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13話 勝負


 まずは『調達』の掲示板に貼られている薬草採取関連の依頼票を見てみる。


 なになに……『マンドラゴラの採取、一株から』? って、いきなり難易度激高だな! これってあれだろ、引き抜いたら死の絶叫を周囲に響かせるわ、なんとか無事に引き抜いても自走して逃げるってヤツだろ! 俺はそれほどファンタジーに知識はないがこれは流石に有名で危険すぎる。コイツはパスだな。


 えーとその他には……『トリカブトの採取、5株から』だって? ……トリカブトって普通に毒草だが、コレは良いのだろうか? いや、上の草部分は確かに毒なのだが、実は根っこの一部は漢方薬として用いられている。これは、根ごと持って来いという依頼なのだろう。


 実を言うと俺が毎回の食事に微量に混ぜている毒物について、コイツも含まれる。コレの採取はいつもやっているし、常設依頼として出ているようだから探しておこう。


 他に目ぼしいモノは……どうやらなさそうだ。次に『戦闘』の掲示板に貼られている魔獣駆除関連の依頼票を見てみよう。


 えーと、『大草原に住む一角兎の駆除』か。どうやら、あの肉食兎は人に害成す魔獣らしく、見つけたら可能な限り間引くように依頼が出されている。


 まぁ、アレと出会ったときはやたら殺意が強かったもんな。あの調子で襲われたら一般人は生きた心地がしないだろう。


 被害件数もそれなりにあるようだし、襲われているのは旅人や行商人か……下手をすれば俺もその被害者に加わっていたところだ。ま、しかし、一度相対してアイツの対処方法はわかった。これも常設依頼として出ているようだから請けておこう。


 さて、その他の常設依頼としては、大森林における『小鬼ゴブリンの駆除』、『豚鬼オークの駆除』、『大鬼オーガの駆除』とある。


 大森林てのはあれだよな、俺が女吸血鬼に噛まれた場所だろう。流石にもう一度あの場所へ行こうという気にはならない。もし、見つかったら八つ裂きにされること間違いないだろう。


 しかしどういう事だ。てっきりあの大森林は彼女の領域テリトリーだと思い、それこそ禁足地扱いされていると考えていたんだが……あの場所について魔獣の駆除があるということは、あそこもヒトの生活圏ということだろうか? うーむ、詳しい情報が欲しいな。


 ま、何にしてもゴブリン、オーク、オーガと戦力の分からない魔物を相手にする訳にはいかない。此処は一つ、あの大草原で一角兎を狩りつつ、図書館でこれらの魔物について調べる事にしよう。


 俺は他に目ぼしい依頼票がないか確認した後、その場を離れようとした。しかし、そんな俺に話しかける者がいた。



「あの、貴方、新人さんですよね。僕たちも新人なんです。どうでしょう、僕たちと一緒に依頼を請けませんか?」

「えー、本気かよ、兄貴。どう見ても胡散臭い恰好をしてるし、武器も持ってないじゃん。こんなのと一緒に依頼を請けようなんてありえないぞ」

「こらっ、失礼だよ、アリア!」



 話しかけて来たのは、どうやらハーフエルフの双子の男女らしかった。外見年齢は俺と同じくらいで、男の方がショートソードを、女の方が弓を持っている。いずれも細身で美しい顔立ちをしており、男の方も黙っていれば女と見間違えるような外見をしている。


 そんな二人が、男の方が不安そうに、女の方が胡散臭そうに俺を見ている。



「ああ、確かに俺は新人だよ。名前はクドウ・ゲンヤ。ゲンヤでいい。君たちの名前は?」

「僕はナイブズ、そして、妹がアリアっていうんだ。よろしく」

「えーとそれで、俺と一緒に依頼を請けたいって事でいいんだろうか?」

「いいや、まだそうと決めたわけじゃない。武器も持っていないし、その胡散臭い目隠しは何だよ? それが何か教えてくれるまで私は組む気はないぞ」



 うーむ……なにやら、一緒に依頼を請ける前提で話が進んでいるんだが、いつの間にそういう事になったのだろう。ここは断ってもいいのだけれども、情報を得るには現地人と話すのが一番だ。


 どちらも悪人、というほどには悪い子のようには見えないし、一時であれば組むのも悪いことではないだろう。そうと決めれば俺の(嘘の)事情を話さないとな。



「俺のこの目隠しは、昔に負った傷を隠すものだ。見苦しくてね、こうやって布を巻いている。ああ、これでも視界は良好だから問題ないよ。それと武器だけど俺のはこれだな」



 そう言って懐から収納式シャベルを取り出すと、素早く展開して見せる。主に土を掘るもので、本来は武器とは言えないモノであるが、使おうと思えば短い槍としても投げ槍としても使える。


 本当なら、彼らのように武器を用意すべきなのだろうが、何せカネがない。それでも大草原の一角兎くらいなら何とか出来た実績があるので、文句を言われる筋合いはないだろう。


 しかし、件の妹さんについては不評のようだ。



「目隠しの件は分かった、無粋な事を聞いてゴメン。だけど、武器がシャベルってのはいただけないぞ、その関節部とか凄く脆そうじゃないか。そんなんで魔獣や魔物と戦う気か?」

「まあ、そうだけど」

「じゃあ、やっぱり組むのは無理だ。どうしても私達と組みたいなら、今日、一角兎を私達以上に倒してみろ。そうしたら考えてやる」

「……」



 何というか高圧的な子だ。後ろの方で、必死にゴメンなさいのポーズを取っている兄貴が哀れに見える。


 普通の十八歳だったらここで腹を立ててこの場を去るだろう。しかし、こちらの中身は世間の荒波を生き延びて来た四十三歳のおっさんである。


 必死にイニシアチブを取ろうと高圧的に出ているのが見え見えで、逆に可愛く見えてしまう。ここは挑発に乗ってやろうじゃないか。



「分かったよ。俺も単に一角兎の駆除じゃ物足りないと思っていたところだ。どちらが多く一角兎を狩れるか勝負するのというのなら面白い」

「へぇ~、いうじゃないか。じゃあ、今日、この時から夕暮れの正門が閉まるまで、どちらが多くのの一角兎を狩れるか勝負だ!」



 そんな訳で、唐突ではあるが狩りの勝負が始まった。


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