エピソード3:そりゃどう足掻いてもオチは一緒なんじゃないですか? よく知りませんけど
『ひっ……ぐうっ……!
……こ……心得たっ……!』
場面は前回から引き続き廃工場……
ユウトの新技"クロスロードプラン"でもって究極の二択を強いられた
ブリカス荒らし崩れのキメラ怪人コロルミンチー……
命懸けの極限状態でヤツが導き出した"答え"はまさかの"服従"だったが……
『言えっ、キサマの"要求"をっぼろげえええあああっ!?』
『オイオイ間違えんなよ~。
"要求"じゃなくて"命令"だろぉ~?
劣等釣目黄肌猿に頭下げるのイヤでもさぁ~
だったらせめて「命令を寄越せ」ぐらい言えねえのかぁ~?』
尚もその事実を認めたくねえが為に
"命令"を"要求"と言い換えて電撃喰らったばかりか、
ユウトからも譲歩されちまってんだからいよいよ情けねえ。
『まあいいや。命令つったってそんな無理難題は吹っ掛けねえよ。
その辺やり過ぎっとスロベニア超常戦闘条約に引っ掛かるからな』
「プロデューサー、スロベニア超常戦闘条約って何すか?」
「あぁ、ヒーローの戦い方について定めた法律だよ。
ま、条文そのものがかなりフワっとしてるし
例外を認めるってケースばっかりだから殆どあってないようなもんだけどな」
『さて、それで肝心の命令だが……
ブリカス野郎、てめえはどこの所属だ?
誰の命令で何のために動いてる?
ここ最近日本はじめ東亜各所で発生してるキメラ怪人はてめえの身内か?
知ってること全部、洗いざらい正直に話せ。
少しでも妙な真似をしたらその瞬間、命令に背いたもんと見做す……』
『わ、わかったっ! 言うっ! 言うからっ!
命令になんて背かないから~~っ!』
なんとも情けねえ――エセ侍キャラですらなくなった――台詞と共に、
コロルミンチーは組織に関する情報をベラベラと暴露しやがった。
色々考えはあるだろうが、
少なくともこの手のシチュエーションじゃいよいよカッコ悪いことこの上ねえ。
『……なるほど分かった。
一連の言葉、ウソ偽りない真実だと信じよう』
『そ、そうだともっ!
オレは正直な男だウソは吐かないっ!
もう悪い事なんてしない真面目に生きるよ!
なあ頼むだから助けてくれっ!』
『……』
『アンタの命令にだって素直に従っただろ!?
約束したじゃないかよぉ!
命令に従えば助けてやるって!
オレはアンタの命令に従って全てを話した!
じゃあ今度はアンタがオレを見逃す番だろ!?
クロスロードプランってそういう技のハズだろ!?
オレが従うか逆らうかを選んで、
従えば生! 逆らえば死!
そういうルールの技なんだろアレって!?
だったらよ、早くこのトゲみたいなの取ってくれよっ!
なんで助かるって決まったのにこれがまだ外れてないんだよ!?
おかしいだろっ! おかしいだッボオオオオッゴオオオオオッ!?』
喚き散らすコロルミンチーの全身が、
三度青白い電撃に焼かれる。
……ヤツは気付いちゃいなかったんだ、
ユウトの仕掛けた非道が過ぎる罠ってヤツに。
『……よおブリカス、質問を質問で返すのもどうかと思うがよォ~
てめえさっきから何をギャアスカと喚いてやがんだ? え?』
『う、グウウッ……! なに、をっ……!?』
『だからさあ、俺がいつ「生かしてやる」なんて言ったんだってんだよ。
言ってねえよなぁ、別に。
そりゃ「従うか、さもなきゃ逆らって悲惨な末路を辿るか選べ」とは言ったがよぉ~
別段「命令に従えば助けてやる」とは言ってねえだろうがよ』
『そ、そん、な……! 約束が、ちがっ……!』
『違わねえよ、何も違わねえ。
ただてめえが勝手に都合よく、確認もせず曲解しただけじゃねえか。
異邦人はいつもそうだ……
なんでもかんでもてめえの物差しでしか考えねえ。
肌の色が薄けりゃどんな名前だろうが白人、
褐色ならどこの生まれだろうと黒人、
挙句「黒人ならもっとメラニン色素が濃い」だの
「顔の造詣がリアルじゃない」だのと、
てめえら基準の"正しさ"とやらを押し付けようと躍起になりやがる。
そのせいで宇宙人や異世界人とどんだけ深刻なトラブルになろうが、
自国民がヴィラン堕ちしようが、同族が何人死のうが認識を改めねえ』
『ふざ、けんなっ……!
いきなり主語でかくしてんじゃねえっ!
何でもかんでも私情で一括りにしてんのは、アンタだって同じだろっ!
俺達英国人の中にだっていい奴はいる!
なのにアンタみたいなのはいつも何かにつけてブリカスブリカスって!
そういう発言してる時点で、
アンタらだって同じ存在じゃないのガアアアアアア!?』
襲い来る電撃の威力たるや、
まさに意識を刈り取りかねないほど!
だが当然、コロルミンチーの命には届かねえ!
『……ああ、悪い悪い。話が脱線しちまったな。
で、何だっけ? ああそうだ……
"なんでも一括りにすんな"と、
"そういう言い方した時点でお前らも同じ穴の狢だ"と……
いやはや、まさにその通りだな。
実に正しい、至極真っ当な主張だとも。
そりゃ俺とて排外主義者でも差別主義者でもねえからな。
国籍や民族"だけ"で個々人の人格否定までするつもりは毛頭ねえ。
養成校時代に軍隊格闘術を教えてくれたクルド人の教官は本当にいい人だったしな……
ま、その教官は俺の卒業を待たずしてヴィランに殺されちまったがなァ』
『ぐうっ……だったらっっ……!』
『だったら、なんだよ。
そりゃ善良な英国人がいるのは間違いねえけどよ、
てめえは紛れもなく邪悪な方の英国人だろうが。
善良な英国人はネットに他国のヒーローの悪口なんて書かねえし、
異民族を"何もかも劣った不細工な釣目の黄色い猿"なんて言わねえし、
ましてケツに刀挟んで民家や乗用車を叩っ斬りゃしねえんだよ』
『なっ、あっっ……!で、でもオレはあっ……!』
『……"カメレオンだから伸ばした舌ぁ引っ込められる"とでも?
まァ確かに、カメレオンの舌は伸びでも戻って来るがよ……
てめえの口から出てんのが舌じゃなかったら話は別だよなぁ。
例えば、毒ガスとか強酸だったら……』
『そ、そんな、モンハンの霞龍みたいなっ……!』
『……なんだ、よくわかってんじゃねえか。
そうだよ。てめえは実質オオナズチなんだよ。
大人しく隠れてりゃ討伐クエストの標的にもならんかったろうが、
人里を攻めちまったんならもう駄目だ。狩られるしかねェよ。
古龍は討伐一択、捕獲って選択肢はねえからなァ~』
『ひっっ! イヤだっっ! 助けてくレアゲエエエエエッ!?』
コロルミンチーの身体に再び電流が走る!
やはり命には届かずとも、目前に迫る死を実感させるには十分過ぎる威力だ!
『まァ~素直に言う事聞いてくれたんだ。
せめて苦しまずに逝くがいいや……
元々そういうコンセプトの技だしなァ』
『ひっ! そ、そんなっ! そんなあっ!
イヤだ! 死にたくないっ! 死にたくないよおっ!』
『まあなんだ、
ヴィランにまで身を落とした時点で死んだも同然なら
今更物理的に死ぬぐらいどうってことねえだろ?』
『そんなあ! 違うっ! オレっ! オレはあっっ!』
『つーかてめぇさぁ~掲示板やら各所のコメント欄荒らしてた時、
噛み付いてきた連中に散々言ってたらしいじゃねえか。
「全て失ってどん底のオレは無敵だ。死ぬのだって怖くない。
殺せるもんなら殺してみろ腰抜けども。
どうせ犯罪者になるのが怖いから殺せないクセに」ってよぉ~』
『そ、それはっ……!』
『だったらよぉ~、実際殺してやるぜ……!
命なんて惜しくねえからこその"無敵の人"なら、
そのぐれえ何ともねンだろぉ~!?』
『イヤだあ! やめボグヘエッ!?』
泣き喚くコロルミンチー、
その鳩尾をユウトは容赦なく蹴り上げる!
当然それは本命の一撃じゃなく……
『えぅ、あぐごぁぁっ……!』
『シャアッ!』
『 あっ 』
膝立ちになった怪人の腹へ青い刃が容赦なく突き立てられ、
そのままグイン、と持ち上げられる格好になる!
串刺しに加え重力も加わるとあっちゃ、
一見ダメージは深刻なように思えるが……
『 う えっっ
なん で 』
貫かれたコロルミンチーの表情は不思議と穏やかなもんで、
苦痛の類は一切感じてねえらしい!
そして!
『精々眠れよ、安らかになァ~』
[フューネラル・ストライク♥]
貫かれた刃に電流が迸れば、
歪で醜悪な怪人は青い稲光に包まれ……
『 ふ あ っっ 』
瞬く間に消し炭になったその亡骸は、
死んだって実感すらないまま風に溶けて消滅しちまったんだ。




