エピソード2:"二次元の嘘"を見抜く観察眼とそれを認める度量こそ必要ですが、ともあれ学問に興味を持つ切っ掛けとしてエンタメは最適解ですから
「ゆ、る、せ、ぬぅぅ~~~~っ!」
[フェミニーナァ〜イト☆レボリュ〜ションッ☆]
さて、場面は前回から引き続きとある廃工場。
ネット荒らしくずれの"クソ"ヴィラン、
ブリカスのコロルミンチーはユウトにボコられるも悪足掻きとばかりに腰の"ピン"を抜く。
……あたかもまさしく、特撮連ドラにありがちな
"等身大でボコられた怪人が悪足掻きとばかりに形態変化・巨大化する"感じの……。
『キサマらっ! ソレガシをバカにできるのもここまでだぞぉっ!』
"ピン抜き"と同時にコロルミンチーの肉体は急激に変異・膨張……
有り触れた顔のイギリス白人は、
瞬く間に爬虫類と環形動物が遺伝子レベルで融合したような
歪で醜悪なヒト型の化け物に姿を変えた。
「ぎゃあああああ!? か、怪人っっ!? 何時の間にっ!?」
「いやいつの間にっつーか、フツーにあのヴィランが変身したんでしょ」
「あっ、そうか! そうだよな……確かにそうか……。
いや~、規格外に不細工過ぎてあのヴィランと同一人物とは到底思えなくて……」
『そこのキサマァァ! ソレガシをブサイクと言ったかああああ!』
「ヒイイイッ!? ご、ゴメン! ゴメンって!
や、でも実際なんていうか、イケメンではないだろ~。
そんな、カエルとミミズをごちゃ混ぜにしたようなんじゃ――」
『誰がカエルとミミズかっ!
ソレガシのこの姿はそのような"餌用下等生物"に非ず!
この姿こそは究極の擬態能力を持つ完全迷彩生物カメレオンと、
洗練されし天敵不在の吸血生物チスイビルの力によるものぞっ!
信じられぬというのならこの吸血能力、身をもって味わわせてやろうかあ~!』
「ヒイイイイイイッ! や、やめてくれっ、頼むぅっ!
俺、映画『アナコンダ2』の影響でヒル恐怖症なんだよぉぉぉぉ!
ヘビやクモは平気だし何なら好きな方だけど、
ヒルだけはどうしてもダメなんだ~!」
「……セキモトさん、危ないんで下がってて下さい。
このヤローは流石に無変身じゃキツい……
画面映え抜群のヤツでブチ決めてやりますよ」
「お! おおっ! そうかっ! そりゃ助かる!
……くれぐれも残酷過ぎる方法で殺すなよっ!
サブスクの審査も通らなかったらホント困るんだからなっ!?」
「……まあ、その辺は上手くやりますんで……」
[列席御礼♥]
セキモトを逃がしたユウトは、そのままクラナドライバーを起動する。
「とりあえず見てて下さいましよ、この俺の変身ってヤツをねェ……」
『小癪な真似を! キサマがどのようなヒーローであれ、
この姿となったソレガシの前では、如何なる力も武器も――
「転身!」
[ヤタガラスモード♥]
『ぐぎゃあああああっ!?』
転身と同時、真球状にユウトを包み込む電撃と突風の障壁。
その破壊力は凄まじく、掴み掛かるコロルミンチーの右手を木っ端微塵に吹き飛ばす!
『遺恨リーパームジョウ、【ヤタガラスモード】ッ!
人心の翼がッ! 大空に向けて羽搏くッ!』
選ばれたのはヤタガラスモード。
"動きが素早い"、"攻撃が鋭い"、
"やれることが多い"と三拍子揃った便利な形態だ。
「うおおおおおっ! 来たぞ! 来たぞ変身だっ!
"ムジョウ"が満を持して登場だっ!
おいフユノッ! お前さっきのしっかり撮ってただろうなっ!?」
「ィーっす。大丈夫ッスよプロデューサぁ~。
ちゃんとプロデューサーとホンゴウさんが喧嘩始める前から回してますってェ~」
「大丈夫なんだろうな!? バッテリ残量は確認したか!?
しっかり撮っとけよっ!? 映像さえあればあとはどうにでもなるんだから!」
安全圏に逃げたセキモトは、
聊かガラの悪いカメラマンのフユノをはじめスタッフ連中に指示を飛ばす。
巻き込まれて死ぬかもしれねぇってのに危機感が姉と思うかもだが、
一応その辺もしっかり考え抜いて動いてっから心配は要らねえ。
『……バカかてめえは。
カメレオンの変色能力ってのは言わば奴らの言語……
体温調節にも応用しこそすれ、
そもそも奴らの大多数は色を変えるまでもなく素で擬態してるようなモンだ。
ガルメさんやバイオグリーザ、
メレちゃんとかハミィちゃんみてェなのは、
空く迄"誤解と誇張に基づく二次元のウソ"に過ぎねえ』
『ぐ、ぎいいいいっ……!』
『まあ中には変色を擬態に使うのもいるにはいるようだが……
イカやタコどころかヒラメやカレイにも遠く及ばねぇ。
まして、究極の擬態能力~? 完全迷彩生物~?
笑わせンなよ……何ならてめえが餌と見下したカエルの方が、
よっぽど"身体を変色させる擬態"の腕前は上なんだぜ?
……要請-"聖鳥の翼、その恩恵に与らん"』
[要請受理♥ 供給、ヤタガラカットラス♥]
なんて言いつつユウトはヤタガラカットラスを二本形成……
『何を〜〜〜っ! デタラメを吐かすなあああああっ!』
一方のコロルミンチーも、怪人特有の回復力で右手を再生させる。
『出鱈目じゃねェ、現代自然科学に基づく確かな事実だぁ〜』
『ぬううう〜〜〜〜っ!
減らず口を〜〜っ!
キサマなど、吸い殺してくれるっ!』
『へっ、やってみろバァ〜カっ』
[葬儀開催♥ 鳥葬-クロスロードプラン♥]
ユウトが素早くベルトを操作すれば、
腹を起点に迸る青い電撃が腕を伝いヤタガラカットラスの刃に纏わりつく。
「うおおおおおっ! 必殺技だっ! 必殺技だぞフユノッ!
しっかり撮れ! バッチリ撮れ! がっつり撮れ! ジックリ撮れっ!
一億分の一秒たりとも逃すんじゃないぞ~っ!」
「痛ェ痛ェ痛ェ痛ェ痛ェですってプロデューサー!
分かってます! 分かってますから! ブッ叩かんで下さいよ!
アンタ歳の割に結構腕力あるんですから!
映像がブレますって! 最悪カメラ壊れても俺弁償できねェっスよ!」
テレビクルーどもはなんか漫才やってたが、
まあそれはそれとして……
『なぁ~にをカッコウつけとるかっ、この鳥風情がっ!』
『なるほど"鳥だけにカッコウ"ってか。
一応ただのバカじゃねえらしいが、
日本語のダジャレに頼るとは情けねぇヤツだ。
てめぇらブリカスにしてみりゃアジア人なんぞ劣等釣目黄肌猿だろうによぉ』
『黙れ~~~っ! ソレガシはあえてキサマに合わせてやったのだっ!
何もかも劣ったキサマら、不細工な釣り目の黄色い猿どもにっ!
敵に対しても配慮を欠かさぬ、
まさに英国紳士の――『シャアッ!』――ズグエエッ!?』
長々と講釈を垂れようとするコロルミンチーだったが、
ヤタガラスモードを前には悪手も悪手……
がら空きの胴体をバッテン型に切り裂かれた挙句、
傷口には如何にもヤバそうな"青白い縫い目状のエネルギー体"を埋め込まれちまう。
『ぐ、ぐぎ、ぐげげがが……!』
『……つーかこの形態はカッコウじゃなくてカラスだボケぇ。
ヤタガラスって知らねェのか……まあ知らねェだろうなぁ、結局はバカだし』
『な、んだとっっ……! キサッ、まアアアアアアアッ!?』
ユウトの罵倒にキレて声を荒げようとした瞬間、
コロルミンチーの傷口に埋め込まれた無数のエネルギー体が激しく放電……
死なねえまでも苦しみ悶える程度の電流がその身を焼く!
『が、あがああ……!』
『……口の利き方ァ気ィつけろよブリカスゥ~?
間抜けにも"クロスロードプラン"を喰らったてめえは今や、
この俺に生殺与奪権を握られちまってんだからなァ~』
『ぬ゛うあっ……! クロスロード、プランだとぉっ……!?』
『そうだ。……カメラの前だし、
何より読者のみんなに解説せにゃならんから特別に教えてやる。
クロスロードプランっつーのは、要するに敵へ二択を強いる技でよ。
まだまだ試作段階で欠陥は多いが……
喰らったてめえには最早、限られた選択肢しか残されちゃいねェ』
『……なんっっっ、だとぉっっっ……!?』
『選び取るべきは二つに一つだ。
俺の命令に従うか、さもなきゃ逆らい悲惨な最期を迎えるか……
どっちも嫌だは許されねえ。
もし何かしらで抗おうモンなら、
生かさず殺さず紛れもなくキツいダメージがてめえに降りかかる。
選択肢のどっちかを選ぶまでなァ~。
……さあどうするね?
大人しくこの劣等釣目黄肌猿に従うかァ~、
はたまた逆らってでも悲惨な末路を辿るかァ~』
事実上の死刑宣告にも等しい嘲笑じみた問い掛けだ。
とは言えまあこういう場合、
コロルミンチーみてえなヤツなら答えは決まってるモンだが……
『ひっ……ぐうっ……!
……こ……心得たっ……!』
なんと驚くべきことに、
我が身可愛さからだろう"服従"を選びやがったんだ。




