたようには全く見えない。一人前のジビエ料理人の顔をしている。


 随分と逞しいものだなと思いつつ、俺はナイブズに言われた通り、石を積んで竈を作り、その辺に落ちていた木の枝を集めて焚き木の準備を行った。



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