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側妃の企み

「母上、これで私が無事王太子になることが出来そうですね」


「そうね、これでシグウェル様の協力も得られた。後は即位三十周年記念のパーティーを待つだけね」


 アイナ・オーランドは息子でありオーランド王国第二王子でもあるヨグウェルと後宮にある自室で会っていた。


「ようやく、本当にようやくです! この国はようやく本当に王たるべき者にその座を与える事が出来たのです。むしろまだ待たなければいけないというのが残念でなりません」


「あなたがそう思うのも仕方無いわ。あの子のせいで随分と時間がかかってしまったものね。けどそれももうすぐ終わりだわ」


 アイナは国王であるシグウェルの側妃であり、第二王子であるヨグウェルの母親である。

 実家であるローウェル家は侯爵の爵位を有する有力貴族で長年オーランド王国の中心として国政に参加しており、 ある時はライバルとなりうる貴族の排除のために非道な手段を用いたり、調略により没落しかけた下級貴族を傘下として国内での地位を固めていた。

 その一環として、当時のローウェル家当主は優れた美貌を有するアイナを気に入ったシグウェルにアイナを輿入れされることで王家に対する影響力も高めようとした。

 アイナもシグウェルに特別な感情を持っていたわけではなく側妃という立場に不満もあったが、自身が侯爵より上となる王族の一員となることには満足していたので輿入れが成立した。

 王族というこの国で一番権威ある地位を得ることが出来た上、望めば大抵のことを実現させることが出来るということにも満足していた。

 そして自身の息子が王位継承権を持つということにも満足しており、アイナ自身順風満帆な人生だと思っていた。


 「あの子のせいで狂い始めたものがようやく元に戻り始めた。 まったく、こんなにも私の手を煩わせるなんて……」


 アイナの順風満帆だと思っていた人生は、ログウェルが国政へ参加するようになってから狂い始めた。

 ログウェルは国政に参加し始めてから目覚ましい成果を上げていき、その中で実家であるローウェル侯爵家の不正に気付いてしまったのだ。

 ローウェル家はどうにかログウェルを国政から排除して隠蔽しようと画策していたが、これまでの状況を嫌った貴族達がログウェルに味方してしまったことで不正が明らかになってしまい、ローウェル家は爵位剥奪の危機に陥ってしまった。

 正妃でありログウェルの母でもあるローナ・オーランドは既に亡くなっているため、アイナ自身国王の寵愛を一身に受けているという自覚があった。

 アイナはシグウェルに、ローウェル家はこれまでオーランド王国への多大な貢献があり、爵位剥奪はこれまでの国家への貢献を考えると重すぎるとして、実家であるローウェル家への処分を爵位剥奪から伯爵位への降爵で留めることに成功した。

 

 「けど手間をかけた分、私にとってもより好ましい結果を得ることが出来たわ」


 当初は国をより発展させて富ませてくれるログウェルは、アイナ自身もより良い人生を過ごしていくために役立つと考えていた。

 国が富めば富むほど王族としてより裕福な生活をすることが出来るし、周囲からも王族として敬ってもらうことが出来ると考えていた。

 しかし実家の降爵騒動をきっかけに、このままログウェルが国王として即位してしまっては自身の王族としての生活に支障が出るのではないかと考え始めた。

 何せログウェルは国の為だ民の為だといい、王族の特権を無くしたり予算を削減したりとアイナの考えていた王族としての生活を脅かしてくる。

 一時的なものかとも考えていたが元に戻る様子もなく、下々のものは徐々に富み始めているも王族は以前よりも質素な生活を強いられているとアイナは感じている。

 そのうえで実家が侯爵位から伯爵位へと降爵したせいで、実家からの援助も減り周囲からの評判も落ちている。


 「ヨグウェル、あなたが王太子となることでこの国はようやく正しい道を進むことが出来るようになるわ。 私の期待にちゃんと応えて頂戴ね」


 「もちろんです。 母上の期待に見事応えてみせますよ。 まずは奴のせいで国政の中枢に参加し始めた低俗なものどもの排除からでしょうか。 それとも……」


 ヨグウェルはまもなく手に入るであろう王太子としての身分と、そうなった自分がどう動くかを考え始めたようである。

 ヨグウェル自身、母親であるアイナや実家であるローウェル家の影響を色濃く受けている。

 ヨグウェルは身分が高ければ高いほど優秀であり、国政は王族や一部の高位貴族で行えばよいと考えている。

 そしてその対価として国政にかかわる者達は豪勢な暮らしを許され、その庇護下にいる民は身分の高い者の為に尽くすのが当たり前であるとも考えている。


 アイナとしては王族として贅沢に暮らせて、周囲からも敬われるのであれば民の暮らしがどうなろうと構わないと思っている。

 ヨグウェルが王太子になればきっと自身の願いを叶えること自体が容易になり、そしてその未来はもうすぐそこまで来ている。


「母上、私はこれからのことを考える必要があるのでそろそろ失礼します」


「そう、分かったわ。 ヨグウェル、くれぐれもパーティーまでは大人しくしているのよ」


「分かっておりますとも。 それでは失礼します、母上」


 部屋を出ていくヨグウェルを見つめながら、アイナは自身の望む未来がすぐそこまで来ており、これから来る希望に満ちた生活に思いを馳せるのであった。 


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