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12話 面談


 まずは名前だな。クドウ・ゲンヤと本名を記載する。


 無論、現地語だ。アルファベットに近い文字で、慣れれば書くのにそう難しくはないが、女吸血鬼からの知識遺伝が無ければ四苦八苦していただろう。この辺は感謝しかない。


 次に年齢か……こればっかりは元の年齢を書く訳にはいかないだろう。実年齢の四十三歳と肉体年齢の乖離がでかすぎる。ここは肉体年齢に合わせて十八歳と書いておくことにする。


 さてと、一番の問題は、特技と何がしたいかかな……。


 記載する紙にはあらかじめ、清掃、配達、戦闘、護衛、調査、調達、探索、その他諸々が記載されており、それに丸をする形式となっている。


 俺が現代日本で日常的に行っていたのは『調査』と『探索』だ。


 浮気調査、素行調査、行方不明者の探索……と、思い出すのも嫌な日々がグルグルと頭を巡る。安定的に収入を得るならそれらに丸を付けるべきなのだろうが、俺はもう二度とあの灰色の日々に戻りたくはない。それに、人の醜い部分を見せられ続けた所為か、ちょっと人間不信になっている気がする。


 ここは一つ、あまり人間に関わらない仕事を受けて、リハビリをしたいと思う。


 そうなると、考えられるのは『戦闘』と『調達』か。


 元よりシノビとして戦闘訓練は行っているし、半吸血鬼となったことで大幅に身体能力が向上している。実際にあの凶悪な一角兎を倒せたし、魔獣の駆除をするのに問題となる事はないだろう。


 あと、薬草や毒草、キノコ類を調達するのはお手のモノだ。それこそ調査以上に日常的にやっていた事だしな……かの植物にはなんど餓死を救われたかわからない。やりすぎて土地の所有者に目を付けられて、最近はあまり出来ていなかったが……それで、勘が鈍っているということはない。


 よし。『戦闘』と『調達』に丸をつけて、やりたいことに『魔獣の駆除』と『薬草類の調達』と記載する。


 俺は記載が終わった紙をボードと共に受付の人に提出した。



「はい、ありがとうございます。フムフム、やりたいことは魔獣の駆除と薬草類の調達ですか……前者はともかく、後者は専門的な知識が必要ですが大丈夫ですかね?」

「まあ、故郷の方で嫌と言うほどやっていましたから……よほど特殊なヤツじゃないかぎり、大丈夫だとは思います。特殊なヤツも図書館で勉強して採取できるようにしますので、まあなんとか」

「ほう、それは心強いですね。ちなみに、倒した魔獣の引き取りも此処ではやっています。ああ、勿論、裏の別受付でですが。魔獣を倒されたら放置せずに持ってくることをお勧めしますよ」

「へぇ、あんなのがお金になるんですか……すると、例えばこんなのも引き取っていたりします?」



 俺は懐から先日倒した一角兎の角を取り出した。あの戦闘の後で切り取っておいたものだ。大体の生物の角は薬の原料となったり、インテリアとなったり需要がそれなりにある。


 飯のタネになるかと思い、一応取っておいたのだが……。



「ほう! それは一角兎の角ですね。何処も欠けてもいないですし、大きさも問題ない。裏に持っていけばそれなりの金額になりますよ」

「は、はぁ、因みにいかほどになりますかね……」

「少なくとも三千オンスにはなるかと、これは大きいですから五千オンスになるかもしれません」

「なるほど……」



 あの凶悪な一角兎との死闘の代金が五千オンスとは、随分と安いものだと一瞬思ったが、角単体の代金としたら高い方かと思い直した。実際にはこれに駆除の手当てがつくだろうし、1日、2~3匹も狩れば糊口を凌ぐには事足りるだろう。


 さらに言えば、俺には半吸血鬼となった事で得た探知能力があるので、獲物を探す事に困らない。



「狩りをする能力も問題ないようですね……それでは、クドウ・ゲンヤさん。貴方をギルドの構成員として登録します。これは登録員としての証です。なくさないようにしてください」

「はい。因みにこのタグに書かれた『F』という名の記号ですが……」

「ああ、それは『見習い』という意味の記号です。何度か依頼を成功させて、認められたら若い方に記号が繰り上がって行くというシステムでして、皆、最初はFから始まるんですよ。『C』以上ともなればそれなりの優遇措置がギルドから与えられます」

「ははぁ、良く分かりました」



 つまりは実績と信頼を積み重ねて成りあがって行くシステムなのだろう。元いた社会の昇進と同じだな。



「さて、それでは他に何か質問はありませんか? なければこれで受付を終わりにしたいと思いますが……ああ、そうだった。大切な事を言い忘れてました。仕事はそこの掲示板にある依頼票を見てください。そして自分に合った依頼票を見つけたら此処に持って来て受付を済ませたら仕事開始となります。因みに、薬草採取の依頼は常時依頼なので、わざわざ受付する必要はありませんよ。一角兎の駆除もそうです。少量であれば裏でなく、此方でも引き取りを行っておりますので、持ってきてください」

「良く分かりました。ありがとうございます」



 そんな訳で、俺はギルドの構成員と相成った。さて……それでは、どんな仕事があるかまずは確認してみるか。


 俺は『調達』、そして、『戦闘』と表示されている掲示板の方へ歩み寄って行った。


 

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