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14話 狩り


 さて、勝負となった以上、手を抜く訳にはいかない。


 本当なら2~3匹の一角兎を狩って、午後は図書館で過ごそうと思っていたのだけれども、貴重な現地の話を聞く機会だ。必ず勝ってあの二人の信頼を得ねば。


 俺はギルドから出ると、駆け足で北の正門へと向かう。そして、門番に割符を見せて外出許可を得た後、大草原へと繰り出した。


 件のハーフエルフ兄妹はどうかと言うと、俺の後を生き絶え絶えで追って来て、今も後ろで荒い息を吐いている。どうやら体力としては最低限のモノしかないようで、これで一角兎を相手にするなんて本当に大丈夫かと心配になってくる。



「な、なあ、そんなんで本当に大丈夫か? 狩りって結構、体力を使うぞ。そんなんじゃ、疲れた所を一角兎に串刺しにされる……そんな未来しか見えないが」

「ばっか、いうんじゃねぇ……いきなり、全力、疾走を……かましやがって! ちょっと休んだらすぐに回復するよ。私たちに構わず、お前は狩りに行け」

「こう見えて、故郷の村じゃ、一角兎を狩って生計を立てていたんです。心配には当たりませんよ」

「そ、そうか……」



 今の様子からすると、とてもそうは見えないが、彼らが自信満々に言うのなら大丈夫と言う事にしておこう。過度な心配は侮辱になる。



「じゃあ、今から勝負って事でいいな?」

「おう、いいぜ。泣き面かかせてやるからな、覚えてろ!」



 ううむ、なんだかレッサーパンダが必死に威嚇しているようで、凄く可愛く感じてしまう。俺がもし家庭を持っていたらこのくらいの娘か息子が居た筈で……これが子を持つ親の気分なのかもと思い、ちょっと変な感傷を感じてしまった。


 そんな俺にハーフエルフの兄妹は変なモノを見るような表情をしつつ、駆け足で東の方へ向かって行った。彼らが東に向かうと言うのなら、俺は西へ向かうべきだろう。俺も駆け足で獲物が居るだろう草原へと向かった。



 因みに件の一角兎であるが、野生動物とは狩りの方法が全く異なる。


 野生動物は臆病な生き物で、人の気配を感じるや身を隠してやり過ごす。そんなだから、例えば、獣道や巣を見つける、追い込む、捕える……という幾つかの工程を経る必要がある。


 しかし、一角兎は魔獣であり、あっちの方から人に近寄って喰らわんと襲って来る。だから、己を囮として適当に動き回って釣りだすという事を行うのだ。


 あの兄妹の装備品から想像するに、兄の方が囮となって一角兎を釣り出し、妹の方が弓を使って獲物を仕留めるという役割分担なのだろうと思われる。実に合理的だ。


 ひるがえって俺はどうかと言うと……これはちょっとズルになるのだが、俺には女吸血鬼から受け継いだ探知能力というヤツがある。周囲10km以内であれば、獲物が何処にいるか分かるのだ。


 これを使えば、自らが囮になるような危ない真似をする必要は無いし、一角兎の攻撃が此方に届かない遠くから一方的に攻撃することができる。


 ただ、俺が半吸血鬼の力を使ってこのシャベルを投げたなら、角も含めて肉体が木っ端みじんになる可能性が大だ。それでは狩りではなくて単なる殺戮となってしまう。ここは一つ、その辺に落ちている小石を使ってみる事にした。


 まずはちょっと練習してみるか。アレを使うのは久しぶりだからな……。


 俺は落ちていた小石を拾うと視界の端にあった岩に向けて、指弾の要領で小石を打ち出した。すると、小石は凄まじい勢いで飛び、岩に結構な深さで刺さった。


 まるでライフル弾のような威力であり、自分で成した事なのに引いてしまった。


 ……ま、まあ、この威力なら問題なく一角兎を仕留める事ができるだろう。問題は命中率だな。


 俺は幾度か指弾を試して命中率に自信を持つと、一角兎を狩るために動き出した。



 さてと、まずは一匹目だな。


 気配察知で捉えた一角兎は、相変わらず穴を掘ってミミズを捕食しているようだった。距離としては約20mほどで、これ以上近づいたら問答無用で襲ってきそうだ。その証拠に、いらだたし気に後ろ足を地面に打ち付けてこちらを見ている。


 俺は両手の指に小石を構えると、まずは左の指弾を発射した。


 打ち出された小石はまっすぐに飛び……そのまま、一角兎の胴体を貫通した。小さな悲鳴を上げてその場に倒れ込む一角兎。


 しかし、これで油断は出来ない。魔獣の生命力は野生動物とは比較にならないと資料にあった。前回は首を撥ねて倒したから致命傷となったが、ここは念のためにもう一撃加えておこう。


 俺は息も絶え絶えな一角兎に対して、右の指弾を発射する。こちらも狙い通りに飛んで、再び胴体を貫通する。


 これには一角兎も参ったようで、少し痙攣をした後、完全に動かなくなった。


 よし。問題なく倒せたようでホッとする。この調子で狩って行けば彼らに勝てるだろう。よしんば勝てなくとも無様な恰好を見せることは無い。


 俺は討伐部位である角を斬り取ると、再び気配探知能力を使って他の一角兎の居場所を探知し、狩りに向けて動き出した。


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