エピソード4と7/13:ホント、この手のネタ繰り返し擦るの好きだなこの作者は……
さて、前回から場面は変わり……
と言っても結局"かつて中華人民共和国と呼ばれていた土地"には変わりねーんだが、
ともあれエレノアとゲオルギイがアンクルサッカーを始末したのとは別の場所!
『俺は! 俺は"いて座"なんだああっ!
"いて座"! "頂点の"!"いて座"あああああっ!
俺はいて座生まれなんだあああああっ!
誰がなんと言おうと、常に頂点に君臨するべき存在なんだああああっ!』
黄金の鎧を纏うケンタウロス風の化け物が、
連射式クロスボウから光の矢を無差別に乱射し続ける!
『それなのに! それなのにそれなのにそれなのにいいいい!
どぉ~してあいつらがぁ!あのかに座やうお座の底辺どもが!
俺よりずっとずっとずっといい想いをしてるんだああああっ!
どころかどころかそれどころかっ!
この俺の評価は日に日に零落れどんどん不幸になるばかり!
どうしてだどうしてだどうしてだ!
なんでこうなるなぜこうなった!?
俺は! 俺は! 俺は!
俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺はあっ!
頂点に君臨するべき"いて座生まれ"なのにいっ!』
さて、妄言と光の矢をバラ撒くこのバカの名は『セイントアテナイト』……
お察しの通り令和神殿騎士団に在籍する怪人型ヴィランの一人だ。
頭ん中の成り立ちとヴィラン化の原因に関しては……
態々説明するまでもねーだろうが、
要するに"星座カースト制度"を妄信しきってるって感じだ。
加えて言うとこいつは
『自分の誕生星座であるいて座こそ十二星座不動のトップで、
それ以外は取るに足らない屑星』と信じて疑わず、
特にうお座生まれやかに座生まれについては
"人権や生きる価値すらねぇ最底辺"だと決め付けている……ばかりか
『十二星座不動のトップのいて座に産まれた自分は生来特別な存在で、
だから全自動で全て上手く行くはずだ。
なのにそうなってないどころか、
自分より格下の星座に産まれた奴らが成功してるなんて、
この世の中は間違ってる』とまで言っていた。
令和神殿騎士団への入団理由もまぁ要するに
"その辺"由来の逆恨みなわけだが……
『俺は〜セイントアテナイト〜!
アテナの聖騎士その頂点〜!
いて座生まれの一番星――
「待てーいっ!」
『グワアアアア!?』
そんなセイントアテナイトの蛮行は、
横合いからブチ込まれた砲撃でもって中断される!
……ま、喜ぶべきか悔やむべきか、
ヤツの甲冑は頑丈なもんで傷一つついちゃいなかったが……
『ぐ、く、くそっ……!
どこの、どいつだあっ!?
さては、かに座かうお座の――』
「喰らえーいっ!」
『グワアアアアア!?』
続け様に炸裂するまさかの"二発目"!
……然しやはり、セイントアテナイトは吹き飛びこそすれ目立った外傷は見られねえ!
「むう、やけにしぶといな。
だが負けんぞ!
我らコウエンジ一族、悪を前に後退の選択肢は持たぬ!」
声高に宣うのは、高台から周囲を見下ろすガラべーや姿の女!
カエルの彫像みてーな仮面で顔を隠したそいつの手元には、
回転式チャンバーによる連射機能を搭載した擲弾発射器……
言うまでもねーが、セイントアテナイトを砲撃したのもこの女に他ならねえ。
「その甲冑が如何に頑丈かは知らぬが、
我らコウエンジ一門の技術力を以てすれば、
貴様ごとき占星術に脳を支配されそこなった愚物如き――」
「コラ、ヘケトっ」
「あ痛あっ!?」
かくして尚も砲撃を続けようとしたカエル面の女"ヘケト"だったが、
背後からやってきた、
やはりガラベーヤ姿で羊の角と耳を持つ優男に後頭部をどつかれる。
「ぐうぅっ……! な、何をするフヌムっ!?
火器を構えて敵と戦っている仲間を、
いきなり背後からどつく奴があるかっ!
暴発したら危ないであろうがっ!」
「口答えするんじゃないっ。
ヘケト、君はもしかしなくたって
おやじさんから何を言われたかすっかり忘れてしまってるね?」
「……はあ? 何を言うかフヌム。
師父カズキからの指示だと?
そんなもの『街を荒らすヴィランどもを叩きのめせ』に――
「そうじゃ、ないだろっ」
「あ゛っ」
フヌムはヘケトの顔面を掴むや否や、
カエルを象った仮面を強引に引っぺがす。
ともすりゃヘケトの、浮世離れした端正で美しい素顔が露わになるワケだが……
「うっ、ぁぁっ……! やぁ……め……!」
さっきまでの強気ぶりは何処へやら……
同一人物かどうか疑わしいほどに態度が豹変しちまっていたんだ。
具体的には羞恥なんだか苦悶の表情っつーの?
目には涙まで浮かんでて、今にも泣き出しそうなぐれえの……
到底鉄火場で敵をブチのめすヒーローの姿とは言い難い有り様だった。
「お、おめ、ん……かえ、してえっ……」
「……やれやれ。指示を忘れたどころか予備の仮面も準備していないとはね。
いいかいヘケト、おやじさんは
『ヴィラン討伐序でに新装備のテストをしてこい』と言われたんだよ?
だってのに君は装備のテストどころか、
"装鋼"すらせず何をやってるんだい」
「う゛っ……あ……!
で、もっ……! でもおっ……!」
「でも……どうしたのかな、ヘケト。
言いたいことがあるならハッキリ言ったらいい」
「ぅっ、ぐううっ……!」
涙目になりながら、然しこれといって何をも言い返せねえヘケト。
果たしてなんだってこんなことになってんだっつーと……
「相変わらず顔を隠してなきゃまともに言葉も話せないなんて、
コウエンジ一門が誇る一流ヒーローが聞いて呆れる有様じゃないか」
このこれだ。
……さて、今更になっちまって恐縮だが説明させて頂こう。
今にもこの女……名をコウエンジ・ヘケトってんだが、
読者のみんなもお察しの通り防衛組織『甲鉄連合』に所属する強豪女ヒーローで
中でも十七ある門派の一つ"コウエンジ一門"でも首位に食い込む逸材……
なんだが、素の性格は極度のあがり症かつ小心者で、
顔が隠れてる状態ならどんな状況下だろうが怒涛の大物ムーブメントをかませる反面、
素顔じゃひたすら素の人格に引っ張られちまって
初歩的な舌戦すら満足にできなくなっちまうんだ。
加えて元来何事も大雑把に生きがちなモンだから、
所謂"報告・連絡・相談"の類も不得手だし、
今回みてえに組織からの連絡事項を失念してるなんてのも珍しくなかった。
(……本当に、戦場では誰より一流だってのになあ)
そしてそんな"武力一辺倒のポンコツ"たるヘケトを支えるのが、
相方で婚約者でもあるコウエンジ・フヌムだった。
この男もまたコウエンジ一門所属のヒーローで、
単純な戦闘能力こそ聊か控え目だがその分サポートやバックアップに回ると地味に強く、
頭もよく生活力もあるんでヘケトとは互いの欠点を補い合う関係にある。
……一連のやり取りも
――初見だとぎょっとするかもだが――
この二人にしてみりゃ日常会話みてえなもんで、
互いの深い信頼関係の為せるワザってヤツだったんだ。
「……しっかりしてくれないか、ヘケト。
君がそういうタイプなのは僕も知っているが、
僕だって四六時中常に君の傍に居られるわけじゃない。
他人を頼るなとは言わないから、
せめてもう少し戦闘以外のことも頑張って貰わないとね」
「……ごめん、フヌム……こんな、ダメな嫁で……」
「……いいさ。
自覚があって、謝罪できるのならね。
あとは二度と繰り返さないよう、
努力していけばそれでいい」
今にも泣きそうなヘケトを優しく宥めたフヌムは、
剝ぎ取ったマスクを返却……ヘケトの顔に宛がってやる。
「それと言っておくがヘケト、君はダメな嫁なんかじゃない。
まず何より君はコウエンジ一門、
ひいては『甲鉄連合』でも五指に入る偉大なヒーローだ」
「……ふん、そうだろう。そうだろうとも。
吾輩こそは『甲鉄連合』が世に誇るヒーロー『クインフィビアン』様だからな」
「そしてもう一つ補足しておくと、
君と僕はまだ婚約期間中であって籍は入れてないからね。
嫁を名乗るのは不適切だろう」
「……それは態々付け加える必要ないであろうがっ」
ともあれ、カップルヒーローはいよいよ変身の時を迎える!
「「装鋼!」」
そんなコードを唱えながら各々デバイスを起動すりゃ、
二人の美男美女は瞬く間にメカメカしい戦闘形態へと姿を変える。
『クインフィビアン!』
ヘケトは鮮やかな緑と金の豪華絢爛な装甲を纏う、
アカメアマガエル型の女人ロボ『クインフィビアン』に!
『アルガロンソート!』
そしてフヌムは全体的にフォーマルかつスタイリッシュに洗練された、
山岳大羊型の男人ロボ『アルガロンソート』に!
『我ら、青き星衛りし鋼の盾にして!』
『命脅かす悪を討つ鋼の矛も兼ねん!』
『『甲鉄連合コウエンジ一門! 大義に基づき爆裂参上!』』
華麗に名乗り上げるそのサマと来たら、
流石籍こそ入れてねえとはいえカップルなだけあってかなりサマになってやがる。
『ぐぬううえええああああっ!
ふざけやがって、このかに座うお座生まれどもがぁぁぁぁっ!』
ともすりゃセイントアテナイトはキレ散らかさずにいられねえワケだが……
『……お前は何を言っているんだ、
僕はしし座生まれだよ』
『そして吾輩はおとめ座生まれ!
貴様が見下すかに座生まれでもうお座生まれでもないわ!』
『なっ、なにいいいいぃっ!?
う、ウソだっ……! そんな、馬鹿なああっ!
認めんぞおおおおっ!』
知りたくなかった衝撃の(?)事実に、セイントアテナイトは軽く発狂!
かくしてここに、新たな激闘が幕を開ける!
※因みにヘケトとフヌムも実はタイセイと縁があって親友同士だったりするよ!




